AIと思考

「ただ作る」の需要が減る時代に、僕らが考えていること

written by 中村 弘樹

どうも、中村です!

最近、社内外でよく聞かれるテーマがあります。「AIが進化したら、デザイナーやクリエイターの仕事ってなくなるんじゃないですか?」という問いです。

結論から言うと、僕はそう思っていません。

というより、AIの進化は、本物のクリエイターにとってむしろ追い風になると、現場で感じています。

今日はなぜそう思うのかを、うちのチームで起きていることも交えながら、整理してみたいと思います。

「ただ作る」の需要は、確実に減ってきている

まず事実ベースで話すと、「ただ作るだけ」の仕事の単価と件数は、この1〜2年ではっきり下がっています。

これは、うちの会社だけでなく、業界全体の感覚だと思います。

たとえばバナー、LP、簡単なロゴ、簡単な動画、原稿の清書、こういった仕事は、AIツールでかなりの部分がカバーできるようになりました。発注する側からすれば「これくらいなら自分たちで作れるかも」と感じる領域が、毎月のように広がっている状態です。

ただ、ここで勘違いしたくないのが、「クリエイティブ全体の需要が減った」のではなくて、「作業的なクリエイティブの需要が減っただけ」だということです。

AIが奪ったのは「価値」ではなく「作業」

お客さまがデザインや制作にお金を払ってきた本当の理由を考えてみると、「きれいに作ってくれるから」というのは実は半分で、もう半分は「自分たちの価値を整理して、ちゃんと伝わるかたちにしてほしいから」だったはずです。

つまり、価値の中心はもともと、「作る」の手前、つまり 「なぜ作るか」「誰に届けるか」「何を伝えるか」のところにありました。ここと「作る」がセットで発注されていたんですね。

AIが起こしたのは、この中の「作る」の部分を、一気に民主化したという変化です。

結果として、価値の源泉が「作業」にあったのではなく「設計」にあった、という事実が、よりはっきり見えるようになりました。

現場で起きている変化:生産性は上がり、思考の時間が増えた

実際、うちの会社でもAIを業務にガッツリ組み込んでから、生産性はまちがいなく爆上がりしました。

– 競合分析やリサーチのスピードが速くなった
– ラフ案・たたき台を短時間でたくさん用意できるようになった
– 議事録や文章の整理にほぼ時間がかからなくなった

ところが、これで仕事がラクになって暇になったかというと、まったくそうではないんですよ。

作業を巻き取ってもらった分、お客さまの事業を理解する時間や、コンセプトを考える時間が増えた、というのが正確な変化です。

その結果、お客さまから評価されるポイントも変わってきました。「きれいに仕上げてくれる」から、「うちの会社らしさを見つけてくれる」「言葉にしてくれる」へ。制作会社に求められている機能が、作業者から伴走者にシフトしているのを感じます。

これから価値が上がる3つの力

では、クリエイター側はこれから何を鍛えたらいいのか。僕は大きく3つだと思っています。

① 問いを立てる力

AIは、与えられた問いに答えるのはとても得意です。でも、「そもそも何を問うべきか」を決めるのは、いまだに人の仕事です。

お客さまの事業のどこに本当の課題があるのか。何を解けば、いちばん効くのか。きれいな答えよりも、正しい問いを立てられる人が、これからますます重宝されていきます。

② 価値を言葉にする力

次に、見つけた価値を「伝わる言葉」にする力です。

お客さま自身も気づいていない強みや想いを、対話の中から掘り当てて、誰にでも同じ温度で伝わるかたちにしていく。AIは整える手伝いはできても、その会社ならではの”らしさ”の核を掘り当てるのは、人の感受性にしかできない仕事だと感じています。

③ 人と事業に伴走する力

そして最後が、人と事業に伴走する力です。

どれだけ良い設計をしても、最後に決めて、動くのはお客さま自身です。その迷いに寄り添い、一緒に判断できる状態をつくっていく。これは作業ではなく、関係性の仕事です。信頼を預けてもらえる人にしか担えない役割で、ここはAIには代われません。

AIは、敵ではなく追い風

作業をAIに巻き取ってもらえるようになったぶん、僕らは本当に価値のある「問い」と「言葉」と「伴走」に、時間を使えるようになりました。

つまりAIは、クリエイターから仕事を奪う存在ではなく、クリエイターを”作業者”から”伴走者”へと押し上げてくれる追い風なんです。

「作る人」から「届け続ける人」へ。この変化をこわがらずに受け取れた人にとって、これからの時代はむしろ面白くなっていくと、僕は本気で思っています。

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