仕事のスピードを上げるには何が必要か
「もっと仕事を早くしたいんです」というご相談を、特に若手のデザイナーや広報担当者からよくいただきます。
仕事を効率化するテクニックもいろいろありますが、僕自身が長くやってきて思うのは、仕事のスピードを上げるうえでいちばん大きいのは「迷わなくなること」だということです。
仕事のスピードを上げるためには、迷う時間を減らす必要があります。そして迷う時間を減らすためには、頭の中の選択肢である「引き出し」を増やすことが近道です。
仕事のスピードは迷う時間の短さで決まる
仕事のスピードは、手が動く速さで決まると思われがちです。しかし、実際の仕事でいちばん時間を消費しているのは、手を動かす時間ではなく、迷っている時間です。
どの方向で進めるか、どんな素材を使うか、どんな順序で組み立てるか。作業の途中で止まって考える時間を短くできれば、仕事のスピードは自然と上がっていきます。
選択肢が多い人ほど迷わずに判断できる
少し逆説的ですが、迷わない人ほど、頭の中に多くの選択肢を持っています。
料理をイメージするとわかりやすいかもしれません。材料の使い方、調理法、組み合わせの引き出しが多い人は、冷蔵庫にある食材を見ながら数秒で献立を決められます。逆に、知っている料理が3パターンしかない人は、毎回似たメニューになるか、ずっと迷い続けるかのどちらかです。
デザインの仕事もこれと同じです。素材、文脈、目的に応じた「引き出し」をどれだけ持っているかで、判断の速度が決まります。自分の引き出しが少ないうちは、ひとつの問題に対して思いつく解決策が1個から2個しかありません。引き出しが増えてくると、5個から10個の解決策を並べたあとに、最適なものを選ぶことができるようになります。これが、ベテランの仕事が速く見える理由です。
解決策の引き出しは手を動かした経験で増える
この引き出しは、本を読んだだけではなかなか増えません。実際に手を動かし、案を出し、当てはめてみて、違っていたらやり直す。その経験だけが、引き出しの中身になります。
新人時代の僕は、ひとつの課題に対して必ず3案出し、ときには10案以上を並べるという練習を意識的にしていました。これは、目の前のクライアントへ提案するためであると同時に、自分の引き出しを増やすための長い投資でもありました。
速さは経験を積んだ結果として身につく
仕事を早くしたいと思ったときほど、テクニックを求めるのではなく、量と経験に時間を使ったほうが結局は近道になります。
速さは、目指して掴むものではなく、引き出しが増えた結果として、ある日ふと身についているものでした。焦らずに、地味に経験を積み上げていく時期を経ることが、長く仕事を続けるためのいちばん丁寧な近道だと思います。