私の仕事は9割聞いて1割話す
written by 中村 弘樹
クリエイティブディレクターという肩書きで仕事をしていると、「いっぱい話すんでしょう」と言われることがあります。
でも実際は逆で、9割は聞いていて、僕が話している時間は1割もないかもしれません。今日は、その「聞く」という仕事のなかで意識していることを書いてみます。
残るのは、成果物ではなく打ち合わせの記憶
面白いことに、お客さまから「あのときの話、よかったですね」と言ってもらえるのは、完成したサイトやロゴそのものではなく、企画段階のミーティングの場面のほうが多いです。
制作物はもちろん大事です。でも、お客さまのなかで何かが整った瞬間、ずっと言葉にできなかったことが言葉になった瞬間。これらが、ふだん思っているよりも長く記憶に残るんですよね。
「話す力」より「聞く力」のほうが、ずっと効く
ディレクションというと、つい話す力で勝負する仕事のように思われがちです。説得力ある提案、わかりやすいプレゼン。たしかに必要な技術ですが、僕は「聞く力」のほうがずっと効くと感じています。
聞く力とは、相手の言葉を引き出して、頭のなかを整理してあげる力です。ここがしっかりしていると、提案は自然にお客さまの言葉でつくれるようになります。
無口な人には、沈黙のスペースを残す
普段あまり話さないタイプの方には、答えやすい順番で問いを置いて、沈黙が訪れたら、それを大事に扱います。
沈黙のあとに出てくる言葉は、相手にとっての本当のことが多いです。「考えがまとまるまで待つ」というだけで、ふだん引き出せない深い話が出てくることはよくあります。
よく話す人には、「核心の問い」を置きにいく
逆に、情報量が多い方とお話しするときは、流れを止めないようにしながら、要所で核心を確かめにいきます。
「いまの話の中で、いちばん大事なのはどこですか」「もう一段だけ深掘ってもいいですか」。話しのリズムを尊重しながら、相手と一緒に焦点を絞っていく感じです。
結論を出す場所ではなく、思考が整う場所
打ち合わせは、結論を出すための場所だと思われがちですが、僕は「思考が整理される場」だと捉えています。
その日の終わりに、お客さまが「頭のなかがすっきりした」「言いたかったことが言葉になった」と感じていれば、その時間はうまく機能していました。仕事の痕跡は、議事録の枚数ではなく、相手の頭がどれだけ整ったかに残ります。