会社がどこへ向かっているのか、分からなくなったときに
written by 中村 弘樹
「うちの会社、結局どこへ向かっているんでしたっけ」。経営者の方からそう聞かれて、すぐに言葉が出てこないことがあります。
これは、ぼんやり経営しているから起きるわけではありません。事業を真剣に進めている人ほど、必ずどこかで通る時期だと感じています。
方向感は、定期的に見えなくなるもの
経営を10年20年と続けていると、目の前の意思決定をしているうちに、会社の輪郭がじわじわとぼやけてくる瞬間があります。
新しい商品が増えた。組織が大きくなった。世の中の状況が変わった。そのたびに少しずつ重心がずれていって、ある日ふと「いま私たちはどこに向かっているんだっけ」となる。これは、思っている以上に自然な現象です。
表面的にはやり過ごせてしまう
厄介なのは、目の前の業績が悪くなければ、こうした迷いはやり過ごせてしまうことです。
でも、胸の奥には違和感が残ります。判断の歯切れが悪くなる。会議で「とりあえず保留」が増えてくる。社員に伝える言葉に、力が入りきらない。これらは、方向感がぼやけているサインかもしれません。
立ち戻るのは「なぜ、この事業をやっているのか」
そんなとき、僕は「なぜ、この事業をやっているんでしたっけ」という問いから、ご一緒に整理していきます。
過去の出来事や、創業のときの感情、いちばん嬉しかったお客さまの言葉。こういうものを思い出していくと、自分たちが大事にしていた価値が、また少しずつ立ち上がってきます。
言葉にしないと、判断は揺れ続ける
大事なのは、ここで出てきたものを、必ず言葉にしておくことです。
頭のなかにあるだけだと、忙しさのなかでまた埋もれてしまいます。短くてもいいので、自分たちの判断の軸を文章に書き残しておく。それが、次に方向感を見失ったときの「戻ってこられる場所」になります。
迷いの時期は、整え直しのチャンス
会社の方向が分からなくなる時期は、決して悪い兆候ではないと思います。むしろ、自社の輪郭を整え直すための、いちばん大事なタイミングです。
そう捉えられると、迷いそのものに、少し優しくなれます。経営は、迷うことそのものではなく、迷ったあとどう戻ってくるかで形をつくっていく仕事だなと、お客さまと向き合うたびに思います。