発信は、いずれ社内の人の言葉に戻す
ブランディングや発信の支援に入るとき、外の人間がずっと発信を書き続ける形を、僕はゴールだと思っていません。最終的には、その会社の中で発信できる状態をつくる。そこまでできて初めて、ブランディングが会社のものになると考えています。
魅力をいちばん知っているのは、働いている人
会社の魅力を誰よりも知っているのは、その会社で働いている人たちです。お客様との出来事。仕事へのこだわり。現場で感じたこと。社内で交わした言葉。こうしたものは、外部の人間が文章に仕立てるより、そこで働く人が自分の言葉で話したほうが伝わります。
これから、働く人は減っていきます。働く世代にあたる15〜64歳の人口は、2020年に7,509万人でした。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、2070年に4,535万人になると見込まれています(出生中位・死亡中位推計)。採用でも取引でも、母数を増やしてから選ぶやり方は、だんだん難しくなります。何人集めたかより、誰が集まったか。その「誰」に届くのは、働いている人の言葉だと思います。
最初から社内で回せる会社は多くない
とはいえ、最初から社内で発信を回せる会社は多くありません。発信する人がいない。何を書けばいいか分からない。理由はいろいろです。
だから最初は外部が入り、ブランドの軸をつくり、言葉を整理して、発信の仕組みを整えます。そのうえで、発信する文化そのものを、少しずつ会社の中に移していきます。
設備工事会社で、仕組みを移していく
ここからは作例です。社員40名ほどの設備工事会社で、ホームページとSNSの文章を外部が書いているとします。現場の写真は届くものの、社員が発信の文章を書いたことはありません。
ある月から急に「社員で書いてください」と渡すと、発信は止まりやすくなります。そこで、書く前の「集める」から順に社内へ移します。
- 集める(はじめの3か月):月に一度の朝礼で、一人ひとつ、この一か月にあった出来事を挙げてもらう。題材は四つ。お客様との出来事、仕事へのこだわり、現場で感じたこと、社内で交わした言葉。広報担当がその場で控え、文章にするのは外部が受け持つ。
- 書く(次の3か月):控えの中から毎月ひとつを選び、話した本人と広報担当で短い文章にする。外部は、ブランドの軸からずれていないかを見て直す。
- 決める(その後):どの話を出すか、どう書くかを社内で決める。外部は四半期に一度、それまでの発信を一緒に読み直し、軸とずれていないかを確かめる。
たとえば朝礼で、配管を担当する社員が「床下の点検口を閉める前に、次に開ける人のために、配管の通り道を書いた紙を貼っている」と話したとします。外部の人間からは、まず出てこない話です。これを本人の言葉のまま出すと、この会社がどんな仕事を大事にしているかが、読む人にそのまま伝わります。
外部が抜けたあとに確かめること
支援がうまくいったかどうかは、外部が抜けたあとで分かります。確かめたいのは次の三つです。
- 月にひとつ以上、社員の話から生まれた発信が出ているか。
- 話を出している社員が、特定の一人に偏っていないか。
- 問い合わせや応募の中に、その発信を読んだという声があるか。
発信する文化が社内に根づくと、発信は広報担当ひとりの仕事から、働く人たちが自分の仕事を語る場に変わっていきます。外部の役目は、そこへたどり着くまでの軸と仕組みを残していくことです。