求人票に書く言葉はどう引き出すか
求人票や採用ページに自社独自の言葉を書くためには、社員への聞き方を変える必要があります。社員に「うちの会社の良いところはどこだと思う?」と聞くと、返ってくるのは「人間関係がいい」「風通しがいい」「成長できる」といった言葉です。これらは本当なのかもしれません。ただ、読んだ人の手が止まる言葉ではありません。広報や人事の担当者がつまずくのは、文章の書き方ではなく、聞き方のところだと僕は考えています。
社員には過去の具体的な出来事を聞く
会社の強みを言葉にするとき、打ち合わせで最初に投げる質問があります。社員に向けて聞くなら、次の三つです。
- 最近お客様にお礼を言われたのは、いつ、どんな場面でしたか
- この仕事をやってよかった、と感じたのはどの瞬間でしたか
- 思い浮かべると力が出るお客様は、誰ですか
これらはどれも、すでに起きた出来事を聞いています。お礼を言われた場面には、お客様の困りごとと、それを誰がどう解いたかと、相手の顔がそろっています。「風通しがいい」という言葉には、そのどれも入っていません。
抽象的な言葉は具体的な行動に分解する
具体的な場面が出てきたら、「なぜ」という質問を一段ずつ足していきます。途中で「丁寧に」「チームワークで」といった抽象的な言葉が出たら、そこで止まって聞き返します。たとえば、「チームワークというのは、誰と誰が、どこで何をしていることですか」と聞きます。「朝の十分間で、前の日に困ったことを一人ずつ話している」という具体的な行動が出てくれば、求人票に書くべきなのはその十分間のほうです。
聞き手は同じ仕事をしていない人が担当する
この作業は、同じチームの中だけでやると途中で止まります。「なぜ」を二回ほど重ねたところで、「昔からそうだから」で話が終わってしまいます。職場の当たり前は、その中からは見えにくいからです。聞き手は、同じ仕事をしていない人のほうが適しています。人事や広報の担当者が現場の話を聞きに行く意味はここにあります。現場を知らないからこそ、現場の人が気にも留めないところで「それはどうしてですか」と聞けます。この聞き方は、教えられる技術です。最初の質問を三つに決めておくことと、抽象語が出たら割ることを型にしておけば、担当者が入れ替わっても同じ深さまで掘れるようになります。聞く力が一人の勘に閉じず、組織に残ります。
求人票の文章に書き足す三つの要素
取り出した言葉は、そのまま文章の材料になります。AIに求人票の下書きを頼むときも同じです。「求人票を書いて」という指示だけをAIに渡すと、どこの会社にも当てはまる文章が返ってきます。AIへの指示や求人票に書き足すのは、次の三つです。
- 読む人の場面:夜、仕事が終わって、寝る前のスマートフォンで見ている二十代の人
- 実際にあった出来事を一件:去年入った人が、三か月目に何を言ったか
- やらないこと:その会社が、何を引き受けないと決めているか
引き受けないと決めていることのほうが、その会社を説明してくれることがあります。応募する人にとっては、なおさらです。まずは三か月目の一言を聞きに行くところから始めると、担当者の手元に、その会社にしかない言葉が一つずつたまっていきます。