コーチング

辞めると言われて初めて、不満があったと知る

「少しお時間よろしいですか?」

と社員から言われると、ドキッとしますよね。そして、

「退職したいと思っています」

と、突然言われたら経営者や管理職にとって、驚きも大きいものです。

普段は問題なく働いているように見えた。

声をかければ、いつも「大丈夫です」と答えていた。

大きなトラブルがあったわけでもない。

それなのに、本人の中では、すでに退職を考えていた。

その事実を知ると、

「どうして、もっと早く言ってくれなかったのだろう」

「そんなに不満があるようには見えなかった」

と、戸惑うかもしれません。

しかし、会社にとっては突然でも、本人にとっては長い時間をかけて出した結論である可能性があります。

会社に伝えたときには、すでに気持ちは固まっている

社員が仕事に違和感を持ったからといって、すぐに退職を考えるとは限りません。

最初は、

「もう少し続ければ……」

「今は忙しい時期だから……」

と、自分の中で解決しようとします。

身近な人に相談したり、インターネットで似た悩みを調べたりすることもあるでしょう。

それでも状況が変わらないときに、転職先を調べ始める。

求人へ応募する。

次の働き方を考える。

そうして気持ちが固まったあとで、初めて会社へ退職を伝える人もいます。

会社には「辞めます」という結論だけが届きますが、その前には、本人なりに迷い、我慢し、考えた時間があります。

だからこそ、退職を告げられたときに初めて不満を知ったとしても、退職させずに解決できるとは限りません。

最初に「なぜ早く言わなかったの?」と責めない

経営者や管理職としては、早く相談してもらえれば対応できたこともあると思います。

仕事量を調整できたかもしれない。

役割を変更できたかもしれない。

人間関係について、一緒に考えられたかもしれない。

そのため、

「どうして、もっと早く言ってくれなかったの?」

と聞きたくなるのも当然です。

ただ、この言葉は本人にとって、「相談しなかったあなたが悪い」と責められているように聞こえるため、社員はそれ以上話さなくなります。

退職の申し出を受けた直後は、まず、

「驚いているけれど、これまでどのように考えてきたのか聞かせてもらえますか」

と、本人がここまで考えてきた経緯を聞くことが大切です。

すぐに退職を止めることよりも、今、本人がどのような状態なのかを確認します。

退職の「相談」なのか「決定」なのかを確認する

「辞めたい」という言葉でも、本人の状態は一人ひとり違います。

すでに次の勤務先が決まり、退職の意思が固まっている人もいます。

辞めるかどうか迷っていて、会社に相談したい人もいます。

現在の仕事や働き方が変わるなら、残る可能性がある人もいます。

最初に確認したいのは、会社が引き止められるかではなく、本人が今どの段階にいるのかです。

たとえば、

「退職の意思は、もう固まっていますか」

「会社へ相談したうえで考えたい気持ちもありますか」

「今、会社にどのような対応を希望していますか」

と確認します。

意思が固まっている人に強く引き止めれば、退職までの関係が悪くなることがあります。

一方、相談のつもりで話している人に対して、すぐに手続きの話へ進んでしまえば、「会社には必要とされていなかった」と感じさせてしまうかもしれません。

本人の状態を確認してから、次の話へ進むことが大切です。

退職理由は、一つとは限らない

本人が「今の給与ではやっていけない」と話していても、給与だけが原因とは限りません。

給与への不満に加えて、

評価の基準が分からなかった。

仕事を増やされても、認められている実感がなかった。

今後どのように成長できるのか見えなかった。

相談しても状況が変わらないと感じていた。

そのような経験が重なっていることがあります。

反対に、「人間関係が理由」と言われても、特定の人との相性だけが問題とは限りません。

役割が曖昧だった。

情報が一部の人に集中していた。

困ったときの相談先がなかった。

上司によって指示が違っていた。

こうした組織の仕組みが、人間関係の問題として表れていることもあります。

社員の言葉を疑うのではなく、その言葉の背景にどのような経験があったのかを確認します。

退職時ではなく、迷い始めたときに話せる会社へ

退職を告げられて初めて悩んでいたことを知ったとしても、経営者や管理職の関わり方がすべて悪かったとは限りません。

上司は社員を評価する立場でもあります。

関係がよいからこそ、心配をかけたくなくて話せない人もいます。

本人自身が、何に悩んでいるのか分からない場合もあります。

だから、経営者や管理職だけで、すべての本音を聞き出そうとしなくてもよいのです。

必要なのは、退職が決まったときだけ理由を聞くことではありません。

本人が、

「何となく、このままでよいのか迷っている」

「仕事は嫌いではないけれど、最近少し疲れている」

「今後の働き方を考えたい」

という段階で話せる場所をつくることです。

問題が明確になっていなくても話せる。

話した内容が、すぐに評価へ影響しない。

対話を通して、自分が何に悩んでいるのかを整理できる。

そのような場があれば、退職という結論に至る前に、会社で見直せることが見つかるかもしれません。

Think for Designでは、退職前の小さな迷いを整理します

Think for Designでは、社員のキャリアコーチングを通して

仕事以外も含めたこれまでの経験や、大切にしたいこと、現在の仕事で感じている違和感、これから希望する働き方を整理します。

そのうえで、

  • 本人が自分で変えられること
  • 上司へ相談したいこと
  • 会社で試せる役割や働き方
  • 組織側で見直したい環境や仕組み

を分けて考えます。

個別の面談内容を、本人の同意なく会社へ伝えることはありません。

本人が共有に同意した内容や、個人を特定できない組織全体の傾向をもとに、経営者や管理職と改善できることを考えます。

「辞めると言われるまで、本人が悩んでいることに気づけなかった」

その経験を、経営者だけの後悔で終わらせず、次に迷い始めた社員が早い段階で話せる仕組みへ変えていく。

社員が退職を決めてから理由を聞くのではなく、まだ答えが出ていないときに話せる会社を、一緒につくってみませんか。

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