仕事を任せたいけれど、結局自分でやった方が早い
「社員に仕事を任せて、自分がいなくても回る会社にしたい」
そう思って仕事を渡してみても、説明に時間がかかる。
完成したものを確認すると、想像していたものと違う。
修正にも何時間もかかり、結局、自分で仕上げることになる。
そのような経験が続けば、
「やっぱり、自分でやった方が早い」
と思ってしまいますよね。
お客様を待たせるわけにはいかない。品質を下げられない。納期も守らなければならない。そして、最終的に責任を負うのは自分です。
その状況で「自分でやる」と判断するのは、ある意味当然のことです。
ただ、その選択を毎回続けていると、半年後も一年後も、同じ仕事を自分が抱えている可能性があります。
もちろん、初めは「自分でやった方が早い」
仕事に慣れていないうちは、判断するための基準を持っていません。
手順を説明されても、
「この場合も、いつもと同じ対応でよいのか」
「どの段階で上司に確認すればよいのか」
「複数の仕事が重なったとき、何を優先すればよいのか」
など、本人なりに悩むことがあります。
経営者が10分で終わらせられる仕事に、社員が何時間もかかることもあるでしょう。
「普通にやれば、もっと早く終わるはずなのに」と思う気持ちも分かります。
ただ、経営者にとっての「普通」は、これまでの経験の積み重ねによって身についたものです。同じ経験をしていない社員が、最初から同じ速さ、同じ判断で進めるのは難しいこともあります。
それでも、任せることが大きなストレスになるのであれば、無理にすべてを渡す必要はありません。
急ぎの仕事や、失敗したときの影響が大きい仕事は、慣れている人が担当した方がよい場合もあります。
大切なのは、任せるか、自分でやるかの二択にしないことです。
社員に任せる仕事を、小さく分けてみる
一つの仕事を最初から最後まで任せようとすると、説明することも、確認することも多くなります。
そのため、まずは仕事を小さな工程に分けてみます。
たとえば、お客様への提案書を作る仕事なら、
- 必要な情報を集める
- 過去の資料を確認する
- 提案書の構成を考える
- 原稿を作る
- 金額を確認する
- お客様へ説明する
- 提案後の反応を振り返る
という工程があります。
この中から、最初は情報収集だけを任せる。
次は、過去の資料をもとに構成案まで作ってもらう。
慣れてきたら、原稿の作成まで任せる。
このように範囲を少しずつ広げれば、失敗したときの影響を抑えながら、本人の経験を増やせます。
社員がどこまでなら一人で進められ、どこから支援が必要なのかも見えやすくなります。
手順だけでなく、判断基準を渡す
経営者が仕事を早く進められるのは、単に作業に慣れているからだけではありません。
経験の中で身につけた判断基準を持っているからです。
たとえば、
「このお客様には、スピードより丁寧な説明を優先する」
「金額がこの範囲を超えたら、必ず確認する」
「迷ったときは、目先の利益よりお客様との長期的な関係を優先する」
といった基準があります。
しかし、その多くは経営者の頭の中にあり、言葉になっていません。
社員には作業手順だけを説明し、判断が違うと、
「そこは、状況を見て考えてほしい」
と思ってしまうことがあります。
けれど、同じ経験をしていない社員が、最初から同じ判断をするのは難しいでしょう。
仕事を任せるときは、何をするかに加えて、次のことも伝えます。
- この仕事の目的
- 完成とする状態
- 必ず守ってほしいこと
- 本人が自分で決めてよい範囲
- 上司に確認してほしい場面
- 迷ったときに優先する基準
判断基準が共有されると、社員は少しずつ、自分で考えて進められるようになります。
完成してから見るのではなく、途中で確認する
任せた仕事を締め切り直前に確認し、方向が大きく違っていたら、経営者が急いで直すしかなくなります。
そこで、
「最初に構成だけ見せてください」
「3割ほど進んだところで、一度確認しましょう」
「ここで迷った場合は、次へ進む前に相談してください」
と、あらかじめ確認のタイミングを決めておきます。
早い段階で方向を確認すれば、修正する範囲も小さくなります。
社員にとっても、すべて作り終えてから大幅に直されるより、安心して進められます。
途中で確認することは、任せていないということではありません。
自分で完了できるようになるまで、一緒に判断の仕方を確認するための時間です。
自分で直す前に、社員へ返してみる
修正点を見つけたとき、経営者がその場で直せば、数分で終わるかもしれません。
しかし、今後も任せたい仕事であれば、できる範囲で社員へ返してみます。
そのとき、
「違うから直して」
だけでは、社員は何を考えればよいのか分かりません。
たとえば、
「この資料を初めて見るお客様は、どこで迷いそう?」
「今回、一番伝えたいことはどこに入っている?」
「このまま進めたら、どのような問題が起こりそう?」
と問いかけます。
すぐに答えを教えるのではなく、本人が自分の考えを説明し、修正できるようにする。
この時間は、目の前の仕事だけを考えれば遠回りです。
しかし、社員の中に判断基準が残れば、次から確認や修正にかかる時間が少しずつ減っていきます。
任せる相手の強みや関心も確認する
仕事を任せてもなかなか進まないときは、説明の仕方だけではなく、仕事と任せる相手との組み合わせが合っていない場合もあります。
細かく正確に進めることが得意な人。
人と話しながら調整することが得意な人。
新しい方法を考えることが得意な人。
決まった手順を安定して続けることが得意な人。
同じ社員でも、任せる仕事によって力の発揮の仕方は変わります。
経営者が手放したい仕事を、そのまま社員へ渡すだけでなく、
「この仕事のどの部分なら取り組みやすいか」
「これまでの経験を生かせる部分はあるか」
「今後、どのような仕事ができるようになりたいか」
も確認します。
本人の強みや関心と仕事がつながれば、ただ指示された仕事よりも、自分で考えて取り組みやすくなります。
Think for Designでは、任せられる役割と仕組みを一緒に考えます
Think for Designでは、経営者が抱えている仕事を整理し
- どの仕事を手放したいのか
- どの部分なら社員に任せられるのか
- 社員にはどのような強みや経験があるのか
- どの判断基準を言葉にする必要があるのか
- どのような支援や振り返りが必要なのか
を一緒に考えます。
社員との面談では、本人の得意なことや関心、力を発揮しやすい環境を整理し、実際の役割や業務との接点を見つけます。
さらに、任せたあとに仕事が経営者へ戻らないよう、確認方法や育成の仕組みまで整えていきます。
今日の仕事だけを見れば、自分でやった方が早いかもしれません。
それでも、これから先も自分が抱え続けたい仕事なのか。
一度立ち止まり、社員への任せ方から考えてみませんか。