何度言っても伝わらない
「もう何度も伝えているのに、同じことを繰り返す」
「こちらの言っていることを、本当に理解しているのだろうか?」
社員に対して、このように感じることはないでしょうか。
最初は丁寧に説明していたことも、二度、三度と繰り返すうちに、少しずつ余裕がなくなっていきます。
経営者や管理職は、その社員一人だけを見ているわけではありません。
同じミスが続けば、周囲の仕事が増えたり、お客様へ迷惑をかけたりすることもあります。
だからこそ、
「前にも言ったよね」
「どうして分からないの?」
と思ってしまうのは、無理もありません。
それだけ何度も向き合い、なんとか変わってほしいと伝えてきたのだと思います。
しかし、「何度言っても伝わらない」と感じたときに、伝える回数だけを増やしても、状況が変わらないことがあります。
その場合は、社員の意欲や能力を判断する前に、「言ったあとに何が起きているか」を見直す必要があります。
「言った」と「伝わった」は同じではない
経営者や管理職にとっては、何を求めているのか明確なつもりで伝えても、社員には具体的な行動が分からないことがあります。
たとえば「周りを見て動く」という言葉でも、
- 忙しそうな人の仕事を手伝う
- お客様が困る前に声をかける
- 備品が少なくなったら補充する
- 納期に遅れそうな仕事を早めに報告する
- 自分の仕事が終わったら次の指示を聞く
など、会社や職種によって意味が違います。
伝える側の頭には、理想の行動や完成した状態が見えています。
一方、社員にはその景色が見えていないかもしれません。
社員が理解していないのではなく、「その言葉が職場でどの行動を指しているのか」を共有できていない可能性があります。
返事が「はい」でも、理解できているとは限らない
説明をしたときに、社員から「分かりました」と返事があれば、伝わったと思いますよね。
しかし、その場で「分かりません」と言える人ばかりではありません。
何度も質問すると怒られそう。
忙しそうだから、これ以上時間を取らせたくない。
自分だけ理解できていないと思われたくない。
質問したいけれど、何が分からないのか自分でも整理できていない。
そのような状態でも、社員は「分かりました」と答えることがあります。
このときに必要なのは、
「分かった?」
と聞くことではありません。
「では、最初に何から始める?」
「今日中に、どの状態まで進める予定?」
「今の説明を、どのように理解したか教えてもらえる?」
と、本人の言葉で説明してもらうことです。
理解度を試すためではなく、伝える側と受け取る側の認識が合っているかを、一緒に確認します。
そこで違いが分かれば、仕事を始める前に修正できます。
伝わっていても、行動できない場合がある
社員が言われたことを理解していても、実行できないことがあります。
たとえば、
- 仕事量が多く、そこまで手が回らない
- 自分で決めてよい範囲が分からない
- 周囲へ相談しにくい
- 途中で状況が変わっても報告できない
- 複数の上司から違う指示を受けている
といった状態です。
この場合、もう一度同じことを言っても、行動は変わりません。
本人のやる気だけでは解決できない条件が残っているからです。
「どうしてやらなかったの?」と聞くと、責められたと感じて、社員が理由を話せなくなることがあります。
代わりに、
「どこまでは進められた?」
「止まったのは、どの段階だった?」
「進めるために足りなかったものは何だった?」
と、行動を細かく分けて確認します。
話してみると、社員の意欲ではなく、優先順位や権限、情報共有の問題が見つかるかもしれません。
「伝わった」と思えるところまでを、伝える仕事にする
伝えたはずなのに、なぜやらないのか。
何度言えば分かってもらえるのか。
また同じことを説明しなければならないのか。
このように考え続けると、経営者や管理職には「自分はやるべきことをしたのに、社員が応えてくれない」というストレスが残ります。
それなら最初から、伝える仕事の終わりを「自分が言ったところ」ではなく、「相手に伝わったと確認できたところ」に置いてみるのもおすすめです。
「伝えた」ではなく、「伝わったと思えるまでが仕事」と捉える。
その方が、伝える側にとっても、受け取る側にとっても楽になることがあります。
これは、社員が理解するまで何度でも一方的に説明するという意味ではありません。
- 何をしてほしいのか
- なぜ必要なのか
- いつまでに、どの状態まで進めるのか
- 本人はどのように理解したのか
- 進めるうえで分からないことや難しいことはないか
を、お互いに確認するところまでを一つの仕事にするということです。
そこで認識の違いが見つかれば、行動を始める前に修正できます。
「言ったのに」と思いながら、あとから何度も注意するより、最初に数分かけて認識をそろえた方が、結果として時間も感情も消耗しにくくなります。
社員にとっても、理解できているか分からないまま仕事を始め、あとから「前にも言ったよね」と注意されるより安心です。
伝える側だけが我慢するのでも、受け取る側だけに理解する責任を負わせるのでもありません。
伝わったと確認できるところまでを、お互いの仕事として共有する。
そう考えることで、「何度も言っているのに」という行き違いを少しずつ減らせます。
Think for Designでは、伝える側と受け取る側の両方を整理します
Think for Designでは、経営者や管理職の伝え方、仕事の任せ方、組織の環境も一緒に整理します。
社員との個別面談では、本人が指示をどのように受け取り、どこで止まりやすいのか、どのような情報や関わりがあると動きやすいのかを確認します。
経営者や管理職とは、求める行動や判断基準、社員へ任せる範囲を言葉にします。
そして、面談で分かったことを個人の気づきで終わらせず、役割、業務の進め方、1on1、育成の仕組みへつなげます。
「何度言っても伝わらない」と感じたとき、さらに強く伝えることだけが答えではありません。
伝える側と受け取る側の間に、どのような行き違いがあるのか。
一度、社員との関係や仕事の渡し方から整理してみませんか。