社員の話を聞く余裕がない
経営者の方は、せっかく自社で働いてくれている社員には、できるだけ幸せに、楽しく働いてほしいと思っている方が多いかと思います。
困っている社員がいれば力になりたい。
その人の得意なことを生かせる仕事を任せたい。
そう思っていても、現実には社員一人ひとりの話を、時間をかけて聞くことが難しい場合があります。
経営者は毎日、会社のことを背負っています。
売上、資金繰り、取引先への対応、採用、社員の給与、今後の経営。
一つの判断が会社全体に影響する環境で、懸命に考え続けています。
そのような状態で社員の不満や不安を聞いたとき、何も言わずに受け止め続けるのは簡単ではありません。
「社員の話を聞く余裕がない」と感じるのは、社員を大切にしていないからではなく、それだけ経営者自身が会社に人生をかけているからかもしれません。
社員と経営者では、見えている世界が違う
経営者と社員は、同じ会社で働いていても、見えているものが違います。
社員には、目の前の業務や職場の人間関係、勤務時間、給与、家庭との両立などがあります。
経営者には、それに加えて会社全体の売上や利益、取引先との関係、雇用を守る責任、数年先の経営があります。
そのため、社員が、
「この仕事は負担が大きいです」
「今のやり方は合いません」
「もう少し休みがほしいです」
と話したとき、モヤっとしてしまうこともあります。
「会社全体を考えたら、今は仕方がない」
「ほかの社員も頑張っている」
「こちらもできる限りのことをしている」
「その仕事があるから、給与を支払えている」
そんな思いが出てくるのは、自然なことです。
会社のことを真剣に考えているからこそ、社員の言葉にネガティブさや、やる気のなさを感じると、途中で口を出したくなることがあります。
正しいことを伝えても、社員は黙ってしまう
社員が仕事への不満を話したとき、経営者が会社の事情を説明すること自体は間違いではありません。
社員の希望をすべてかなえることもできません。
ただ、社員が話し始めたばかりの段階で、
「でも、それはあなたにも原因があるよね」
「会社としては、これ以上できない」
「そんな考え方では、どこへ行っても同じだよ」
「もっと前向きに考えた方がいい」
と返してしまうと、社員は話すのをやめてしまいます。
経営者の話が正しいかどうかとは別の問題です。
本人はまだ、自分の考えを整理している途中だからです。
一度「ここでは本当のことを話さない方がいい」と感じると、その後の面談では、
「わかりました」
「大丈夫です」
という言葉が増えていきます。
表面上は不満がなくなったように見えても、心の中で解決したわけではありません。
そして、退職を決めたあとに初めて、その事実だけが会社へ伝えられることがあります。
人は、最初から前向きな話ができるとは限らない
社員に自由に話してもらうと、最初に出てくるのは、不満や不安であることが少なくありません。
仕事が多い。
評価に納得できない。
上司と合わない。
何のために働いているのか分からない。
自分だけが損をしている気がする。
聞く側にとっては、「文句を言っているだけ」に見えることもあります。
しかし、その言葉だけで本人の意欲を判断するのは、少し早いかもしれません。
人は、頭や心の中にたまっているものを言葉にして初めて、自分が何に困っているのかを整理できることがあります。
話しながら、
「すべてが嫌なわけではなかった」
「本当は、仕事そのものではなく、相談できないことがつらかった」
「相手に変わってほしいと思っていたけれど、自分から伝えられることもあるかもしれない」
「会社を辞めたいのではなく、この仕事の進め方を変えたかった」
と気づくこともあります。
そこまで話せると、ようやく本人自身が「これからどうしたいか」を考えられる状態になります。
不満を聞くことは、不満に同意することでも、社員の要求をすべて受け入れることでもありません。
本人が感情や状況を整理し、自分で次の行動を考えられるところまで待つことです。
社員を変えたいなら、最後まで話してもらう方が近道になる
社員にもっと主体的に動いてほしい。
自分で考え、行動できるようになってほしい。
そう考えるのであれば、すぐに正しい答えを伝えるより、本人が自分で気づくところまで話してもらう方が、結果的に近道になる場合があります。
本人が自分で、
「次はこう伝えてみよう」
「この仕事の進め方を変えてみたい」
「自分にも改善できるところがありそうだ」
と気づけば、会社から指示されたときとは、行動の意味が変わります。
ただし、そこに至るまでには時間がかかります。
話が行ったり来たりすることもあります。
同じ不満が何度も出てくることもあります。
経営者から見れば、すぐに解決策が分かる話でも、あえて結論を急がずに聞く必要があります。
会社を背負い、限られた時間の中で多くの判断をしている経営者にとって、これを日常的に続けることは、大きなストレスになる可能性があります。
だから、経営者がすべてを聞かなければならないわけではありません。
話を聞く役割は、フラットな立場の人へ任せてもいい
経営者が社員を大切にすることと、経営者自身がすべての相談を受けることは同じではありません。
社員が安心して話せる場を用意し、その役割を別の人に任せることも、社員を大切にする方法の一つです。
社内に適任者がいる場合は、傾聴やコーチングについて学んだ人に担当してもらう方法があります。
ただし、社内の人が担当すると、
「話した内容が評価に影響しないか」
「上司や経営者へ、そのまま伝わらないか」
と社員が心配することもあります。
その場合は、会社と社員のどちらか一方に偏らない、外部の面談者へ任せる方法もあります。
経営者と直接利害関係がなく、社員を評価する立場でもない人であれば、社員は考えを整理しやすくなります。
経営者にとっても、感情的に反応してしまう前に、社員が何に困り、何を望んでいるのかを整理した状態で受け取れるようになります。
「聞けない自分」を責めるより、話せる仕組みをつくる
「自分には、社員の話を聞く余裕がない」と感じたときは、自分を責めるのではなく、社員が安心して話せる仕組みを考えるタイミングです。
Think for Designでは、社員が仕事だけでなく、これまでの経験や大切にしたいことも含めて、自分の現在地を整理できる外部面談を行っています。
話を聞くだけで終わらせず、本人が自分でできること、上司へ相談したいこと、会社側で見直したい環境や仕組みを分け、役割や組織改善へつなげます。
社員の話を聞く余裕がないと感じている経営者の方こそ、一度、社員との対話を社外に任せる方法を考えてみませんか。