コーチングが必要なのは、社員ではなく経営者かもしれない
「この社員は、何を言っても変わらない」
「これまで何度も声をかけてきたけれど、もう難しいと思う」
「うちの会社には、特別な強みなんてない」
そう感じてしまう理由として、実際にこれまで何度も社員と話し、さまざまな方法を試してきたのだと思います。それでも期待した変化が見られなければ、「これ以上は難しい」と感じるのも無理はありません。
ただ、その社員や会社について、いつの間にか見方が固定されていることもあります。
そのようなとき、本当に先にコーチングが必要なのは、社員ではなく経営者や管理職かもしれません。
「この社員はこういう人」と決めた瞬間、見えなくなるものがある
同じ社員と長く働いていると、その人に対する印象が少しずつ固まっていきます。
「自分から動かない人」
「何度教えても覚えない人」
「責任のある仕事を任せられない人」
「新しいことには興味がない人」
過去の行動を見て、そのように感じてしまうことがあります。しかし、経営者や管理職には、社員の働き方を見て、仕事を任せる判断をする責任があるので仕方のないことです。
ただ、一度その印象が固まると、その後の行動も同じ見方で捉えやすくなります。
たとえば、社員が会議で発言しなかったときに、「やはり主体性がない」と考えるかもしれません。
けれど、実際には、
- その場で考えをまとめることが苦手だった
- 過去に提案を否定された経験があった
- どこまで自分が意見を出してよいか分からなかった
- 会議の後なら、落ち着いて考えを伝えられた
- 会社が何を求めているのか理解できていなかった
という可能性もあります。
同じ行動でも、その背景は一つではありません。
「この社員はこういう人」という見方が強くなると、本人の変化だけでなく、その人が力を発揮しにくくなっている環境も見えにくくなります。
「いろいろ声をかけた」が、本人に届いていたとは限らない
もちろん、経営者や管理職が、これまで何もしてこなかったわけではありません。
注意をした。
励ました。
仕事を任せた。
何度も「困っていることはない?」と聞いた。
それでも変わらなかったから、もう本人の問題だと思ってしまうことがあります。
ただし、声をかけたことと、その声が本人に届いたことは同じではありません。
「もっと主体的に動いてほしい」
「成長してほしい」
「周りを見て行動してほしい」
こうした言葉は、伝える側にとっては明確でも、受け取る社員には「具体的に何をすればよいのか」が分からないことがあります。
また、声をかけるタイミングや関係性によっては、社員が本当の状況を話せないこともあります。
何を話してよいのか分からない。弱音を見せたくない。評価に影響するのが怖い。話しても変わらないと思っている。
そのような背景があれば、何度質問しても社員から本音は出てきません。
必要なのは、声かけの回数を増やすことだけではなく、「自分はこの社員をどのように見ているのか」「相手が話しにくくなる関わり方をしていないか」を一度振り返ることです。
経営者にも、考えを整理できる相手が必要
経営者や管理職は、社員の相談を受けたり、問題を解決したりする立場になりやすいものです。
一方で、自分自身の考えを整理する機会は、意外と多くありません。
社員について感じていることを率直に話すと、「部下の悪口だと思われるのではないか」と心配になる。
社内の人には、経営上の迷いや不安を見せにくい。
最終的な判断をする立場だからこそ、誰にも相談できない。
その結果、自分の中にある考えだけで判断を続けることになります。
コーチングは、経営者に正しい答えを教える場ではありません。
対話を通して、
- なぜ、その社員を「変わらない人」だと感じているのか
- これまで、どのような言葉をかけてきたのか
- 本人に、具体的に何を期待しているのか
- 本人の問題と、組織の問題を分けて考えられているか
- ほかの役割や関わり方を試す余地はないか
といったことを整理する場です。
話していくうちに、「本人の意欲がないと思っていたけれど、期待する行動を具体的に伝えていなかったかもしれない」などと気づくことがあります。
反対に、「十分な支援をしてきたうえで、本人にも向き合ってもらう必要がある」と判断できる場合もあります。
コーチングを受けることは、経営者や管理職の考えが間違っていると認めることではありません。
一人で抱えてきた判断を、別の角度から確認するための時間です。
会社の強みや魅力も、経営者の中で固定されていく
見方が固定されるのは、社員に対してだけではありません。
会社の強みや魅力についても、同じことが起こります。
創業当時から大切にしてきた技術。
長く選ばれてきた商品。
経営者が誇りに思っている歴史。
これらは、会社にとって大切な価値です。
しかし、会社の魅力は、それだけとは限りません。
時代が変わり、働く人が変わり、お客様が求めるものも変われば、会社の中には新しい魅力が生まれます。
たとえば経営者には当たり前に見えていることでも、社員から見ると、
- 若手でも意見を聞いてもらえる
- 家庭の事情に合わせて働き方を相談できる
- お客様との距離が近い
- 部署を越えて助け合える
- 仕事の進め方を自分で工夫できる
- 地域のお客様と長く関係を築ける
といった点が、働き続けたい理由になっているかもしれません。
また、今いる社員の経験や得意なことによって、以前にはなかった商品、接客、採用、発信の可能性が生まれていることもあります。
会社の魅力を経営者だけで決めてしまうと、今の社員だからこそ生まれている価値を見落としてしまいます。
社員へのコーチングだけでは、変化が続かないこともある
社員がコーチングを受け、自分の強みや希望に気づいたとしても、それを生かせる環境がなければ、職場での変化にはつながりません。
本人が新しい役割に挑戦したいと考えても、上司が「この人には難しい」と決めつけていれば、試す機会は生まれません。
社員が働き方について相談しても、「昔からこの方法だから」と返されれば、対話はそこで止まります。
だからこそ、社員へのコーチングと同時に、経営者や管理職が自分の見方や関わり方を振り返ることが重要です。
社員だけを変えるのではなく、社員を見る側、仕事を任せる側、環境をつくる側も一緒に考える。
その両方があって初めて、対話で見つかった強みや希望を、役割や組織の変化につなげることができます。
本当にコーチングが必要なのは、経営者や管理職からかもしれない
Think for Designでは、社員へのコーチングだけでなく、経営者や管理職との対話を通して、社員に対する見方、仕事の任せ方、会社の強みを整理します。
そこで見つかったものを、社員の役割や組織改善、採用、広報、ブランディングへつなげていきます。
社員を変える方法を探す前に、今どのように社員と会社を見ているのか、一度整理してみませんか。