社員のキャリアを考えることは、会社のためになる?配置・育成・定着につなげる考え方
「社員のキャリアまで、会社が考える必要があるのだろうか」
そう感じる経営者の方もいるかもしれません。
会社は、社員の人生すべてに責任を負えるわけではありません。
本人の希望を聞いても、希望する仕事や働き方をすべて用意できるとは限らないからです。
また、社員の将来について話すことで、
「やりたいことが見つかって、転職してしまうのではないか」
「会社への不満ばかり出てくるのではないか」
と不安になることもあります。
それでも、社員がどのような人生を送りたいのか、何を大切にして働いているのかを知ることには会社としても意味があります。
本人の価値観や今後の希望が分かると、会社でどのような役割を任せられるのか、どのような育成や支援が必要なのかを考えやすくなるからです。
社員のキャリアを考えることは、本人のためだけではありません。
配置・育成・定着など、会社の組織づくりにもつながっていきます。
「一人ひとりの人生」と「会社の成長」を両立する企業の事例
2026年9月16日、厚生労働省委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業」で、従業員64名の幸洋汽船株式会社の事例が公開されました。
同社は、「乗組員の人生と会社の成長を両立させる」ことを考え、人材育成と組織づくりに取り組んでいます。
船上で働く乗組員は、他業界や他職種と接する機会が少なく、船を下りたあとのキャリアを描きにくいという課題がありました。
そこで、ジョブ・カードを使ったキャリアセミナーとキャリアコンサルティングを実施。これまでの職業人生を振り返り、自分が大切にしている価値観や強み、働く意味を整理する機会をつくりました。
参加者からは、自分の現在地や仕事への思いを再確認できたという声のほか、仕事に対する考え方の変化や、資格の勉強への意欲も見られたと報告されています。
また、会社では今後、船上の仕事だけでなく、陸上業務なども含めて、一人ひとりの強みや興味を生かせる選択肢を増やそうとしています。
本人のキャリアを会社の外だけで考えるのではなく、社内に新しい選択肢をつくることで、長く働ける環境と組織の成長を両立しようとしている事例です。
参考:人材育成と組織づくりで、乗組員一人ひとりの人生を豊かにしたい|幸洋汽船株式会社
社員の人生に介入する必要はない
社員のキャリアを支援するといっても、会社が本人の人生を決めたり、私生活へ深く入り込んだりする必要はありません。
家庭の事情や健康状態、過去の経験など、本人が話したくないことまで聞き出すものでもありません。
会社が知りたいのは、私生活の詳しい内容ではなく、本人が働くうえで大切にしていることです。
例えば、
- どのような状態で働けると、力を発揮しやすいか
- 仕事を通じて、どのように成長したいか
- 今後、身につけたい能力はあるか
- これまでの経験で、まだ仕事に生かせていないものはあるか
- 働き続けるために、見直したいことはあるか
といった内容です。
「どのような人生を送りたい人なのか」を知ることと、「その人生に会社が介入すること」は違います。
本人が話せる範囲を尊重しながら、会社との接点を探していきます。
仕事のことだけを聞いても、働く理由はすべて見えない
社員面談で、
「今後、どのような仕事をしたいですか」
「身につけたいスキルはありますか」
と聞いても、すぐに答えられない人は少なくありません。
仕事の目標だけを切り取って聞かれても、自分がどうなりたいのか、まだ整理できていないからです。
そのようなときは、仕事以外も含めて、これまでの経験や大切にしてきたことを振り返ります。
人から頼られることが多かった場面。
自然に続けられたこと。
反対に、強い負担を感じた環境。
仕事を選ぶときに優先してきたこと。
これから大切にしたい時間や生活。
こうしたことを整理すると、本人が働くうえで重視しているものが見えてきます。
例えば、「家族との時間を大切にしたい」という希望があった場合も、単に勤務時間を短くしてほしいという話とは限りません。
限られた時間の中で集中して働きたいのかもしれません。
仕事を属人化させず、安心して引き継げる状態をつくりたいのかもしれません。
将来も働き続けられる専門性を身につけたいのかもしれません。
本人が大切にしたいことを知ると、働き方だけでなく、育成や業務改善の方向も見えやすくなります。
個人のキャリア支援が、配置や育成の材料になる
社員の価値観や強み、関心が分かると、現在の仕事との接点を考えられるようになります。
例えば、
- 人に分かりやすく説明することが得意な社員に、新人教育の一部を任せる
- 細かな変化に気づける社員に、業務の確認や品質管理を任せる
- 商品への思いが強い社員に、接客だけでなく採用や情報発信にも参加してもらう
- 新しい方法を考えることが好きな社員に、業務改善の提案を任せる
- 人との調整が得意な社員に、部署間の連携を支える役割を任せる
といった可能性があります。
最初から大きな異動や新しい役職を用意する必要はありません。
現在の仕事の一部を分け、小さな役割として試すこともできます。
本人の関心と会社に必要な仕事が重なるところから始めれば、単に「この仕事をやってください」と指示するよりも、本人が意味を感じながら取り組みやすくなります。
また、実際に役割を試すことで、会社側も本人の新しい力に気づけます。
キャリア面談は、社員の希望を聞くだけの時間ではなく、社内にある人材や経験を見直す機会にもなります。
社員の声から、会社の魅力が見つかることもある
キャリア面談を通じて見つかるのは、本人の強みだけではありません。
社員が、
「なぜこの会社で働き続けているのか」
「どのような仕事に誇りを感じているのか」
「入社前と比べて成長したことは何か」
を言葉にすることで、社内では当たり前になっている会社の魅力が見えてくることがあります。
経営者が考えている会社の強みと、社員が感じている魅力が異なることもあります。
その声は、本人の同意を得たうえで、
- 求人票
- 採用サイト
- 社員インタビュー
- 会社紹介資料
- SNSや広報記事
- 顧客へ伝えるブランドメッセージ
などに生かせます。
社員の内側にある価値を見つけ、仕事や役割につなげ、さらに社外へ伝える。
個人のキャリア支援は、人材育成だけでなく、採用やブランディングの材料にもなります。
まずは少人数から、会社との接点を探してみる
社員のキャリア支援を始めるからといって、最初から全社員を対象に大きな制度をつくる必要はありません。
まずは3人から5人程度の少人数で面談を行い、
- 本人は何を大切にして働いているか
- どのような経験や強みを持っているか
- これから伸ばしたい能力は何か
- 現在の仕事で負担になっていることは何か
- 会社の中で試せそうな役割はあるか
を整理する方法もあります。
ただし、面談で知った個人の経験や家庭事情を、本人の同意なく会社へ伝えることは避けます。
会社へ共有するのは、本人が共有に同意した役割の希望や必要な支援、個人を特定できない組織全体の傾向などです。
少人数から始めれば、社員の声を受け取ったあと、会社としてどのように対応するかも確認しながら進められます。
Think for Designは、本人の人生と会社の方向性が重なる場所を探します
Think for Designのキャリア面談では、これまでの人生や経験を振り返り、価値観、強み、関心、力を発揮しやすい環境を整理します。
そのうえで、現在の仕事や会社の役割との接点を考えます。
会社が社員の希望をすべてかなえることを目指すのではありません。
本人が大切にしたいことと、会社がこれから必要としている役割が、どこで重なるのかを探します。
さらに、面談で見つかった社員や会社の魅力を、求人票、採用サイト、広報、ブランディングへつなげるところまで支援します。
社員のキャリアを考えることは、福利厚生のように本人を支援するだけの取り組みではありません。
今いる社員の力を見つけ、役割をつくり、人が育つ組織へ変えていくための組織づくりを行っていきましょう。