「やりたいことがない」と言う社員から、強みを引き出す面談の方法
社員との面談で、本人に強みを聞いても直接答えてもらえるものではありません。
また、「何がやりたいのか」についても言語化できていないこともあります。
その場合は、これまでの経験について話してもらい、本人の行動や感情が動いた場面を一緒に振り返ることことから始めます。
「あなたの強みは?」と聞かれても答えにくい
そもそも、自分の強みを言葉にすることは簡単ではありません。
「強み」と聞くと、
「ほかの人より優れていること」
「仕事で高い成果を出せる能力」
「特別な資格や経験」
を考える人もいます。
その結果、自分には人に話せるほどのものはないと思い、「特にありません」と答えてしまいます。
また、上司との面談では、
「ここで答えたことが、今後の仕事や評価に影響するかもしれない」
と慎重になることもあります。
やりたいことを伝えたのにうまくいかなかったら、気まずくなる。
得意だと話したことを、今後ずっと任されるかもしれない。
まだ自信がないことを、強みとして話してよいのか分からない。
そのような不安があれば、簡単には答えられません。
また、返答に困っている場合は、本人に強みがないのではなく、質問が抽象的すぎる可能性もあります。
強みは、過去の経験を振り返る中で見えてくる
2026年9月2日に掲載された、厚生労働省委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業」のジョブ・カードセミナーでも、キャリアの棚卸しを通じて、自分では気づいていなかった強みや、大切にしている価値観を言語化することが扱われています。
参考:厚労省委託「キャリアの振り返り・強み・価値観の言語化」
強みを見つけるためには、現在の仕事内容だけでなく、これまでの経験を振り返ることが役立ちます。
例えば、次のような質問があります。
- 子どもの頃、時間を忘れて取り組んでいたことはありますか
- 学校や地域で、よく人から頼まれていたことはありますか
- これまでに、自然と長く続けられたことはありますか
- 仕事で、時間が早く過ぎたと感じたことはありますか
- 周囲から感謝されたことや、褒められたことはありますか
- ほかの人は大変そうでも、自分にはそれほど苦にならないことはありますか
- 反対に、どのような環境では強い負担を感じますか
- これまでで「自分らしく働けた」と感じたのは、どのようなときですか
仕事と直接関係がない経験でも構いません。
地域の行事で人をまとめた経験。
子どもの予定や持ち物を管理してきた経験。
趣味について調べ、周囲へ分かりやすく伝えた経験。
友人から相談されることが多かった経験。
本人にとっては当たり前でも、その行動の中に、仕事で生かせる力が表れていることがあります。
楽しそうに話すところを、もう少し聞いてみる
面談では、回答の内容だけでなく、本人の話し方の変化にも注目します。
ある話題になると、急に話が具体的になる。
表情が明るくなる。
自分から詳しい説明を始める。
「もっとこうしたかった」とアイデアが出てくる。
このような変化があれば、本人の関心や強みが表れている可能性があります。
そこで、すぐに次の質問へ移らず、
「そのときは、具体的に何をしたのですか」
「どのようなところが楽しかったのですか」
「うまく進めるために、何を工夫しましたか」
「周りの人からは、どのような反応がありましたか」
「同じようなことは、ほかの場面でもありましたか」
と、もう少し聞いてみます。
強みは、「私は○○が得意です」という回答よりも、本人が実際に取った行動の中に表れます。
本人にとっての「普通」が、強みであることもある
例えば、本人が、
「新人からよく質問されます。でも、話しかけやすいだけだと思います」
と話したとします。
本人は特別な能力だと思っていなくても、詳しく聞いてみると、
- 相手の理解度に合わせて説明している
- 分からない様子に早く気づいている
- 質問しやすい雰囲気をつくっている
- 一度に教えすぎず、順番を考えている
といった行動が見つかることがあります。
そこには、説明力、観察力、相手に合わせる力、関係をつくる力が表れています。
また、
「急な変更が多い仕事は苦手です」
という話も、単なる苦手意識とは限りません。
その人は、事前に計画を立てることや、抜け漏れなく準備すること、一定の品質を守ることを大切にしているのかもしれません。
本人が負担を感じる環境の反対側に、強みや価値観が隠れていることもあります。
苦手なことを無理に強みに言い換える必要はありませんが、「なぜ嫌だったのか」まで聞くことで、その人が大切にしているものを理解しやすくなります。
面談者が強みを決めつけない
経験を聞く中で強みが見えてきても、面談者だけで、
「あなたはコミュニケーション能力が高い人です」
「あなたはリーダーに向いています」
と決めつけることには注意が必要です。
本人は、人に説明することは好きでも、大人数をまとめる役割には負担を感じるかもしれません。
細かな確認が得意でも、それを一日中続けると疲れてしまう可能性もあります。
強みが見つかったときは、
「新人へ説明するときに、相手の様子をよく見ているように感じました。ご自身ではどう思いますか」
「計画を立てて、抜け漏れを防ぐことが得意なのかもしれません。ほかにも似た経験はありますか」
と、本人と一緒に確認します。
一つの経験だけで判断せず、複数の場面で繰り返されている行動を探すことも大切です。
強みは、本人を分類するための言葉ではありません。
その人が、どのような場面で力を発揮しやすいのかを考えるための手がかりです。
「強みを聞く面談」から、「強みが出てくる面談」へ
「あなたの強みは何ですか」
「今後、何をやりたいですか」
と聞いて、すぐに答えられる社員ばかりではありません。
答えられないからといって、強みや意欲がないとは限りません。
過去の経験を振り返る。
楽しそうに話すところを、もう少し聞く。
本人が取った行動を具体的に確認する。
苦手な環境の中から、大切にしていることを探す。
こうした対話を重ねることで、本人も気づいていなかった強みが少しずつ言葉になります。
Think for Designでは、仕事上の成果だけでなく、これまでの人生や経験も振り返りながら、本人の価値観、強み、関心を整理します。
さらに、言葉にした強みを現在の仕事や役割とつなぎ、小さく試して振り返るところまで支援します。
面談の目的は、会社が用意した質問に答えてもらうことではありません。
本人の中にある経験を一緒に振り返り、その人が力を発揮できる可能性を見つけることです。
「特にありません」という言葉が返ってきたときこそ、質問の仕方を変え、その人の経験を聞くところから始めてみませんか。