研修をしても現場へ戻ると元通りになる。職場側で見直したい5つのこと
社員に新しい知識や考え方を身につけてもらうために、研修を実施する。
ところが、数週間後に現場を見ると、仕事の進め方もコミュニケーションも以前と変わっていない。
これは、よくあることなのですが、一時的に本人が行動を変えようとしても、職場が以前のままであれば、新しい行動を続けることは難しいのです。
その場合、社員へもう一度学ばせる前に、現場へ戻ったあとに何が起きているのかをまず確認することが大切です。
研修よりも、日常の職場環境の方が影響力は強い
研修は、数時間から一日程度で実施されることが多いですよね。
一方、社員はその後、これまでと同じ職場で、同じ上司や同僚と働きます。
研修で新しい方法を学んでも、日常の職場で以前と同じ行動を求められれば、次第に元へ戻ります。
このような経験が続けば、研修で伝えた内容よりも、職場で求められる行動の方が、優先されてしまいます。
1.上司の行動が、研修内容と一致しているか
社員だけが研修を受け、上司や経営者がその内容を知らない場合があります。
社員が研修で新しい方法を学んでも、上司が従来の進め方を求めれば、実践しにくくなります。
普段の仕事では
納期を守らなければならない。
お客様を待たせられない。
失敗した場合は、自分が責任を負う。
そのような事情から、研修内容を忘れてしまう場合があります。
研修を実施するときは、参加者だけでなく、その人の上司にも、
- 研修で何を扱ったのか
- どのような行動を試すのか
- 上司にはどのような支援が必要か
- 失敗したときに、どこまで許容するのか
を共有しておく必要があります。
社員の行動だけを変えるのではなく、それを受け止める上司の関わり方も一緒に考えます。
2.新しい行動を試す時間があるか
研修を受けたあと、通常業務へ戻れば、以前と同じ仕事が待っています。
そこに研修で学んだことを追加すると、本人にとっては仕事が増える場合があります。
例えば、業務改善研修を受けて、
「仕事の手順を見直して、マニュアルを作ろう」
と思っても、日々の業務だけで時間がいっぱいなら取り組めません。
接客研修で、お客様への提案を丁寧にしようと思っても、対応件数や時間だけを求められていれば、余裕を持って接客することは難しいかもしれません。
研修後に新しい行動を求める場合は、
「何を始めるか」だけでなく、
「そのために、何を減らすか」
も考える必要があります。
3.社員に必要な権限が渡されているか
研修で考え方を学んでも、本人に決める権限がなければ行動へ移せません。
例えば、接客研修で「お客様に合わせた提案」を学んでも、提案内容を変更するたびに上司の確認が必要であれば、現場では使いにくいでしょう。
業務改善研修で良い案が出ても、
「これまでの方法だから変えられない」
「経営者の承認がなければ進められない」
という状態では、提案すること自体を諦めてしまいます。
もちろん、すべてを社員の判断に任せる必要はありません。
会社として守るべき品質や金額、安全上の基準もあります。
大切なのは、
- 本人が決めてよい範囲
- 上司へ確認する必要がある範囲
- 必ず守らなければならない基準
- 試験的に変更してよい期間や対象
を明確にすることです。
小さな範囲でも、自分で考えて試せる権限があれば、研修で得た知識を経験へ変えられます。
4.評価される行動と、研修内容が矛盾していないか
会社が伝えていることと、実際に評価していることが異なる場合もあります。
「失敗を恐れずに挑戦してほしい」と伝えながら、失敗すると強く責められる。
「チームで協力してほしい」と伝えながら、個人の売上だけで評価される。
「お客様に寄り添ってほしい」と伝えながら、対応件数や時間の短さだけを求められる。
「主体的に提案してほしい」と伝えながら、これまでと違う意見は受け入れられない。
社員は、会社の言葉だけでなく、実際に何を評価しているのかを見ています。
研修内容を定着させたいときは、評価制度を大きく変更しなくても、
「研修後に試したことを1on1で確認する」
「成功した結果だけでなく、工夫した過程も聞く」
「改善提案をしたこと自体も共有する」
など、会社が新しい行動を見ていると伝えることができます。
研修で求める行動と、日常で認められる行動を近づける必要があります。
5.研修内容が、自社の具体的な仕事に置き換えられているか
一般的な知識を学んでも、自社の仕事でどう使うかが分からなければ、行動にはつながりません。
例えば、「部下へ適切にフィードバックする」という内容を学んでも、
- どのタイミングで伝えるのか
- 何を基準に評価するのか
- 忙しい現場で時間をどう確保するのか
- 年上の部下にはどう伝えるのか
- 改善が見られない場合はどうするのか
まで考えなければ、実際の場面では迷います。
研修後には、「理解できたか」だけでなく、次のことを具体的にします。
- どの業務で使うのか
- いつ試すのか
- 誰と実践するのか
- 最初に変える行動は何か
- 困ったときは誰に相談するのか
- 何を見て変化を確認するのか
例えば、コミュニケーション研修なら、「話をよく聞く」という目標だけではなく、
「次回の1on1では、意見を伝える前に、本人の話を要約して確認する」
というところまで決めます。
リーダー研修なら、
「部下へ仕事を任せる」ではなく、
「今週、一つの業務を選び、目的・判断基準・確認するタイミングを伝えて任せる」
と具体化します。
行動が具体的になると、実践できたかどうかも振り返りやすくなります。
研修前に、現場で変えたい行動を決めておく
研修を定着させるための準備は、研修後ではなく、実施前から始まります。
「社員の意識を変えたい」
「コミュニケーションを良くしたい」
という目的だけでは、研修後に何を確認すればよいのか分かりません。
研修前に、
- 現在、現場で何が起きているのか
- 誰の、どの行動を変えたいのか
- その行動を妨げているものは何か
- 行動が変わると、仕事にどのような変化が出るのか
- 会社や管理職は何を変える必要があるのか
を整理しておきます。
例えば、「会議で社員から意見が出ない」という課題であれば、発言方法を学ぶ研修だけでは足りないかもしれません。
上司が最初に結論を話している。
意見を出しても採用されない。
発言すると、その人へ仕事が集中する。
会議の目的や議題が事前に共有されていない。
このような職場側の原因があれば、社員の発言力だけを高めても状況は変わりません。
研修を企画する前に現場を確認することで、本当に必要なのが研修なのか、業務や会議の仕組みを変えることなのかも判断しやすくなります。
Think for Designでは、研修が実践できる職場環境まで考えます
Think for Designでは、決められた内容の研修を実施して終わりにはしません。
研修前に経営者や管理職、必要に応じて社員へ話を聞き、現場で実際に起きていることを整理します。
そのうえで、
- 研修後に変えたい具体的な行動
- 上司や会社に必要な支援
- 社員が試せる小さな役割
- 業務量や権限の見直し
- 実践後の面談や振り返り
- 社内で継続する担当者や仕組み
まで一緒に考えます。
研修で社員だけを変えようとするのではなく、新しい行動を続けられる職場環境を整える。
外部の支援がなくなったあとも、社内で学び、試し、改善できる状態をつくることが目標です。
研修をしても現場へ戻ると元通りになるときは、社員の意識を疑う前に、元へ戻している職場の仕組みがないかを確認してみませんか。