「主体性」「協調性」「責任感」は伝わっている?
社員の評価項目として、
「主体性」「協調性」「責任感」
といった言葉を使っている会社は多いと思います。
どれも、仕事をするうえで大切なのですが、評価する側が考えている「主体性」と、社員が考えている「主体性」は、同じでしょうか?
経営者は、自分で考えて改善案を出してほしいと思っている。
社員は、指示された仕事を先回りして終わらせることが主体性だと思っている。
評価者によっては、会議で積極的に発言する人を「主体性がある」と評価し、別の評価者は、目立たなくても必要な準備を進めている人を高く評価しているかもしれません。
同じ言葉を使っていても、その意味が違えば、評価にも差が生まれます。
社員にとっても、
「もっと主体性を持ってほしい」
「責任感が足りない」
と言われただけでは、次に何を変えればよいのか分かりませんよね。
「今どきの社員には細かく説明しなければ伝わらない」と感じることがあるかもしれませんが、これは若い世代の能力や意欲だけの問題ではありません。
会社が求めていることを、誰でも同じように理解できる言葉へ変えることが現代では特に必要になっているのです。
昔は「言わなくても分かる」が成り立ちやすかった
以前は、同じ会社で長く働き、先輩の仕事を見ながら会社の価値観や判断基準を覚えていく働き方が多くありました。
「主体性を持って動こう」
「周囲と協力しよう」
「責任を持って最後までやろう」
という抽象的な言葉でも、職場の中に共通するイメージがあり、社員は周囲の行動を見ながら意味を理解できたのかもしれません。
一方、今は働き方も人材も多様になっています。
中途採用で異なる会社の経験を持つ人が入る。
短時間勤務や在宅勤務など、働く時間や場所が異なる。
年齢や雇用形態の違う社員が一緒に仕事をする。
仕事の進め方も、口頭でのやり取りから、チャットやオンライン会議へ広がっています。
同じ職場にいても、全員が同じ場面を見て、同じ感覚を身につけられるとは限りません。
そのため、「うちの会社では当たり前」と思っていることほど、言葉にして伝える必要があります。
「主体性」は、積極的に話すことだけではない
例えば、「主体性のある社員」と聞いて、どのような人を思い浮かべるでしょうか?
会議で積極的に発言する人。
指示される前に仕事を始める人。
新しい企画を提案する人。
このような行動は分かりやすいため、評価されやすい傾向があります。
しかし、主体性の表れ方はそれだけではありません。
・分からないことを自分で調べ、調べても判断できないことを整理して相談する。
・仕事の中で不便な点に気づき、小さな改善案を出す。
・自分の担当業務が遅れそうなとき、早めに周囲へ伝えて対応を考える。
こうした行動にも主体性は表れています。
発言が得意な人だけを高く評価すると、目立たないところで考え、準備している社員の力を見落とす可能性があります。
「主体性」という言葉だけで評価するのではなく、会社として、どのような行動を期待しているのかを示すことが大切です。
「責任感」が、残業や抱え込みになっていないか
昔ながらの職場では、
「最後まで一人でやり切る」
「忙しくても休まない」
「時間がかかっても終わるまで残る」
といった姿勢が、責任感として評価されることもありました。
もちろん、引き受けた仕事を最後までやり遂げようとすることは大切です。
しかし、長く働くことや、一人で抱え込むことが責任感とは限りません。
仕事が期限に間に合わない可能性があるのに、直前まで誰にも相談しない。
問題が起きていることを隠し、自分だけで解決しようとする。
その結果、お客様やほかの社員へ影響が広がってしまえば、本人が懸命に働いていても、会社が求める成果にはつながりません。
今の職場で求めたい責任感は、
- 納期に影響が出そうな時点で共有する
- 自分で対応できる範囲を見極める
- 問題が起きたときは、状況と対応策を報告する
- 引き継ぐ相手が困らないよう、必要な情報を残す
- 最後まで自分の役割を確認する
といった行動かもしれません。
「残業してでも終わらせる人」ではなく、「問題が大きくなる前に相談し、仕事を完了できる方法を考えられる人」を評価する。
そのように言葉の意味を見直すことも、今の働き方に合った評価につながります。
「協調性」は、周囲へ合わせることではない
協調性も、人によって意味が変わりやすい言葉です。
人当たりがよく、誰とでも雑談できる人。
上司の意見に反対せず、頼まれた仕事を引き受ける人。
職場の行事や食事会へ積極的に参加する人。
このような人が「協調性がある」と評価されることがあります。
しかし、協調性は、周囲に合わせ続けることではありません。
必要な場面で違う意見を伝えることが、チームを助ける場合もあります。
例えば、
- 相手の役割を理解し、必要な情報を期限内に共有する
- 忙しい人がいたら、自分にできることを確認する
- 意見が違っても、相手の話を聞いて共通点を探す
- ミスに気づいたとき、責めるのではなく改善方法を考える
- 自分に仕事が集中している場合は、早めに相談する
といった行動です。
明るく会話できるかどうかではなく、チームが仕事を進めるために必要な関わりができているかを見る必要があります。
抽象的な言葉を「見える行動」に変える
評価項目をつくるときは、抽象的な言葉をなくす必要はありません。
会社が大切にしたい価値観として「主体性」「責任感」「協調性」を残し、その下に具体的な行動を示します。
| 抽象的な評価項目 | そのままだと起こりやすいこと | 行動にすると |
|---|---|---|
| 主体性 | 発言が多く、積極的に見える人が評価されやすい | 分からないことを調べ、自分の案を持って相談する/改善案を出す |
| 責任感 | 残業する人や、仕事を抱え込む人が評価されやすい | 納期に影響が出そうな時点で共有し、対応策を考える |
| 協調性 | 人当たりのよさや、周囲に合わせる姿勢で判断される | 相手の役割を理解し、必要な情報を期限内に共有する |
厚生労働省の職業能力評価基準も、知識や技能だけでなく、「成果につながる職務行動例」を業種や職種ごとに整理しています。評価する言葉だけでなく、実際の仕事でどのような行動を取ったかを見る考え方です。mhlw.go.jp
ただし、すべての職種に同じ行動を求める必要はありません。
営業職の主体性と、事務職の主体性。
新人に求める責任感と、管理職に求める責任感。
一人で完結する仕事と、複数の部署が関わる仕事の協調性。
職種や役割、経験年数によって、求める行動は変わります。
会社の「当たり前」を、今の社員に伝わる言葉へ
「今どきの社員には、具体的に言わないと伝わらない」と感じることがあるかもしれません。
けれど、具体的に伝えることは、社員を甘やかすことではありません。
評価する側の感覚だけに頼らず、会社が本当に求めている行動を明らかにすることです。
Think for Designでは、経営者や社員への面談、ワークショップを通して、
- 会社が大切にしている価値観
- 経営者が社員へ期待していること
- 現場で評価されている具体的な行動
- 現在の仕事で改善したい行動
- 職種や役割ごとに必要な力
を言葉にします。
評価制度をつくることだけを目的にするのではなく、社員が会社の期待を理解し、自分の強みを生かしながら次の成長へ進める状態を一緒に考えます。
「主体性を持ってほしい」
「もっと責任感を持ってほしい」
そう感じたときは、その言葉が会社の中でどのような行動を指しているのか、一度具体的にしてみませんか?
抽象的な評価項目を、誰にでも分かる行動へ変えることが、評価への納得と社員の成長につながっていきます。