退職を促すキャリア面談にしないために
社員のキャリア面談に取り組み、一人ひとりの強みや希望を知って今後の育成や役割に生かしたい。
そう考える一方で、
「キャリアについて考えた結果、転職したくなるのではないか」
「外部の面談者から、ほかの仕事を勧められないだろうか」
「会社への不満を掘り起こし、退職を促してしまわないか」
と心配になる経営者や人事担当者もいると思います。
特に、採用が難しく、一人の退職が会社全体へ大きく影響する中小企業にとっては不安要素の一つですよね。
しかし、キャリアを考えることと、転職を考えることは同じではありません。
大切なのは、社員が「会社を辞めるかどうか」を考える面談にしないことです。
本人が何を大切にして働きたいのか、どのような強みを持っているのか、その力を現在の会社でどう生かせるのかを一緒に考えることが、企業で行うキャリア面談の役割です。
キャリアコンサルタントによって、面談の目的や得意分野は異なる
そもそもキャリア支援は、転職先を探すことだけではありません。
仕事だけでなく、家庭や生活、本人が大切にしたいことも含めて、これからの生き方や働き方を考える支援です。
そのため、キャリアコンサルタントが活動する分野も幅広く、それぞれ経験や得意分野が異なります。
例えば、
- 転職を希望する人へ求人を紹介する
- 応募書類の作成や面接対策を行う
- 学生の就職活動を支援する
- 社員の能力開発やキャリア形成を支援する
- 企業内の人材育成や役割設計に関わる
- 経営者や管理職の組織づくりを支援する
などがあります。
転職支援を中心にしているキャリアコンサルタントもいれば、Think for Designのように、社員の自己理解を組織づくりや人材育成へつなげることを目的に面談を行うキャリアコンサルタントもいます。
同じ資格を持っていても、これまでどのような人を支援してきたのか、何を目的に面談を行うのかによって、面談の進め方は変わります。
企業が外部キャリア面談を導入するときは、資格の有無だけでなく、次のような点を確認することが大切です。
- これまで、どのような相談者を支援してきたか
- 転職支援と企業内キャリア支援のどちらを多く経験しているか
- 面談を通じて、どのような状態を目指しているか
- 社員の不満や転職への迷いを、どのように扱うか
- 本人の希望と社内の役割をどのようにつなげるか
- 面談後、会社へどのような情報を共有するか
- 社内の1on1や人材育成と、どのように連携するか
「キャリアコンサルタントへ依頼すれば、どの人でも同じ面談をしてくれる」と考えるのではなく、自社が面談を行う目的と、相手の経験や得意分野が合っているかを確認しましょう。
面談では、最初に不満や不安が出ることもある
社員に自由に話してもらうと、最初に会社や仕事への不満が出てくることがあります。
「仕事量が多い」
「上司が話を聞いてくれない」
「評価に納得できない」
「自分だけ負担が大きいと感じる」
「今の仕事を続けてよいのか分からない」
こうした言葉を聞くと、会社としては「面談をしたことで、社員の不満を強めてしまうのではないか」と心配になるかもしれません。
しかし、不満を言葉にすること自体が、すぐに転職へつながるわけではありません。
人は、頭や心の中にたまっているものを話して初めて、自分が何に困っているのかを整理できることがあります。
話していくうちに、
「仕事そのものが嫌なのではなく、相談できない状態がつらかった」
「上司に評価されていないのではなく、何を期待されているのか分からなかった」
「辞めたいと思っていたけれど、本当は今の働き方を変えたかった」
と気づくこともあります。
大切なのは、不満を聞いただけで面談を終わらせないことです。
また、面談者がすぐに「それなら転職した方がよい」と結論を出さないことも重要です。
転職が必要な場合もありますが、不満の背景や本人の考えを十分に整理しないまま転職だけを解決策にすると、本人が本当に求めているものが分からないまま環境を変えることになります。
不満を「自分で扱える課題」に変えていく
社員の不満を、単なる会社への要望として受け取るだけでは、組織改善にも本人の成長にもつながりにくくなります。
面談では、不満や問題を次のように整理していきます。
- 実際に何が起きているのか
- その状況で、何に負担を感じているのか
- 本人が大切にしたいことは何か
- 本人自身が変えられることはあるか
- 上司や会社へ相談したいことは何か
- 会社側の支援や環境の見直しが必要なことは何か
例えば、「上司が何も分かってくれない」という不満があったとします。
その背景を整理すると、
「自分の考えをうまく説明できていない」
「上司へ相談する前に、一人で抱え込んでしまう」
「仕事の目的や優先順位が共有されていない」
「話しかけてもよいタイミングが分からない」
など、複数の要因が見えてくることがあります。
そのうえで、
「まずは自分の状況を整理して伝える」
「仕事を抱え込む前に、優先順位を確認する」
「上司との1on1で、困っていることを具体的に相談する」
「会社側で、相談のタイミングや仕事の任せ方を見直す」
といった行動や支援へつなげます。
本人だけに解決を求めるのでも、会社がすべてを変えるのでもありません。
本人ができることと、会社側で見直すことを分けて考えることが必要です。
転職しても、同じ悩みが繰り返されることがある
職場の環境そのものに問題があり、転職によって状況が改善することもあります。
一方で、自分が負担を感じやすい環境や、困ったときの行動の傾向を理解しないまま転職すると、別の職場でも似た悩みが起こる可能性があります。
例えば、
- 仕事を断れず、どの職場でも抱え込んでしまう
- 分からないことを相談できず、一人で悩み続けてしまう
- 相手の期待を優先し、自分の希望を伝えられない
- 仕事内容だけを見て転職し、職場環境との相性を確認していない
- 自分が何を大切にしたいのか分からないまま、条件だけで仕事を選ぶ
といった場合です。
だからこそ、
自分は何を大切にしたいのか。
どのような環境で力を発揮しやすいのか。
何に負担を感じやすいのか。
困ったときに、どのように相談すればよいのか。
今の会社で試せることは残っているのか。
こうしたことを整理し、自分で問題と向き合う方法を身につけることが、その後のキャリアにも役立ちます。
問題が大きくなる前に、定期的な面談を行う
退職の意思が固まってから行う面談では、会社ができることが限られてしまいます。
本人がすでに転職先を決めている場合は、役割や働き方を見直す提案をしても、気持ちを変えることが難しいかもしれません。
そのため、何か大きな問題が起きたときだけでなく、定期的に話せる場をつくることが大切です。
定期的に面談を行うことで、
- 最近負担が増えていること
- 以前より仕事を進めにくくなった理由
- 強みを生かせていないと感じること
- 今後経験してみたい仕事
- 働き方や生活の変化
- 上司へ相談したいこと
を、問題が大きくなる前に整理できます。
本人も、退職するか我慢するかの二択になる前に、今の職場で試せる方法を考えられます。
Think for Designでは、3つの関わり方を使い分けます
Think for Designの外部キャリア面談では、カウンセリング、コーチング、コンサルティングの考え方や技法を、目的に応じて使い分けています。
カウンセリングの要素
本人が抱えている不安や迷い、不満を、すぐに否定したり解決したりせずに受け止めます。
まずは安心して話し、自分の状態や感情を整理できる時間をつくります。
不満に同意することや、会社を批判することが目的ではありません。本人が「自分は何に困っているのか」を理解するための対話です。
コーチングの要素
本人が自分で答えや次の行動を見つけられるように、質問を通して考えを整理します。
- 自分で変えられることは何か
- 本当はどうしたいのか
- 上司へ何を相談したいのか
- まず試せる小さな行動は何か
を一緒に考えます。
面談者が答えを決めるのではなく、本人が自分で選び、自ら行動できる状態を目指します。
コンサルティングの要素
本人の努力だけでは解決できない問題については、会社側の環境や仕組みも確認します。
例えば、
- 役割や責任の範囲が曖昧になっていないか
- 一部の社員に業務が集中していないか
- 上司へ相談できる機会があるか
- 評価や育成の基準が伝わっているか
- 本人の強みを生かせる役割があるか
といった点です。
個人の面談内容をそのまま会社へ伝えるのではなく、本人が共有に同意した内容や、複数の面談から見える共通傾向をもとに、組織として見直せることを提案します。
この3つの関わり方を使い分けることで、話を聞くだけでも、本人へ解決を任せるだけでも、会社へ一方的に改善を求めるだけでもない支援を行います。
Think for Designでは、社員の自己理解を、現在の仕事、社内での役割、上司との対話、会社の組織改善へつなげる面談を行っています。
社員が退職を決めてからではなく、まだ一緒に考えられる段階で、話せる場をつくってみませんか。