持ち味は、本人が知らないと動かせない

自己理解

人には誰にでも価値がある。価値のない人はいない。誰にでもポテンシャルがある。ポテンシャルのない人はいない。以前とても印象に残って、ずっと残っている言葉です。僕も、本当にそう思っています。

ただ、その良さが発揮されるかどうかは、環境でずいぶん変わります。ここも同じくらい強く感じているところです。

たとえば、パソコンが得意な人がいるとします。その人がデジタル化を求めていない職場に入ると、得意なことを使う場面がほとんどありません。同じ人でも、その力を必要としている部署にいれば、仕事の見え方が変わります。

配置を動かす前に起きていること

この話は、配置を見直せばいい、というところで終わりがちです。ところが、配置を動かしても変わらないことがあります。本人が、自分の持ち味を知らないままのときです。

自分の良さが分からないと、何を仕事にすればいいのか、誰と組めばいいのか、どの部署に手を挙げればいいのかも決められません。異動先で言われたことを、また一から覚え直すだけになります。

自分はここでなら力を出せそうだ、という感覚のある人は、自分で持ち場を選びにいきます。人が育つ組織かどうかは、この判断を本人ができるかどうかに出ると思っています。

持ち味ほど本人からは見えない

やっかいなのは、持ち味ほど本人から見えないところです。

長く続けていることは、当たり前になります。得意なことほど、これくらい誰でもやっているだろう、と思ってしまう。だから面談で「あなたの強みは何ですか」と聞いても、答えは返ってきません。謙遜ではなく、本人の位置からは見えていないからです。

周りと比べ始めると、さらに分からなくなります。同期のほうが数字を出している。前任者のほうが早かった。そう考えているうちに、手元にあるものが小さく見えてきます。

面談で見えた場面をそのまま渡す

本人から見えないのなら、言えるのは周りにいる人になります。面談でやることは、点数をつけることより、見えている場面をそのまま言葉にして渡すことだと考えています。

ここからは作例です。社員二十五名の運送会社に、配車を担当している人がいるとします。この人は毎朝、前日のドライバーの様子を短くメモに残しています。誰も指示していません。本人に聞くと、癖です、と答えます。

面談で、上司がこう伝えたとします。「去年から、体調の相談が事故になる前に上がってくるようになった。あのメモを見て声をかけているからだと思う」。

ここで初めて、本人のメモと、会社で起きている結果がつながります。数か月後、この人が新人の受け入れ役に手を挙げたとします。手を挙げられたのは、自分の持ち味がどこで働くかを知ったからだと思います。

組織の側でできること

広報や人事の担当者が始められるのは、この二つだと思っています。

  1. 見えている場面を、本人に返す。評価の言葉ではなく、実際に起きた出来事と、その人がしていた行動をそのまま伝える。いつ、どこで、何をしていたかまで入れます。
  2. その持ち味が、社内のどこで働いているかを一緒に探す。四半期に一度、その持ち味がいまどの仕事で使われているかを、ひとつ書き出す。書けない期が続くなら、仕事の割り振りのほうを見ます。

持ち味が分かると、その人は、この仕事なら自分は力を出せる、と見当がつくようになります。選択肢が増えるというのは、いまいる場所の中で自分から手を挙げられる仕事が増えることでもあります。

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