「私は何に向いていますか」と聞かれたとき、どう答えるか
コーチングの中で、
「私は、何が向いていると思いますか?」
と聞かれることがあります。
これまでの仕事について話を伺うと、さまざまな経験を積み、周囲からも頼られている。それでも本人は、「これといって得意なことがない」「自分に向いている仕事が分からない」と感じています。
自分がやりたいことや向いていることを、最初から言葉にできる人ばかりではありません。
特に、会社から任された仕事に真面目に取り組んできた人ほど、自分の希望よりも、「求められたことをきちんとやること」を優先しています。
そのため、改めて「何がしたいですか」と聞かれても、自分の気持ちが分からないのです。
これは、意欲がないわけでも、何も考えていないわけでもありません。
自分の仕事を振り返り、「どのようなときに力を発揮してきたのか」を知る機会がなかっただけかもしれません。
本人の希望だけでは、役割を決められないこともある
会社が社員のキャリアを考えるとき、
「今後、どのような仕事をしたいですか」と聞いても、「分かりません」と返ってくることがあります。
そこで希望がないと判断し、これまでと同じ仕事を任せ続けると、本人も自分の可能性に気づかないままになりますよね。
反対に、本人が挙げた職種だけで役割を決めることにも注意が必要です。
「人と話すのが好きだから営業をやってみたい」「パソコン作業が苦にならないから事務が向いていると思う」と話していても、その仕事のどの部分に関心があるのかは、まだ分かりません。
営業の中にも、新しいお客様へ積極的に働きかける仕事もあれば、既存のお客様の話を聞き、長く関係を築く仕事もあります。
事務の中にも、正確に処理する仕事、情報を整理して周囲を支える仕事、非効率な業務を見つけて改善する仕事があります。
職種名だけで考えると、その人が実際にどのような場面で力を発揮するのかが見えにくくなります。
「何の仕事が向いているか」より「どのように働いてきたか」を見る
役割を考えるときに見たいのは、職種名よりも、その人が仕事の中で取ってきた行動です。
例えば、「新人への説明を任されることが多かった」という社員がいたとします。
本人にとっては、上司から頼まれたから行っていただけで、特別なことではないかもしれません。
けれど、詳しく話を聞いてみると、相手がどこでつまずいているかを確認しながら説明の順番を変えていたり、言葉だけでは分かりにくい部分を図や資料にまとめたりしていたことがあります。
この場合、強みは単に「人に教えられること」ではありません。
相手の理解度を見ながら、伝え方を変えられること。分かりにくい情報を整理し、相手が動ける形にできることです。
この行動は、新人育成だけでなく、お客様への説明、マニュアル作成、チーム内の情報共有、プロジェクトの進行など、別の役割でも生かせます。
一つの経験を掘り下げていくことで、職種に限定されない、その人らしい力が見えてきます。
強みは、本人にとって「普通すぎて見えない」
強みというと、大きな成果や、人より優れた能力を探そうとする人がいます。
「売上1位になったことはありません」
「何か特別な資格を持っているわけではありません」
「リーダーをした経験もありません」
そう話し、自分には強みがないと考えてしまいます。
けれど、強みは必ずしも目立つ成果として表れるものではありません。
会議で話がまとまらないときに、自然と論点を整理している。
忙しそうな人に気づき、声をかけている。
仕事を始める前に、必要な手順や期限を確認している。
相手に合わせて、言葉の選び方を変えている。
トラブルが起きても感情的にならず、状況を確認している。
こうした行動は、本人にとって当たり前であるほど、自分では価値に気づきにくいものです。
周囲からすれば助かっていたことも、本人は「誰でもやっている」と思っている場合があります。
だからこそ、自己分析を一人で行うだけではなく、対話の中で「なぜその行動を取ったのか」「周囲にどのような変化が起きたのか」を振り返ることに意味があります。
うまくいかなかった仕事からも、適性は見えてくる
成果を出せた仕事だけではなく、苦しかった仕事や続かなかった仕事にも、役割を考えるヒントがあります。
例えば、個人の成績を競う環境では力を発揮できなかった人が、チームで協力する仕事では積極的に動けることがあります。
その人は、競争心が足りないのではなく、周囲と共通の目標を持つことで力が出るのかもしれません。
急な変更が続く仕事でミスが増えていた人も、能力が低いとは限りません。事前に計画を立て、確認しながら進められる環境であれば、高い正確性を発揮する可能性があります。
お客様との会話に苦手意識があった人も、会話そのものが苦手なのではなく、短時間で契約へつなげることに負担を感じていたのかもしれません。時間をかけて相手の話を聞き、信頼関係を築く仕事なら、むしろ強みを生かせる場合があります。
苦手だった経験を、「自分には能力がない」で終わらせないことが大切です。
どのような状況でうまくいかなかったのか。何が負担だったのか。反対に、どのような条件があれば取り組みやすかったのか。
環境との組み合わせまで見ることで、その人が力を発揮しやすい役割が具体的になります。
得意なことと、やりたいことは同じとは限らない
社員の役割を考えるうえで、もう一つ気をつけたいことがあります。
得意だからといって、本人がその仕事を続けたいとは限りません。
人の相談に乗ることが得意な社員へ、周囲からの相談が集中している。資料作成が得意な社員が、いつも裏方の仕事を任されている。
本人はうまくできるため、会社からも頼られます。
しかし、得意なことばかりを任せ続けると、新しい経験を積む機会がなくなることがあります。場合によっては、本人が「便利に使われている」と感じてしまいます。
役割を決めるときには、できるかどうかだけではなく、
「本人は今後も、その力を使っていきたいと思っているか」
「その仕事をしているときに、やりがいや充実感を得られているか」
「今後、どのようなことへ挑戦してみたいか」
も確認する必要があります。
会社から見た適性と、本人が望むキャリア。その両方をすり合わせることで、納得できる役割に近づきます。
価値観、才能、関心の三つから考える
Think for Designのコーチングでは、向いている仕事や役割を考えるときに、価値観、才能、関心の三つを整理します。
価値観は、その人が働くうえで大切にしたいことです。
人との信頼関係を大切にしたいのか。新しいことに挑戦したいのか。安心して長く働けることを重視するのか。同じ仕事内容でも、価値観が満たされる環境かどうかで、働きやすさは変わります。
才能は、その人が自然と取っている行動です。
相手に合わせて説明する。物事を計画的に進める。周囲の意見を整理する。問題が起きる前に違和感へ気づく。このような行動を、実際の役割へつなげます。
関心は、もっと知りたい、学びたいと思える分野です。
得意なことを生かせても、扱う商品やサービス、業界にまったく関心を持てなければ、学び続けることが苦しくなります。
三つがすべて完全にそろう仕事を、すぐに見つけられるとは限りません。
それでも、どの部分が満たされ、どこに負担を感じているのかが分かれば、現在の役割を調整するヒントになります。
「何が向いているか」の答えを、一緒に見つける
Think for Designでは、人生分析やキャリアの棚卸しを通して、社員一人ひとりの価値観、才能、関心を整理します。
そこで見つかった特徴を性格診断の結果で終わらせず、現在の仕事でどのように生かせるか、どのような役割を小さく試せるかまで一緒に考えます。
社員に希望を聞いても「分からない」と言われてしまう。配置や育成を、これまでの経験や上司の感覚だけで決めている。
そのような企業様は、一人ひとりの力を役割へつなげる方法を、一緒に考えてみませんか。