「言われたことしかやらない」社員に、足りないものは何?
社員へ仕事を任せたものの、指示したことだけを行っていて、自分で考えて先に進もうとしているように見えない。
そのような姿を見ると、
「もう少し自分で考えてほしい」
「言われたことしかやってない」
「主体性が足りないのではないか」
と感じることがありますよね。
忙しい経営者や管理職にとって、毎回細かく指示を出すのは大きな負担です。
ただ、社員が動かない理由は、本当に主体性がないからなのでしょうか。
仕事には「自分で決めること」と「確認すること」がある
仕事を任せるときは、判断する範囲を次のように分けてみます。
自分で決めてよいこと
- 作業する順番
- 資料の構成や見せ方
- 決められた予算内での備品購入
- お客様へ連絡する時間
- 通常の範囲内での対応方法
相談してから決めること
- 納期や金額の変更
- 通常とは異なるお客様対応
- 他部署の仕事へ影響が出る変更
- 新しい方法やツールの導入
- 判断によって会社の信用に影響すること
本人だけでは決められないこと
- 契約内容の変更
- 法律や安全に関わること
- 個人情報の取り扱い
- 大きな支出を伴うこと
- 経営判断が必要なこと
このように分けると、社員は「ここまでは自分で進めてよい」「ここからは相談が必要」と判断しやすくなります。
すべてを自由に任せることが、主体性を育てるわけではありません。
安心して考えられる範囲があるからこそ、社員は自分で決めて動けます。
過去の事例が、判断の軸になる
判断できる範囲を伝えるだけでなく、これまで会社で起きた事例も共有すると、さらに理解しやすくなります。
例えば、お客様から納期を早めてほしいと依頼された場合です。
「納期を変更するときは確認してください」
というルールだけでは、社員は毎回上司へ聞くことになります。
そこで、
「以前、同じような依頼があったときは、通常業務に影響が出なかったため、二日前倒しで対応した」
「別の事例では、ほかのお客様の納期に影響するため、担当者だけでは判断せず、上司へ相談した」
「納期を動かす場合は、ほかの案件への影響を確認する」
と伝えます。
すると社員は、単に過去の対応を覚えるだけでなく、
「ほかのお客様や社員へ影響が出るかどうかが、相談する基準になる」
と理解できます。
経営者やベテラン社員は、これまでの経験から自然に判断しています。
しかし、その経験を持たない社員には、同じ判断をするための材料がありません。
「こんな場合は、こう対応した」
「このときは、なぜ上司へ相談したのか」
「過去に、何を優先して決めたのか」
と事例を共有することで、頭の中にある判断基準を渡せます。
手順ではなく、ゴールを共有する
社員が言われたことしかできないとき、作業手順は伝わっていても、仕事のゴールが伝わっていない場合があります。
例えば、お客様向けの案内文を作る仕事なら、
「この内容を文章にしてください」
と依頼するだけでなく、
「初めて利用するお客様が、迷わず申し込める状態にしたい」
というゴールを伝えます。
ゴールが分かれば、社員は、
「専門用語を減らした方がよい」
「申込方法を最初に書いた方がよい」
「よくある質問も掲載した方がよい」
と、自分で考えられるようになります。
反対に、言われた文章をそのまま作ることだけが目的になっていると、分かりにくい部分があっても直してよいか判断できません。
「このゴールにたどり着けば、方法は一つでなくてよい」
と伝えられると、社員は自分の強みや経験を使って仕事を進められます。
ただし、どのルートでもよいということは、何をしてもよいという意味ではありません。
- 法律や社内ルールを守る
- 予算を超えない
- お客様との約束を変えない
- 他部署に影響する場合は相談する
- この段階で一度確認する
といった、守るべき範囲も一緒に伝えます。
ゴールと境界線の両方があることで、社員は安心して方法を考えられます。
答えを教える前に、判断の理由を聞いてみる
社員から相談されたとき、すぐに答えを伝えれば仕事は早く進みます。
ただ、次回は本人に判断してほしい仕事であれば、
「今回は、どのように進めようと思っていますか」
「そう考えた理由は何ですか」
「ほかの方法はありそうですか」
「誰かに影響が出る可能性はありますか」
「これまでの事例で参考になりそうなものはありますか」
と聞いてみます。
本人が考えた内容を確認したうえで、
「その範囲なら自分で決めて大丈夫です」
「金額が変わる場合だけは、先に相談してください」
と返します。
このやり取りを重ねることで、本人の中に判断の軸が増えていきます。
最初から正しい判断ができることを求めるのではなく、どのように考えたのかを一緒に確認することが大切です。
主体性の前に、判断できる材料を渡す
「言われたことしかやらない社員」を見ると、本人の性格や意欲に原因を求めたくなることがあります。
しかし、社員が自分で動くためには、
- 仕事のゴール
- 自分で決めてよい範囲
- 上司へ相談する基準
- 必ず守るルール
- 過去の事例と判断理由
- 振り返る機会
が必要です。
Think for Designでは、経営者や管理職の中にある判断基準を整理し、社員へ伝わる言葉へ変えるワークショップやコーチングを行っています。
社員との対話では、本人がどこまで理解しているのか、何を不安に感じているのか、どのような考え方や強みを仕事に生かせるのかを整理します。
社員へ「もっと主体的に動いてほしい」と求める前に、判断するための地図を渡せているかを確認する。
目指すゴールと、越えてはいけない境界線が分かれば、その間のルートは社員自身に考えてもらえます。
その小さな判断の積み重ねが、「言われたことをする社員」から、「目的に向かって自分で考えられる社員」へ成長するきっかけになるのだと思います。