社員の強みが分かっても、任せられる仕事がない
社員との面談で、本人の強みや今後やってみたいことが見えてきた。
けれど、会社の中には、それを生かせそうな部署や仕事がない。
そのようなこと感じることもありますよね。
例えば、社員から、
「文章を書くことが好きなので、ライティングの仕事が向いていると思います」
と言われたとします。
しかし、会社ではメルマガやブログを運営していない。新しくライターという役割をつくるほど、文章を書く仕事もない。
すると、
「せっかく強みが分かっても、本人の希望に応えるのは難しい」
と感じるかもしれません。
ただ、その社員が本当に求めているのは、「ライティング業務」という仕事なのでしょうか。
本人が使った仕事の名前だけで判断せず、なぜライティングが向いていると思ったのかをもう少し聞いてみると、別の可能性が見えてくることがあります。
同じ「ライティングが好き」でも、理由は異なる
ライティングのどこに楽しさや、やりがいを感じているのかは、人によって違います。
例えば、言語化しにくい感覚に合う言葉を探し、「これだ」と思える表現を見つけることに心地よさを感じているのかもしれません。
この場合に生かされているのは、単に文章を書く力ではなく、曖昧な考えを整理し、相手に伝わる言葉へ変える力です。
この力はブログだけでなく、
- お客様へ説明する資料を分かりやすくする
- 社内マニュアルの表現を見直す
- 会議で出た意見を整理する
- 求人票の仕事内容を具体的にする
- 商品やサービスの特徴を短い言葉にまとめる
といった仕事にも生かせます。
また、人や商品のよいところを見つけ、それを誰かに伝えることが好きなのかもしれません。
その場合は、社員紹介の文章だけでなく、お客様へのインタビュー、採用活動、営業資料、SNSの企画などにも力を発揮できる可能性があります。
「魅力を伝えること」にやりがいを感じているなら、文章だけでなく、写真の選び方や資料の構成、デザインにも関心が広がるかもしれません。
反対に、ライティングそのものより、「将来は在宅で働きたい」という希望から、文章を書く仕事に関心を持った可能性もあります。
その場合に考えたいのは、ライティング業務を用意することだけではありません。
仕事の一部を在宅でできるようにする方法や、オンラインでも担当できる役割を会社として整えておくことが、本人の本当の希望に近いこともあります。
同じ「ライティングがしたい」という言葉でも、その奥にある思いはそれぞれ違います。
仕事の名前ではなく、好きな行動を見つける
本人が希望する仕事を社内に用意できないときは、仕事の名前をそのまま受け取るのではなく、その仕事に含まれる行動を分けて考えてみます。
例えばライティングの場合、次のような質問が使えます。
- ライティングのどのような作業が好きですか
- 書いている途中と、完成したあとでは、どちらに楽しさを感じますか
- どのような文章を書いたときに、うまくできたと感じますか
- 読んだ人に、どのような変化があるとうれしいですか
- 文章を書く仕事に関心を持ったきっかけは何ですか
- ライティングを通して、どのような働き方を実現したいですか
- 文章を書く以外に、同じような楽しさを感じた経験はありますか
こうした質問を重ねることで、
「情報を集めて整理することが好き」
「相手の話を聞き、その人らしい言葉を見つけることが好き」
「複雑な内容を分かりやすく説明することが得意」
「人や商品のよいところを見つけたい」
「一人で集中して取り組める時間がほしい」
など、仕事名だけでは見えなかったことが分かってきます。
ここまで整理できれば、「ライターという仕事がないから任せられない」で終わらず、現在の仕事の中に接点を探せるようになります。
特別な部署や役職をつくらなくてもいい
社員の強みを生かすために、すぐに新しい部署をつくったり、正式な担当者に任命したりする必要はありません。
今ある仕事の一部を、小さく任せるところから始められます。
例えば、
- 分かりにくかった案内文を一つ書き直してもらう
- お客様からよく聞かれる質問をまとめてもらう
- 社員へインタビューし、社内で共有する文章をつくってもらう
- 会議の内容を、次の行動が分かるように整理してもらう
- 求人票の仕事内容を、現場の人に伝わる言葉へ直してもらう
- 商品の魅力が伝わる見出しを考えてもらう
といった形です。
実際に取り組んでみると、本人がどの部分に楽しさを感じるのか、会社にとってどのような成果につながるのかが見えてきます。
思っていたほど合わないことが分かる場合もあります。
それも失敗ではありません。
本人が自分の強みを理解し、会社も任せ方を考えるために必要な経験です。
一度試して振り返り、得意だったこと、難しかったこと、もう少し続けたいことを確認しながら、次の役割を考えていきます。
本人も、自分の強みに気づいていないことがある
社員が「ライティングが向いている」と話していても、その理由を本人が十分に説明できるとは限りません。
経験したことのある仕事や、世の中で知られている職種の中から、自分に近そうな名前を選んでいることもあります。
その言葉を間違いだと否定する必要はありません。
まずは本人がそう考えた理由を聞き、どのような経験や感情からその言葉が出てきたのかを一緒に整理します。
そこから、本当に生かしたい強みや、本人が望んでいる働き方が見えてきます。
ただし、社員の希望をすべて会社がかなえるということでもありません。
本人が取り組んでみたいことと、会社に必要な仕事を並べ、重なる部分を探すことが大切です。
仕事の名前ではなく、その奥にある強みや関心まで分かれば、今ある仕事の中にも、小さな接点を見つけやすくなります。
強みを、会社で生かせる言葉へ変える
Think for Designでは、社員の強みを診断結果や職種名だけでは決めません。
これまでの経験を振り返り、
- どのような行動を自然に繰り返してきたのか
- 何をしているときに心地よさを感じるのか
- どのような成果にやりがいを感じるのか
- どのような環境で力を発揮しやすいのか
- 今後どのような働き方を望んでいるのか
を整理します。
そのうえで、本人の強みと会社にある仕事の接点を探し、現在の業務の中で試せる役割を考えます。
個別に整理することが難しい場合は、社員同士で経験を振り返り、自分とチームの強みを見つける単発のワークショップも行っています。
「強みは分かったけれど、任せられる仕事がない」と感じたときこそ、本人が口にした仕事の名前から、もう一歩だけ奥へ進んでみると、まだ言葉になっていない強みの中に、今の会社でも生かせる役割が隠れているかもしれません。