今どきの社員は、褒めても動かない
社員のやる気を引き出そうと、
「よく頑張っているね!」
「いつも助かっているよ!」
「今回もよかったよ!」
と声をかけている。
それなのに、「ありがとうございます」と言いつつ、自信がついたようにも見えず、新しい仕事へ挑戦しようともしない。
そのような様子を見て、
「今の若い社員は、褒めても動かない」
「何を言えばやる気になるのか分からない」
と感じることはないでしょうか。
もちろん、頑張っていることを認め、感謝を伝えることは大切です。
ただ、今の社員が必要としているのは、単に気分がよくなる言葉ではないのかもしれません。
本人が知りたいのは、
「自分のどこが評価されたのか」
「自分の仕事は何の役に立ったのか」
「次は何を期待されているのか」
という、仕事を続けていくための具体的な情報です。
昔は、上司の評価が大きな意味を持っていた
以前は、今ほど多くの働き方やキャリアに触れる機会がありませんでした。
同じ会社で経験を積み、周囲の先輩を見ながら、
「このくらいできれば一人前」
「次はこの仕事を任される」
「上司から認められたら成長している」
と、自分なりに仕事の基準をつくっていた人も多いと思います。
自分で課題を見つけ、試行錯誤しながら仕事を覚える。
そのうえで、上司から褒められたり、新しい仕事を任されたりすることが、外部からの分かりやすい評価になっていました。
上司の言葉や社内での役割が、自分の成長を確認する大きな手がかりだったのです。
しかし今は、会社の外にあるさまざまな情報へ、日常的に触れられるようになりました。
今は、自分の仕事を外側から見る機会が増えている
SNSや動画、転職サイト、キャリアに関する発信を通して、ほかの会社の働き方や評価の仕組み、同年代の活躍を知ることができます。
自分と近い年齢の人がどのような仕事をしているのか。
どのようなスキルを身につけているのか。
ほかの会社では、どのような働き方が認められているのか。
日常的に多くの情報へ触れることで、今の社員は上司の評価だけではなく、複数の視点から自分の仕事を見るようになっています。
SNSの「いいね」やコメント、閲覧数など、行動への反応が目に見える環境にも慣れています。
そのため、上司から「頑張っているね」と言われても、自分の中にある評価と一致しなければ、
「何を見てそう思ったのだろう」
「とりあえず褒めているだけではないか」
「自分では、うまくできたと思っていない」
と感じることがあります。
これは、褒められることを素直に受け取れないという話ではありません。
自分でも納得できる根拠がなければ、その言葉を次の行動へ結びつけにくいのです。
「頑張ったね」だけでは、再現できない
例えば、社員が初めてお客様向けの資料を作成したとします。
それを見て、
「いい資料だったよ。頑張ったね」
と伝えれば、本人はうれしいかもしれません。
しかし、何がよかったのかまでは分かりません。
デザインがよかったのか。
情報の選び方がよかったのか。
文章が分かりやすかったのか。
納期を守ったことが評価されたのか。
お客様の反応がよかったのか。
理由が分からなければ、次の仕事で何を繰り返せばよいのかも分かりません。
そこで、次のように伝えます。
今回の資料は、最初にお客様の課題を示してから、解決策を説明していたので、内容を理解しやすかったです。特に、専門用語をお客様にも分かる言葉へ直していたところがよかったと思います。次は、この構成をほかの提案資料にも生かしてほしいです。
ここまで伝えられると、本人は、
「自分は、情報を整理して分かりやすく伝えるところを評価された」
「次も同じ考え方を使えばよい」
と理解できます。
褒められた経験が、その場だけの喜びではなく、本人の強みや次の行動へつながります。
結果だけでなく、途中の行動を見る
売上や契約件数など、結果が数字で表れる仕事は評価しやすいものです。
しかし、結果だけを見て褒めていると、本人がどのような工夫をしたのかを見落としてしまいます。
例えば、契約につながらなかった営業でも、
- 事前にお客様の情報を詳しく調べていた
- 相手の話を遮らず、必要なことを聞けていた
- 面談後、すぐに内容を整理して共有していた
- 断られた理由を分析し、次の提案を考えていた
という行動があったかもしれません。
結果が出なかったからといって、すべてができていなかったわけではありません。
反対に、結果は出ていても、ほかの社員の負担や偶然によって達成できた可能性もあります。
何が成果につながったのか。
どの行動を続けてほしいのか。
どこを変えれば、さらによくなるのか。
途中の行動まで確認することで、社員は自分の強みと課題を具体的に理解できます。
褒めるより、本人の自己評価を聞いてみる
上司が先に評価を伝える前に、本人へ聞いてみる方法もあります。
- 今回、自分ではどの部分がうまくできたと思いますか
- 以前よりできるようになったことはありますか
- 反対に、難しかったところはどこですか
- 次に同じ仕事をするとしたら、何を変えたいですか
- もう少し支援があれば、進めやすかったことはありますか
本人の自己評価を聞くと、上司から見えている姿との違いが分かります。
上司は「十分できている」と思っていても、本人は大きな不安を感じているかもしれません。
本人はうまくできたと思っていても、上司が期待していた基準には届いていないこともあります。
その違いを確認せず、ただ褒めるだけでは、お互いの認識はそろいません。
大切なのは、上司の評価を正解として伝えることではなく、本人の見方と上司の見方を並べ、次に何をするかを一緒に考えることです。
「できていたこと」と「次への期待」をセットで伝える
2025年度の新入社員を対象とした調査では、成長に必要な支援として「仕事後のフィードバック」を挙げた人が半数を超えています。また、理想の上司として「よいところを褒めながら、丁寧に指導する上司」が求められているという調査もあります。all-different.co.jp
求められているのは、何でも肯定してもらうことではありません。
「ここはできていた」
「この行動が周囲へよい影響を与えた」
「次はここまで任せたい」
と、現在地と次の一歩が分かる言葉です。
例えば、
お客様の質問を最後まで聞いてから答えていたので、相手も安心して話せていました。次は、聞いた内容を整理して、こちらから一つ提案するところまで挑戦してみてほしいです。
この伝え方には、
- 評価している具体的な行動
- その行動によって生まれたよい変化
- 次に期待していること
が含まれています。
本人は、単に「褒められた」と感じるだけでなく、自分の現在地と次に目指す方向を理解できます。
褒めても動かないのではなく、次が見えていないのかもしれない
社員を褒めても、すぐに行動が変わらないことはあります。
しかし、それは本人にやる気がないからとは限りません。
何を評価されたのか。
その力をどこで生かせるのか。
次に何を期待されているのか。
そこまで伝わっていないだけかもしれません。
Think for Designでは、社員へのコーチングやワークショップを通して、本人ができていることや強み、現在感じている課題、今後取り組みたいことを整理します。
経営者や管理職とは、社員へ何を期待しているのか、その期待をどのような行動として伝えるのかを考えます。
社員を動かすために上手に褒めるのではなく、本人が自分の成長を理解し、次の一歩を選べる言葉をつくる。
今どきの社員に必要なのは、たくさんの称賛よりも、自分の現在地とこれからが分かる、具体的なフィードバックなのだと思います。