「アットホームな会社です」と書くと、ブラック企業だと思われる?
求人票や採用ページで、会社の雰囲気を伝えるために、
「アットホームな会社です」
「社員同士の距離が近い職場です」
と書くことがあります。
実際に、社員同士の仲がよく、困っている人がいれば自然と助け合う会社もあると思います。
経営者としては、堅苦しくなく、安心して働ける会社だと伝えたい場合に使いやすい言葉ですよね。
しかし、今の求職者の中には「アットホームな会社」という言葉を見て、かえって応募をためらう人もいます。
20〜30代の求職者を対象とした調査では、採用サイトでネガティブな印象を抱く言葉として「アットホームな職場です」が上位に挙げられました。「ブラック企業のイメージがある」と受け取る人もいたと報告されています。オフィスのミカタ
本当は働きやすい会社なのに、よかれと思って使った言葉によって警戒されてしまう。
それは、少しもったいないことですよね。
なぜ「アットホーム」が警戒されるのか
「アットホーム」という言葉そのものが悪いわけではありませんが、その言葉だけでは実際の職場の様子が分かりにくいかもしれません。
例えば、会社側は、
- 社員同士で助け合っている
- 経営者にも相談しやすい
- 新しく入った人を放っておかない
- 部署を越えて協力できる
という意味で使っているかもしれません。
しかし求職者は、
- 仕事とプライベートの境界が曖昧なのではないか
- 飲み会や休日の行事への参加を求められないか
- 人間関係が近すぎるのではないか
- 制度ではなく、社員の善意で仕事が回っていないか
- 仕事内容や労働条件以外にアピールできるものがないのではないか
と想像することがあります。
もちろん、実際にそのような会社だと決めつけているわけではありません。
ただ、具体的な情報が少ないほど、求職者は自分の経験や、インターネット上で見た情報をもとに空白を埋めます。
会社が伝えたかった「温かい職場」と、求職者が受け取った「距離が近すぎる職場」が、まったく違うこともあるのです。
今の求職者は、言葉の裏側まで確認している
以前であれば、「アットホーム」「風通しがよい」「若手が活躍」といった言葉だけでも、会社の魅力として受け取ってもらえたかもしれません。
しかし、今は求人票だけで応募を決めるとは限りません。
会社のホームページやSNS、社員紹介、口コミなども見ながら、
「実際にはどのような人が働いているのか」
「入社後、どのように仕事を教えてもらえるのか」
「困ったときは、誰に相談できるのか」
「自分にもなじめそうな職場なのか」
を確認しています。
厚生労働省も、採用時に業務内容や職場環境、働き方に関する情報を開示することは、入社前後のミスマッチを防ぎ、定着につながるとしています。mhlw.go.jp
今の採用では、魅力的に見える言葉を選ぶだけではなく、その言葉を信じられる具体的な情報が必要なのです。
「アットホーム」を禁止する必要はない
それでは、求人で「アットホーム」という言葉を使ってはいけないのかというと、必ずしも使ってはいけないとは思いません。
本当にその会社らしさを表す言葉であれば残しつつ、「何をもってアットホームと言っているのか」を具体的に伝える必要があります。
例えば、
社員数は12名。仕事で困ったときは、担当に関係なく声をかけ合っています。入社後は先輩社員が一人つき、最初の3か月は毎週、仕事の進め方を確認する時間を設けています。
このように書けば、単に仲がよいというだけではなく、新しく入った人への支援方法が分かります。
また、
子どもの行事や急な体調不良による休みは、分かった段階で上司へ連絡します。休む人が申し訳なさを感じなくて済むよう、担当業務をチームで共有しています。
と書けば、家庭と仕事を両立したい人が、実際の働き方を想像できます。
社内交流について伝える場合も、
年に数回、希望者で食事会を行っています。参加は自由で、業務時間外の交流を評価へ影響させることはありません。
と説明すれば、「参加しなければ職場になじめないのでは」という不安を減らせます。
大切なのは、よい印象を与える言葉を探すことではありません。
求職者が入社後の生活や人間関係を現実的に想像できる情報へ変えることです。
今の世代に伝わる採用表現へ変えていく
「最近の若い人には、昔の表現が通用しない」
そう感じる経営者もいるかもしれません。
しかし、今の求職者が会社を疑っているというより、入社後のミスマッチを避けるために、具体的な情報を必要としているのだと思います。
だからこそ、言葉を今の世代に合わせて飾るのではなく、会社の中にある事実を丁寧に見つけることが大切です。
Think for Designでは、経営者や社員への面談、ワークショップを通して、
- 社員が働きやすいと感じている理由
- 職場で自然に行われている助け合い
- 新しい社員を受け入れるときの関わり方
- 会社が働く人へ約束できること
- 求職者へ事前に伝えておきたい現実
を整理します。
そのうえで、求人票や採用ページ、社員紹介、SNSなどで、求職者が自分の働く姿を想像できる言葉へ変えていきます。
「アットホームな会社です」と書く前に、なぜそう思うのか。
その理由を社員と一緒に振り返ってみると、ほかの会社にはない、具体的な魅力が見つかるかもしれません。