職場にも「保健室」があったら。安心できる居場所から、人が育つ組織へ
学校の保健室と聞いて、どんな場所を思い浮かべますか?
体調が悪くなったときに休む場所。怪我をしたときに手当てをしてもらう場所。少しだけ教室を離れて、気持ちを落ち着かせる場所。
私にとって保健室は、困ったときに「ここに来れば大丈夫」と思える、安心できる場所でした。
私は昔から、緊張するとお腹が痛くなりやすい子どもでした。
そんなとき、保健室に行くと不思議とホッとできたことを覚えています。
また、膝の靱帯を怪我することも多く、何度も処置をしてもらいました。保健室の先生は、怪我の手当てだけでなく、その後の様子もいつも気にかけてくれていました。
「膝はもう大丈夫?」
そんな何気ない一言が、嬉しかったことを覚えています。
保健室は、ただ体の不調を治すだけの場所ではなかったのだと思います。
自分のことを気にかけてくれる人がいる。困ったときに頼れる場所がある。
その安心感が、私にとって大きな支えになっていました。
保健室を必要とする理由は、一人ひとり違う
保健室には、さまざまな人が訪れます。
体調が悪くなった子。クラスメイトとの関係に悩んでいる子。教室に入ることが難しくなってしまった子。元気いっぱいに遊んで怪我をした子。
もしかしたら、先生たちにとっても、少し気持ちを落ち着かせられる場所だったのかもしれません。
保健室に来る理由も、抱えている事情も、それぞれ違います。
それでも、誰かと比べられたり、正しい答えを求められたりすることなく、まずはその人の状態を受け止めてもらえる。
そして、少し元気になったら、また自分の場所へ戻っていく。
私が思い描く保健室は、そんな場所です。
大人になった私たちは、どこに相談すればいいのだろう
社会人になってから、私はずっと考えていました。
職場にも、保健室のような場所があったらいいのに。
もちろん、職場にも相談できる上司や同僚はいます。
人事担当者が相談に乗ってくれる会社もあるでしょう。
でも、働く中で抱える悩みは、必ずしも仕事のことだけとは限りません。
「今の仕事が自分に合っているのかわからない」
「もっとやりたいことがあるのに、なかなかうまくいかない」
「周囲の期待に応えたいのに、思うように動けない」
「何がつらいのか、自分でもうまく説明できない」
仕事の悩みを紐解いていくと、これまでの経験や大切にしている価値観、家庭での役割、将来への不安など、人生のさまざまなことにつながっている場合があります。
だからこそ、目の前の業務について相談するだけでは、整理しきれないこともあるのではないでしょうか。
誰かに相談するほど大きな問題ではない。
でも、毎日どこかに引っかかるものがある。
そんな小さな違和感を抱えながら働いている人も、きっと少なくないと思います。
「もっと主体的に」と言われても、人は簡単には変われない
企業の人材育成について考えるとき、よく耳にする言葉があります。
「もっと主体性を持ってほしい」
「責任感を持って仕事に取り組んでほしい」
「自分で考えて行動できる社員になってほしい」
経営者や管理職にとって、社員に期待する自然な思いだと思います。
けれど、主体性や責任感は、言われたからといって簡単に持てるものではありません。
例えば、自分の得意なことがわからず、自信を持てない社員がいたとします。
周囲から「もっと積極的に」と言われても、何をすればいいのかわからないかもしれません。
あるいは、新しい仕事に挑戦したい気持ちはあっても、失敗への不安から一歩を踏み出せない人もいるでしょう。
そんなときに必要なのは、さらに行動を求めることだけではなく、その人が何に迷い、何を大切にし、どんなことに可能性を感じているのかを、一緒に考える時間なのだと思います。
自分の気持ちを言葉にできる。
自分の強みや、これまで積み重ねてきた経験に気づく。
そして、今の仕事の中で「これなら自分にもできるかもしれない」と思えることが見つかる。
そうした小さな気づきや経験が、自分から動いてみようという気持ちにつながっていくのではないでしょうか。
一人ひとりと向き合う時間は、本当に非効率なのか
忙しい職場では、一人ひとりとじっくり話す時間を確保することは、簡単ではありません。
日々の業務を進めながら面談の時間をつくることに、負担を感じる企業もあると思います。
一見すると、対面で一人ひとりの話を聞くことは、効率が悪いように見えるかもしれません。
けれど、社員が何に困っているのかわからないまま、研修を増やしたり、制度を変えたりしても、本当に必要な支援につながるとは限りません。
例えば、仕事への意欲が低いと思われていた社員が、実は自分に期待されている役割を理解できていなかったとしたら。
必要なのは、モチベーションを高める研修ではなく、役割や期待を明確にすることかもしれません。
あるいは、管理職になりたがらない社員が、責任を負うことを嫌がっているのではなく、何を求められるのかわからず不安を感じているのだとしたら。
必要なのは、昇進を勧めることよりも、管理職としての役割やサポート体制を伝えることかもしれません。
もちろん、対話だけですべての問題が解決するわけではありません。
それでも、一人ひとりの声に耳を傾けることで、これまで見えていなかった課題や、取り組むべきことが明らかになる場合があります。
遠回りに見える対話が、結果として無駄な施策やすれ違いを減らす近道になる。
私は、そんな可能性を感じています。
話を聞くだけで終わらせない。組織の仕組みまで一緒に考える
私がThink for Designで目指している「職場の保健室」は、単に悩みを聞く場所ではありません。
もちろん、安心して話せることは大切です。
けれど、話をして気持ちが軽くなっても、職場に戻れば何も変わっていない。
それでは、同じ悩みを繰り返してしまうこともあります。
例えば、社員との面談を通じて、本人がこれまで気づいていなかった強みを見つけたとします。
その強みを今の仕事でどう活かせるのか。
新しい役割に挑戦する機会をつくれないか。
将来の昇進やキャリア形成に向けて、どんな経験を積めばいいのか。
本人の前向きな気持ちを、実際の仕事や成長の機会につなげるためには、組織側の働きかけも必要になります。
だからこそ、Think for Designでは、個別のコーチングやキャリア面談だけでなく、社員の強みや役割の可視化、管理職支援、ワークショップ、組織づくりまでを一緒に考えていきます。
社員一人ひとりの声を大切にしながら、経営者や管理職が目指す組織の姿とも向き合う。
そして、個人の成長と組織の成長がつながる仕組みをつくっていく。
そんな職場づくりを、Think for Designは目指しています。