社員の不満を聞くと、責められているように感じる
社員から仕事の不満を聞いたとき、素直に受け止められないことはありませんか。
社員の話を聞いた方がよいことは分かっている。
できることなら、安心して働ける会社にしたい。
それでも、不満を聞いているうちに、
「会社だって、できる限りのことをしている」
「こちらの事情も少しは分かってほしい」
「自分の経営を否定されているようで苦しい」
という気持ちが出てくることがあります。
社員を大切に思っていないからではありません。
むしろ、会社を守るために考え、責任を背負い、できることを積み重ねてきたからこそ、その努力を否定されたように感じてしまうのかもしれません。
不満が、経営者自身への評価に聞こえてしまう
社員は、仕事の進め方や職場の環境について話しているつもりかもしれません。
けれど、経営者にとって会社は、自分から切り離せるものではありません。
売上が厳しいときも、取引先との問題が起きたときも、社員の雇用を守らなければならないときも、最終的な責任を負うのは経営者です。
特に中小企業では、社員との距離が近く、会社の制度や働き方の多くに経営者自身が関わっています。
そのため、
「今の働き方がつらい」
という社員の言葉が、
「あなたの会社のつくり方が悪い」
「経営者として足りていない」
と言われているように聞こえてしまうことがあります。
本当は社員の話を聞いているはずなのに、自分を守りたい気持ちが出てきて、
「でも、ほかの人も同じ条件で働いているよ」
「会社としては、これ以上できない」
「あなたにも改善できるところがあるのでは?」
と、すぐに説明したくなることもあるでしょう。
誰でも、自分が大切にしてきたものを否定されたように感じれば、守りたくなるものです。
経営者の努力と、社員のつらさは同時に存在する
経営者が懸命に会社を守ってきたこと。
社員が今の働き方に負担を感じていること。
この二つは、どちらか一方だけが正しいわけではありません。
経営者が努力していても、社員がつらさを感じることはあります。
社員が困っていても、会社がすべての希望に応えられるとは限りません。
会社には、売上や人員、取引先との約束があります。
一人の希望をかなえることで、別の社員へ負担が移ってしまうこともあります。
だから、社員の話を聞くことは、社員の要求をすべて受け入れることではありません。
まずは「その人には、今の職場がどのように見えているのか」を知ることです。
経営者から見えている会社と、社員から見えている会社は違います。
その違いをすぐに正そうとせず、いったん並べてみる。
それだけでも、対話の始まりになるのだと思います。
不満の奥に、本人が望んでいることが隠れている
不満を話すとき、ずっと我慢していた人ほど、最初の言葉が強くなることもあります。
その言葉だけを聞くと、会社を批判しているように感じます。
けれど、もう少し話を聞いてみると、
「本当は、仕事の優先順位を相談したかった」
「頑張っていることに気づいてほしかった」
「この会社で働き続けたいけれど、今の状態では難しい」
「自分に合った役割がほかにあるなら、挑戦してみたい」
という思いが見えてくることがあります。
不満の奥には、「本当はこう働きたい」という願いが隠れているのかもしれません。
もちろん、すべての不満に前向きな理由があるとは限りません。
それでも、最初に出てきた言葉だけで「文句ばかり言う社員」と決めてしまう前に、その人が何を分かってほしかったのかを知る余地は残しておきたいと思います。
その場で正しい答えを出さなくてもいい
社員から不満を伝えられると、経営者はその場で答えを出さなければならないと感じるかもしれません。
しかし、突然伝えられた内容を、すぐに冷静に受け止められないこともあります。
そのようなときは、
「話してくれてありがとう。一度整理して考えたい」
と伝えてもよいのではないでしょうか。
社員の話に同意できなくても、まず「そう感じていたこと」は受け取れます。
反対に、無理に優しく聞こうとして、心の中に苛立ちをため続ける必要もありません。
経営者にも、気持ちを整理する時間が必要です。
社員の不満を聞いて苦しくなるとき、経営者自身も本当は、
「自分が頑張ってきたことも分かってほしい」
「会社をよくしたくて、ここまで続けてきた」
と思っているのかもしれません。
社員だけでなく、経営者にも話を聞いてもらえる場所が必要なのだと思います。
経営者が、すべてを一人で受け止めなくてもいい
社員の話を直接聞くことが難しいときは、社内外の第三者に間に入ってもらう方法もあります。
第三者が社員の不満を会社へそのまま届けるのではありません。
社員には、何に困っているのか、自分でできることは何か、会社へ相談したいことは何かを整理してもらう。
経営者には、社員の話を聞いてどのように感じたのか、会社としてできることと難しいことは何かを整理してもらう。
それぞれが少し落ち着いた状態で話せると、「社員対会社」という対立ではなく、一緒に考えられる課題が見えてくることがあります。
Think for Designは、社員の味方、経営者の味方と、どちらか一方に立つための場所ではありません。
経営者と社員が、それぞれの立場では言葉にしにくかったことを整理し、もう一度話せる状態をつくる「職場の保健室」のような存在でありたいと考えています。
社員の不満を聞いて、責められているように感じる。
その気持ちを、無理に打ち消さなくても大丈夫です。
まずは経営者自身が何に傷つき、何を分かってほしかったのかを、誰かに話してみてもよいのではないでしょうか。
経営者の気持ちも社員の気持ちも、どちらかを否定せずに話せるところから、次の対話が始まるのだと思います。