「比較されないブランド」のレシピ
written by 中村 弘樹
「他社との違いが説明できない」「気づくと価格で比較されている」。ブランディングの相談で、いちばんよくいただく悩みかもしれません。
そんなとき、僕はいつも「人間の6つの欲求」の話から入ります。少し抽象的なのですが、ここを通ると、自社の輪郭がぐっと描きやすくなるんです。
人間が抱える、6つの欲求
アンソニー・ロビンズが整理した有名なフレームに、人を動かす根本の欲求が6つあります。「確実性」「多様性」「重要感」「つながり」「成長」「貢献」の6つです。
商品やサービスは、必ずこのどれかと結びついて選ばれています。ただし、ひとつだけに頼ると、似た欲求を満たす無数の競合と並んでしまう。これが「比較されてしまう」状態の正体だと思います。
2つを掛け合わせると、市場の地図が狭まる
ここで僕がおすすめしているのが、6つのうち「2つの欲求」を選び取ることです。
1つだと曖昧、3つ以上だと焦点がぼやける。でも、2つの欲求の交差点に立とうとすると、その瞬間、市場の地図がぐっと狭まります。「ここにしかない」という感覚は、こうやって立ち上がってくるものだと感じています。
身近な例で、感覚をつかむ
たとえばスターバックス。あの空間は、「つながり」と「確実性」の交差点に立っているように見えます。誰と行っても変わらない安心感と、ゆるい人とのつながりを同時に提供してくれる場所です。
Wantedlyなら、「成長」と「つながり」。給料や条件ではなく、共感できる仲間と成長できる環境を一緒に届けにきている。ここを言い切れているから、独自のポジションを保てているんだと思います。
3ステップで、自社の2つを見つける
実務で使うときは、こんな順番で整理していきます。
まず、自社が普段から自然にやれていることを、欲求の言葉で書き出してみる。次に、6つの欲求のうち「これだけは外したくない」という2つを選び切る。最後に、その2つを言葉と「やらないこと」に翻訳する。
「やらないこと」を決めるのが、いちばん覚悟がいる作業です。でも、ここを決められる会社ほど、不思議と比較される機会は減っていきます。
全部言わない、2つだけ言い切る
ブランディングは、足し算ではなく引き算の仕事だなと、お仕事を続けるほど感じます。
あれもいい、これもいい、と全部言ってしまうほど、輪郭はぼんやりしていく。逆に、人間のどの欲求を一貫して届け続けるかを2つだけ言い切ったとき、結果的にいちばん多くの人に届く。比較されないブランドのレシピは、そんなシンプルなところにあると思います。