都会の施策が地方で失敗するのはなぜか
長野で、デザイン会社と複合施設を営んでいます。地方で事業をしていると、「都会で成功した施策をそのまま地方に持ち込みましたが、うまくいきません」という声をよく聞きます。
都会と地方では、マーケティングの前提となる条件が異なります。都会の施策は対象となる人数の多さを前提としていますが、地方では人口や予算が限られています。そのため、地方では不特定多数に広く情報を届けるのではなく、狭い範囲のお客様と深い関係を築くことが重要だと考えています。
都会の施策は対象の多さが前提になる
東京などで結果を出している施策の多くは、対象となる人数の多さを前提に組み立てられています。具体的には、フォロワー数、広告予算、ウェブサイトへの流入経路の多さなどです。地方で都会と同じような条件をつくろうとすると、まず予算が足りなくなります。
しかし、地方が都会より劣っているわけではないと思っています。都会と地方では、マーケティングの前提となる条件が違うだけです。地方の条件に合った方法を選べば、事業はしっかりと進められます。
地方では人間関係と口コミが基盤になる
地方の大きな特徴は、直接の知人間での口コミの影響力が強いことだと思います。「あそこのお店がよかった」という実際の体験談が、まわりの人に強く響きます。一人のお客様が、知人を10人連れてくるということもよく起きます。
そのため、地方のマーケティングでは、情報を広げるスピードや規模よりも、お客様との信頼関係が基盤になります。お客様との関係づくりを後回しにして広告だけを出しても、なかなか集客にはつながりません。
商品より誰が売っているかが選ぶ理由になる
もうひとつ重要なのが、地方では「何を買うか」よりも「誰から買うか」が、お客様の購入の決定要因として大きくなることです。
したがって、自社の商品やサービスの性能をきれいに並べて宣伝するよりも、誰が、どのような想いで、どのような仕事をしているのかを発信するほうが、お客様に届きやすくなります。僕自身も、SNSで自社の商品について話すよりも、働いている人や職場の様子を紹介したときのほうが、確かな反応をもらいます。
その土地ならではの背景が他社との違いになる
地方の事業には、その土地ならではの背景や歴史が必ずあります。
- 何代続いた仕事か
- どの集落の人と関わってきたか
- どのような素材や気候のなかでつくられたものか
このような背景は、後から参入してきた競合他社がまねしにくい資産です。「この土地にしかないもの」を言葉にして伝えていくだけで、他社との明確な違いが生まれてきます。
狭い範囲のお客様に深く愛される経営を目指す
地方では、不特定多数の人に薄く広く情報を届けるよりも、狭い範囲のお客様に深く愛されることを目指すほうが、結果的に経営は安定します。たとえば人口が2万人の町でも、自社を強く支持してくれるお客様が100人いれば、お店は十分に継続できます。
対象を狭く絞り込むことは、不安になってつい避けたくなります。しかし、対象を絞り込む覚悟を持てる会社ほど、地域に長く残っていく様子を僕は目の前で見てきました。
地方の弱点を強みに変える
予算が少ないこと、人口が少ないこと、情報の伝わり方が遅いことは、一見すると地方の弱点に見えます。しかし、視点を変えれば強みにもなります。
商圏が狭いからこそ、お客様との関係を深くしやすくなります。情報の伝わり方が遅いからこそ、一時的なブームに振り回されにくくなります。地方の中小企業には、地方の中小企業だからこそ確立できる立場があります。都会の事例をまねするのをやめたところから、自社らしいブランドづくりが始まると僕は考えています。