マーケティング

地方の中小企業には、地方の闘い方がある。

written by 中村 弘樹

長野で、デザイン会社と複合施設を営んでいます。地方で事業をしていると、「都会で当たっている施策をそのまま持ってきたんですけど、うまくいかなくて」という声をよく耳にします。

地方には地方の構造があります。それを無視して都会のやり方を当てはめても、空回りしてしまう。今日は、僕が現場で感じている「地方の闘い方」を整理してみたいと思います。

「都会の成功事例」が通用しないわけ

東京で結果を出している施策の多くは、母数の大きさを前提に組まれています。フォロワー数、広告予算、流入チャネルの厚み。地方で同じ条件をつくろうとすると、まず予算で詰まります。

でも、地方が劣っているわけではないと思っています。都会と地方では、そもそも勝ち筋の地形が違います。同じ地図を使うから道に迷うのであって、地形に合った地図を持てば、ちゃんと進めます。

地方では「信頼経済」がすべて

地方のいちばんの特徴は、リアルな口コミの密度の濃さだと思います。「あそこのお店、よかったよ」が、本当に響く。一人のお客さまが10人を連れてくる、ということが普通に起きます。

だから地方のマーケティングは、スピードとスケールではなく、信頼と関係性が基盤になります。ここを抜きに広告だけ回しても、なかなか結果につながりません。

商品ではなく、「人」で選ばれる

もうひとつ大事なのが、地方では「何を買うか」より「誰から買うか」のほうが、決定要因として大きいことです。

ですから、自社の商品スペックをきれいに並べる前に、誰が、どんな想いで、どんな仕事をしているのかを見せる発信のほうが効きます。僕自身も、SNSで自社の話より、人や場の様子をシェアしたときのほうが、確かな反応をもらいます。

その土地の物語が、差別化になる

地方の事業には、その土地ならではの背景や歴史が必ず宿っています。何代続いた仕事か。どの集落の人と関わってきたか。どんな素材や気候のなかでつくられたものか。

これは、後発の競合がコピーしにくい資産です。「ここにしかない」を言語化していくだけで、強いブランドの輪郭が立ち上がってきます。

「狭く深く」が、地方の勝ち筋

地方では、不特定多数に薄く広く届けるよりも、狭い範囲に深く愛されにいくほうが、結果的に経営は安定します。人口2万人の町でも、本気のファンが100人いれば、お店は十分に続きます。

「狭く深く」は、つい怖くなって手放したくなる戦略です。でも、ここを覚悟できる会社ほど、長く残っていくのを目の前で見てきました。

「不利」を「戦略」に置き換える

予算が少ない、人口が少ない、情報の伝わり方が遅い。一見、地方の弱点に見えるところは、視点を変えると強みにもなります。

狭いから、関係を深くしやすい。情報が遅いから、ブームに振り回されない。地方の中小企業には、地方の中小企業にしか取れない陣地があります。都会のマネをやめたところから、本当のブランドづくりが始まると思っています。

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