採用できないなら、「今いる社員」を見直してみる
人手が足りない。求人を出しても応募が来ない。ようやく採用できても、経験者ではないため、仕事を任せられるようになるまでに時間がかかる。
このような状況が続くと、会社は「さらに求人媒体を増やそう」「採用条件を変えよう」と、外から人を集める方法を考えます。
もちろん、事業を継続し、成長させるために採用が必要な会社もあります。
ただ、採用活動と同時に、もう一つ確認してほしいことがあります。
今いる社員の力を、会社はどこまで知っているでしょうか。
現在担当している仕事だけを見て、「この人にできることはここまで」と決めてはいないでしょうか。
社員がこれまでに身につけてきた経験や強み、挑戦してみたいことの中に、会社が新しく人を採用しようとしている仕事とつながるものが隠れているかもしれません。
採用意欲は高まっても、必要な人を採用できるとは限らない
Think for Designが拠点を置く長野県でも、多くの企業が人材を求めています。
帝国データバンク長野支店が長野県企業を対象に行った調査によると、2026年度に正社員の「採用予定がある」と回答した企業は63.9%でした。
採用形態別では、新卒採用を予定している企業が40.2%であるのに対し、中途採用は52.2%となり、新卒を上回っています。
人手不足に加えて、社員の退職や高齢化による補充の必要性が高まっていることなどが、採用意欲の背景にあると考えられています。
一方で、中小企業では、大企業との賃金格差による応募数の少なさや、既存社員との処遇の調整などが課題として挙げられています。
これは長野県だけの問題ではありません。全国の中小企業でも、人を採用したい企業は多い一方、必要な人材を思うように確保できない状況が続いています。
「欠員が出たら、同じ条件で次の人を採用する」という方法だけで、これまでどおり仕事を維持することが難しくなっているのです。
参考:帝国データバンク「長野県・2026年度の雇用動向に関する企業の意識調査」
「今いる社員を見直す」は、仕事を増やすことではない
今いる社員の力を生かすと聞くと、「すでに忙しい社員へ、さらに仕事を任せること」と受け取られるかもしれません。
しかし、それでは人手不足による負担を、社内で分け合っているだけです。
ここで考えたいのは、仕事量を増やすことではありません。
現在の仕事や役割をそのままにしたまま頑張ってもらうのではなく、社員一人ひとりが持っている力と、会社の中にある仕事を見直し、より力を発揮しやすい組み合わせを考えることです。
例えば、営業事務を担当している社員が、以前の職場で新人教育を経験しているかもしれません。
製造を担当している社員が、個人的に動画編集を学んでいるかもしれません。
接客を担当している社員が、お客様から聞いた意見を整理し、改善案へ変えることを得意としているかもしれません。
本人にとっては当たり前の経験であり、今の仕事では使う機会がないため、会社へ伝えていないこともあります。
履歴書や現在の役職だけでは、その人が持っている力のすべては分かりません。
会社が知っているのは「現在の担当業務」であることが多い
会社は、社員の仕事ぶりを日々見ています。
そのため、その人の得意なことや苦手なことを理解しているように感じます。
しかし、会社が見ているのは、現在任せている仕事の中で表れている一部分かもしれません。
資料を分かりやすく整理できる人でも、資料を作る機会がなければ、その力は見えません。
人の話を聞き、考えをまとめることが得意な人でも、指示された作業だけを行っていれば、その強みは表れません。
新しい企画を考えたい人でも、提案する場所がなければ、「指示されたことだけを行う人」に見えることがあります。
社員の能力が足りないのではなく、持っている力を見られる仕事や機会が用意されていないこともあります。
人材が不足していると感じたときは、人数だけでなく、今いる社員の力がどのくらい見えているかも確認する必要があります。
今いる社員を見直す5つのステップ
①これから必要になる仕事を細かく分ける
最初に、「どのような人を採用するか」ではなく、「会社でどのような仕事が増えているか」を整理します。
例えば、「広報担当者が必要」と考えている場合でも、必要な仕事を分けると、さまざまな業務があります。
- 社内から情報を集める
- 社員やお客様へ話を聞く
- 写真を撮影する
- 文章を書く
- SNSへ投稿する
- Webサイトを更新する
- 発信した結果を確認する
- 次の企画を考える
すべてを一人の経験者に任せようとすると、採用条件が厳しくなります。
しかし、仕事を細かく分けると、文章を書くことは社内のAさん、写真撮影はBさん、Webサイトの専門的な更新は外部へ依頼する、といった方法も考えられます。
職種単位で人を探す前に、必要な仕事を役割単位まで分解することが大切です。
②社員の経験を、現在の仕事以外からも知る
次に、社員がこれまでに経験してきたことを確認します。
職歴や資格だけではなく、
- 過去の仕事で任されていたこと
- 人からよく頼まれること
- 自然と工夫してしまうこと
- 時間を忘れて取り組めること
- 個人的に学んでいること
- 仕事以外で続けてきた活動
- 今後経験してみたいこと
などを聞きます。
仕事とは関係がないと思っていた経験の中に、現在の会社で生かせる力が見つかることがあります。
ただし、面談で「会社のために何ができますか」と聞くと、社員は現在の役職や会社から期待されている範囲で答えようとします。
まずは会社の都合から離れて、その人がどのような経験をし、何に関心を持ち、どのようなときに力を発揮してきたのかを理解することが必要です。
③強みと会社に必要な役割の接点を探す
社員の強みや希望を確認したら、会社に必要な仕事との接点を探します。
ここで大切なのは、本人が得意だからという理由だけで、新しい仕事を任せないことです。
できることと、やりたいことは同じとは限りません。
以前の職場で新人教育を担当していた人が、今後も人を教えたいとは限りません。SNSを使える人が、会社のSNS担当を希望しているとも限りません。
次の3つを分けて確認します。
- できること
- やってみたいこと
- 会社が必要としていること
この3つが重なる部分に、小さな役割をつくります。
すべてが完全に一致しなくても、「興味があり、少し経験があり、会社も必要としている」という接点があれば、試してみる価値があります。
④いきなり配置転換せず、小さく試す
新しい役割が見つかっても、すぐに異動や正式な担当変更を行う必要はありません。
まずは小さな仕事で試します。
- 会議の進行を一度担当してもらう
- 新人向け資料を一つ作ってもらう
- 社内報の企画を一つ考えてもらう
- 業務改善のプロジェクトに参加してもらう
- お客様へのインタビューを担当してもらう
- 新しいツールを一つの業務で試してもらう
実際に取り組んでみると、本人がやりがいを感じるか、どのような支援が必要か、会社が期待する成果につながりそうかが分かります。
うまくいかなかった場合も、「本人に能力がなかった」と決めるのではなく、任せ方、時間、裁量、教え方に問題がなかったかを確認します。
小さく試し、振り返りながら役割を調整することで、本人にも会社にも大きな負担をかけずに可能性を探せます。
⑤社内で補えない部分を明確にしてから採用する
今いる社員の経験や強みを確認しても、社内だけでは補えない仕事はあります。
その場合は、改めて採用や外部委託を検討します。
社内でできることと不足していることが整理されていれば、募集する人材の条件も具体的になります。
「幅広く対応できる人」ではなく、
- どの仕事を任せたいのか
- どの程度の経験が必要なのか
- 社内の誰と協力するのか
- 入社後に何を身につけてもらうのか
- 何を外部へ依頼するのか
を明確にできます。
必要以上に高い条件で人を探すことを避け、自社に本当に必要な人へ届く求人を作りやすくなります。
強みを見つけても、仕事とつながらなければ意味がない
社員の強みを診断したり、面談で希望を聞いたりするだけでは、働き方は変わりません。
「あなたの強みは調整力です」と伝えられても、それをどの仕事で使うのかが分からなければ、本人も行動できません。
社員の強みを知ることと同じくらい、会社側が仕事や役割を調整することが大切です。
今の役割の中で生かせるのか。新しい仕事を一部任せられるのか。別の社員と組み合わせた方がよいのか。必要な知識を学ぶ機会を用意できるのか。
社員の内側にあるものと、会社の中にある仕事をつなぐところまで考える必要があります。
Think for Designは、社員の内側と会社の仕事をつなぎます
Think for Designでは、現在の担当業務や職歴だけを見て、社員の適性を判断しません。
個別面談を通して、仕事以外も含めたこれまでの経験を振り返り、その人が何を大切にしてきたのか、どのような場面で自然に力を発揮してきたのかを整理します。
そのうえで、現在の仕事で生かされている力、生かされていない力、今後経験してみたいことを確認します。
社員の希望だけを会社へ伝えるのではなく、会社が今後必要としている仕事や役割との接点を探します。
そして、いきなり大きな配置転換を行うのではなく、現在の仕事の中で試せる小さな行動や役割を考えます。
採用できないから、今いる社員にもっと頑張ってもらうのではありません。
今いる社員がすでに持っているものを知り、その力が発揮される仕事や役割へ組み直す。
そのうえで、社内に本当に不足している力を明確にし、採用、育成、外部人材の活用を考える。
採用が難しい時代だからこそ、外から人を探す前に、すでに会社の中にいる人の可能性を見直すことが、人手不足へのもう一つの選択肢になると考えています。