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手戻りが減るのは、共通の言葉があるとき

チームの手戻りが多いとき、原因は個人の力量ではなく、共通の言葉が無いことにあります。

デザインの現場で分かりやすい例があります。上がってきた制作物を見て「なんかダサい」と言う。作った側は直す方向が分からないので、色を変えたり写真を大きくしたりして当てにいく。3回やり直して、結局いちばん最初の案に戻る。

このとき減っているのは、時間と費用だけではありません。「何を直せばよかったのか」が誰の中にも残らないので、次も同じことが起きます。

暗黙知は、本人も持っていることに気づかない

長くやっている人ほど、判断が速くなります。速いので、途中の理屈を意識しません。

そのため、後から来た人に渡せるものが「見て覚えて」だけになります。本人は隠しているつもりがなく、ただ言葉にしたことがないので出てこない。ここが、人が育つ組織をつくるときの最初の詰まりどころだと思っています。

この状態を放っておくと、判断が特定の人に集まります。その人が忙しくなるほど、確認待ちの列が伸びる。組織の速度が、一人の空き時間で決まるようになります。

言葉は、外から借りてこられる

解き方は、社内で一から言語化しようとしないことです。多くの分野には、すでに整理された言葉があります。

デザインなら、ロビン・ウィリアムズの『ノンデザイナーズ・デザインブック』(1994年)にある4つ。近接、整列、反復、対比です。関係のあるものを近づける。端をそろえる。同じ役割は同じ見た目にする。違うものははっきり違わせる。

これを共有しておくと、「なんかダサい」が変わります。「見出しの上下の余白が逆になっていて、どこまでが1つの話か読めません」。指示が具体的になれば、直しは1回で終わります。

大事なのは、この4つが正解だということではなく、チーム全員が同じ4つで話せるということのほうです。

作る力と、判断する力を分ける

ここで整理しておきたいことがあります。4つを覚えても、作れるようにはなりません。書体を選ぶ、写真を1枚決めるといった仕事は、経験の要る領域です。

変わるのは判断のほうです。出てきたものに丸をつけるか、どこを直してほしいか言えるようになる。

この2つを分けておくと、育成の設計がしやすくなります。全員に作る力を求める必要はなく、判断する力だけなら、共通の言葉を配ることで短い期間で揃えられます。

組織に置くときの形

個人の心がけにすると続きません。確認するときの項目として、承認の手順に組み込んでしまうほうが残ります。

制作物を紙に出す。4つを1つずつ見る。見つかったところに赤で書き込んで、そのまま渡す。ここまでを型にしておけば、担当者が変わっても同じ基準で戻せます。

共通の言葉があると、確認する人が一人でなくてもよくなります。判断が分散すれば、待ちの列は短くなる。手戻りが減るというのは、結局そういうことだと思っています。

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