「人手不足だから採用」だけでは解決しない。求人を出す前に見直したい3つのこと
人が足りない。現場が回らない。今いる社員の負担も大きくなっている。
この状況を何とかするために、まず求人を出そうと考えますよね。
けれど、採用してもすぐに辞めてしまう。新人を教える余裕がなく、いつまでも仕事を任せられない。結果として、既存社員の負担がさらに増えてしまう。
このような状態を繰り返している場合は、採用人数を増やす前に、社内の状況を一度立ち止まって見た方がよいかもしれません。
人手不足に見えている問題が、実は採用だけでは解決できない組織の問題であることも多いからです。
人が足りない会社に、本当に足りないものは何か
厚生労働省の「中小企業リスキリング支援事業」では、中小企業の経営課題として、DXの遅れや人手不足、業務の属人化などが挙げられています。そのうえで、必要なスキルを可視化し、人材育成や業務改善につなげる支援が行われています。厚生労働省「中小企業リスキリング支援事業」
ここからも分かるように、人手不足は単純に「働く人の人数が少ない」という問題だけではありません。
特定の社員しかできない仕事が多い。教え方が人によって違う。役割や責任の範囲が曖昧になっている。業務量に偏りがある。社員が成長の見通しを持てない。
こうした状態のまま新しい人を採用しても、受け入れる側の負担が増え、育つ前に辞めてしまう可能性があります。
求人を出す前に見直したいことは、大きく3つあります。
①社員が辞める本当の理由を把握できているか
退職理由としてよく聞くのは、給与、勤務時間、業務内容、家庭の事情などです。
どれも実際の理由ではありますが、それだけが退職を決めた原因とは限りません。
キャリア相談で話を聞いていると、その奥に別の苦しさが隠れていることがあります。
上司に相談しても話を聞いてもらえなかった。何を期待されているのか分からなかった。頑張っても結果だけで判断され、工夫した過程を見てもらえなかった。周囲に迷惑をかけたくなくて、仕事を抱え続けていた。この会社で働き続ける未来を描けなかった。
こうした気持ちは、退職した後の面談で初めて明らかになることもあります。
しかし、すでに退職を決めた社員は、会社に不満を詳しく伝えようとはしません。「話しても変わらない」「辞めるのだから波風を立てたくない」と考え、伝えやすい理由だけを話す場合もあります。
そのため、退職者の言葉だけではなく、今いる社員がどこに働きにくさを感じているのかを日頃から確認することが大切です。
最近、仕事が進めやすかったのはどのようなときか。反対に、負担が大きかったのはどのような場面か。相談しにくいことはないか。今の役割に納得できているか。
社員が辞める前にこうした対話ができれば、業務の分担や関わり方を変えることで、今の会社に残る選択肢が見つかることもあります。
②新人が育たない理由を、本人の能力だけにしていないか
採用した人がなかなか育たないと、「自分から質問しない」「指示を待っている」「覚えるのが遅い」と、本人の姿勢や能力に原因を求めたくなることがあります。
けれど、新人の側から見ると、別の状況があるかもしれません。
忙しそうで質問するタイミングが分からない。人によって教える内容が違う。どこまで自分で判断してよいのか分からない。失敗したときに強く注意されたため、確認しないと動けなくなった。目の前の作業は教えてもらえても、何のために行う仕事なのか分からない。
この状態で「もっと主体的に動いてほしい」と伝えても、何をどう変えればよいのか本人には分かりません。
育成には、業務を教えることだけでなく、役割、判断できる範囲、仕事の目的、相談方法を共有することが必要です。
また、社員によって理解しやすい教え方も違います。まず全体像を知りたい人もいれば、一つずつ実践しながら覚えたい人もいます。質問しながら整理する人もいれば、自分で考える時間があった方が理解できる人もいます。
本人の強みや学び方を知り、任せ方を調整すると、それまで「育たない」と思われていた社員が力を発揮し始めることがあります。
育成がうまくいかないときは、採用した人の能力だけではなく、受け入れる側の仕組みも一緒に確認する必要があります。
③社員が会社に何を期待しているかを知っているか
会社が社員に期待することは、比較的明確です。
売上を上げてほしい。仕事を早く覚えてほしい。長く働いてほしい。周囲と協力してほしい。自分から考えて行動してほしい。
一方で、社員が会社に何を期待しているかは、意外と聞かれていません。
必ずしも、給与を上げてほしい、休みを増やしてほしいという要望だけではありません。
自分の意見を一度は聞いてほしい。得意なことを生かせる役割を経験したい。何を目指せば評価されるのか知りたい。生活が変化しても働き続けられる安心感がほしい。会社がこれからどこへ向かうのか知りたい。
社員が求めているものをすべて実現する必要はありません。
ただ、会社に期待していることが分からなければ、どのような環境を整えると社員が力を発揮できるのかも分かりません。
会社としてできること、すぐには難しいこと、今後検討できることを話し合う。その過程が、社員にとって「自分もこの会社をつくる一人なのだ」と感じる機会になります。
今いる社員の声に、採用のヒントがある
採用活動を始めるとき、会社は求職者に向けて自社の魅力を考えます。
しかし、本当に自社らしい魅力を知っているのは、今そこで働いている社員です。
なぜこの会社に入ったのか。入社前にどの言葉が心に残ったのか。働き続けている理由は何か。仕事を通して、どのような成長や喜びを感じたのか。反対に、入社前のイメージと違った部分は何か。
こうした声を整理すると、求人票へ載せるべき言葉や、面接で伝えるべき会社の実態が見えてきます。
見栄えのよい言葉で応募者を増やしても、入社後の体験と違えば「思っていた会社ではなかった」というズレにつながります。
応募数が少し減ったとしても、会社が大切にしていることや実際の働き方に共感する人から応募が来た方が、入社後の定着につながりやすくなります。
採用と組織づくりを、切り離さない
人手不足への対応というと、求人媒体、採用サイト、SNS、説明会など、外へ向けた施策が先に考えられます。
けれど、採用した人が働くのは、現在の組織の中です。
今いる社員が疲弊している。役割が曖昧。相談しても変化がない。育成方法が担当者任せになっている。その状態で採用広報だけを整えても、新しく入った人はいずれ同じ問題に直面します。
反対に、社員が自分の強みを理解し、仕事の意味や今後の役割を見つけられている会社では、その実感が日々の言葉や行動に表れます。
社員が自分の経験として会社の魅力を話せることは、採用サイトのどのような美しい表現よりも、求職者にとって信頼できる情報になります。
だからこそ、採用活動を始める前に、今いる人が活躍し、成長し、働き続けられる環境を整えることが大切です。
Think for Designは、人の内側から採用までをつなぎます
Think for Designでは、人手不足を採用だけの問題として扱いません。
まず、社員一人ひとりの価値観や強み、現在感じている働きにくさを、ワークショップやコーチングを通して言語化します。
そこから、仕事との接点、新しく担える役割、上司との関わり方、育成や業務分担の課題を整理し、社員が自ら相談・提案できる状態をつくっていきます。
さらに、社員や経営者との対話から見つかった会社の価値を、採用メッセージやWebサイト、広報物など、外へ届く言葉とデザインへつなげます。
人材育成、組織づくり、採用、ブランディングは、それぞれ別の取り組みに見えます。
しかし、すべての中心にいるのは「人」です。
今いる社員が会社の中で何を感じ、何を大切にし、どのような価値を生み出しているのか。その実態が整って初めて、会社らしい魅力を求職者へ伝えられます。
求人を出しても人が集まらない。採用しても定着しない。新人が育つ前に辞めてしまう。
そのような状態が続いているなら、一度、採用活動の手前に戻ってみる必要があります。
採用の問題だと思っていたけれど、実は組織の問題だった。
その気づきが、人を増やすだけではない、本当の人手不足対策の始まりになると考えています。