キャリア面談と1on1の違いとは?
社員との対話を増やすために、1on1を始める企業が増えています。
一方で、社員の今後の働き方や成長について考える「キャリア面談」を実施する企業もあります。
どちらも社員と1対1で話すため、「何が違うのか分からない」「1on1をしていれば、キャリア面談は必要ないのでは」と感じる経営者や管理職もいるかもしれません。
1on1とキャリア面談には、重なる部分もあります。しかし、基本的な目的と扱う時間軸が異なります。
簡単に整理すると、1on1は「現在の仕事を進めやすくし、日々の経験から成長するための対話」、キャリア面談は「これまでを振り返り、今後の働き方や役割を考えるための対話」です。
どちらか一方を選ぶものではなく、二つを組み合わせることで、社員の成長と会社の人材育成をつなげやすくなります。
1on1とは?
1on1とは、上司と部下が定期的に行う1対1の対話です。
業務上の困りごとや目標、最近経験したことなどを話しながら、部下の課題解決や成長を上司が支援します。
1on1は、もともと米国企業、特にシリコンバレーで根づいていたマネジメント手法とされています。
日本で1on1が広く知られるようになる大きなきっかけをつくったのが、当時のYahooです。
Yahooは2012年から、上司と部下が週に1回、30分程度対話する1on1を全社的に導入しました。その取り組みを紹介した書籍『ヤフーの1on1』が2017年に刊行され、多くの日本企業が1on1を取り入れるきっかけになりました。
現在のLINEヤフーも、1on1を「上長と部下が1対1で行うミーティング」と説明しています。上司が部下の課題解決や目標達成を支援し、部下の内省を促して、経験から学ぶサイクルを回す役割があるとしています。
つまり、1on1は上司が指示を出したり、進捗を確認したりするだけの時間ではありません。
最近の経験を振り返り、「何がうまくいったのか」「どこで困っているのか」「次はどうしたいのか」を部下自身が考える時間です。
キャリア面談とは?
キャリア面談は、社員がこれまでの仕事を振り返り、今後どのように働きたいのか、どのような経験や能力を身につけたいのかを考えるための対話です。
厚生労働省では、キャリアコンサルティングを、労働者の職業選択、職業生活設計、職業能力の開発・向上に関する相談に応じ、助言や支援を行うこととしています。
キャリア面談では、現在の業務上の問題だけでなく、本人の価値観、強み、興味、これまでの経験、将来への希望や不安なども扱います。
例えば、次のようなことを考えます。
- これまで、どのような仕事にやりがいを感じたか
- 自分の強みを発揮できたのは、どのような場面か
- 今後経験してみたい仕事や役割は何か
- 身につけたい能力や知識は何か
- 今の会社で、どのようなキャリアを築けそうか
- 働き続けるうえで、不安に感じていることは何か
「転職するかどうか」を決めるためだけの面談ではありません。
社員が自分の働き方を振り返り、社内にある役割や成長機会との接点を見つけることも、キャリア面談の大切な役割です。
1on1とキャリア面談の違い
1on1とキャリア面談の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較する項目 | 1on1 | キャリア面談 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 現在の課題解決、目標達成、日々の成長支援 | 自己理解を深め、今後の働き方やキャリアを考える |
| 主に扱う時間 | 現在から近い未来 | 過去・現在・中長期の未来 |
| 話す内容 | 業務、目標、人間関係、最近の経験、困りごと | 価値観、強み、経験、能力、今後の役割や働き方 |
| 実施する人 | 主に直属の上司 | 上司、人事、キャリアコンサルタントなど |
| 頻度の目安 | 週1回、隔週、月1回など | 半年に1回、年1回、節目となる時期など |
| 対話後の動き | 次回までに試す行動を決める | 中長期の方向性や必要な経験・支援を整理する |
ただし、二つの境界が完全に分かれているわけではありません。
1on1の中で将来のキャリアについて話すこともあれば、キャリア面談で現在の仕事の悩みが出てくることもあります。
大切なのは、面談の名前ではなく、「何のための時間なのか」を社員と共有しておくことです。
Think for Designでは、最初から仕事の話だけを聞きません
Think for Designのキャリア面談では、最初から「今後どのような仕事をしたいですか」「会社で何を目指しますか」とは問いません。
なぜなら、自分が大切にしていることや力を発揮しやすい状況は、仕事の経験だけに表れるものではないからです。
子どもの頃に夢中になっていたこと。自分で考えて行動した経験。誰かの役に立てたと感じた出来事。苦しい状況でも続けられたこと。反対に、強い違和感や息苦しさを感じた環境。
本人が話せる範囲で、仕事以外も含めたこれまでの経験を振り返ります。
- どのようなことに自然と夢中になってきたか
- どのような場面で、自分から行動できたか
- 何を任されたときに、力を発揮できたか
- どのような人や環境といると、安心して動けたか
- どのような選択に、納得や喜びを感じてきたか
- 反対に、何が自分の力を発揮しにくくしていたか
一つひとつの経験をたどると、本人にとっては当たり前すぎて気づかなかった価値観や強み、行動の特徴が見えてきます。
まずは人生全体を通して、「自分は何を大切にしてきたのか」「どのようなときに自分らしく動けるのか」を理解することを優先します。
そのうえで、現在の仕事を見直します。
これまでの経験から見つかった強みは、今の仕事のどこで生かされているのか。まだ生かせていない力はないか。今後どのような役割や環境があれば、さらに力を発揮できるのか。
人生から仕事を見ることで、本人は会社から期待されている役割に自分を合わせるだけでなく、自分が持っているものを仕事の中でどう生かせるかを考えられるようになります。
Think for Designが行うのは、会社に役立つ能力だけを探すための面談ではありません。
まず、その人自身を理解する。次に、その人が持つ価値観や強みと仕事との接点を見つける。最後に、本人の希望と会社が必要としている役割をつなぎ、実際に試せる行動を考える。
この順番を大切にしています。
上司が行う1on1だけでは話しにくいこともある
1on1は、上司が部下の状態を知り、日常的に成長を支えるうえで有効です。
ただし、直属の上司だからこそ話しにくいこともあります。
上司は、業務を指示する人であり、評価にも関わる存在です。そのため社員は、上司との1on1であっても、話す内容を無意識に選んでいる可能性があります。
「異動したいと言ったら、今の仕事を否定していると思われるかもしれない」
「将来について迷っていると話したら、意欲が低いと思われるかもしれない」
「上司との関係に悩んでいることを、本人には言えない」
このようなときは、社内の利害関係から離れた外部のキャリアコンサルタントと話すことで、本人が考えを整理しやすくなります。
外部面談で出た要望をそのまま会社へ伝えるのではなく、本人が何を望み、どのように上司へ相談するかを一緒に考えることもできます。
1on1とキャリア面談の両方を社内で行えない場合は
Think for Designでは、外部のキャリアコンサルタントによる個別面談と、上司による1on1の両方を大切にしています。
個別面談では、社員一人ひとりが自分の価値観や強み、働きにくさ、今後望んでいる役割を整理します。
そこで見つかった考えを、本人が上司へ相談できる言葉に変えます。必要に応じて、個人が特定されない形で組織に共通する課題をまとめ、経営者や管理職へフィードバックします。
さらに、上司との1on1を通して、本人の希望と会社が期待する役割の接点を見つけ、実際の業務で試せる行動へつなげます。
社員の本音を聞くだけでも、会社の希望を伝えるだけでも、人材育成は進みません。
社員が自分について考える時間と、上司と仕事について話す時間をつなぐこと。
キャリア面談と1on1の役割を理解し、両方を適切に活用することが、社員が自分で考え、成長できる組織づくりにつながります。