組織づくり

「あの社員、大丈夫だろうか」を管理職ひとりに抱えさせない

管理職の仕事は、想像以上に「人のことを考える時間」が多いものです。

最近、あの社員の元気がない気がする。今の役割に納得しているだろうか。仕事を抱え込んでいないだろうか。声をかけた方がよいのか、少し見守った方がよいのか。

部下を大切にしようとする管理職ほど、一人ひとりの様子を見ながら、こうしたことを考え続けています。

もちろん、社員の状態に気を配ることは大切です。ただ、管理職がすべてを察し、悩みを聞き出し、解決策まで考えなければならない状態が続くと、管理職自身の負担が大きくなります。

本来取り組みたい業務やチーム全体のマネジメントに集中できず、「誰かが不調にならないように」と常に気を回し続けることにもなりかねません。

私たちが企業向けのコーチングで目指しているのは、社員の悩みを代わりに解決し続けることではありません。

社員自身が自分の状態を理解し、必要なときに自分から相談し、会社へ提案できるようになることです。

管理職が困るのは、社員の考えていることが見えないとき

社員が何にやりがいを感じ、どのような仕事で力を発揮し、今後何を目指したいのか。

こうしたことが本人の中で整理されていると、管理職も役割を考えやすくなります。

例えば、

「人に教えることが得意なので、新人育成に関わりたい」

「正確に進めることは得意ですが、急な変更が続くと優先順位が分からなくなります」

「将来はチームをまとめる役割に挑戦したいので、まずは小さなプロジェクトの進行を経験したいです」

と本人から伝えてもらえれば、管理職は何を任せ、どのような経験を用意すればよいのかを考えられます。

一方で、本人も自分のことが分からず、希望を言葉にできない状態では、管理職が表情や行動から推測するしかありません。

「最近やる気がないように見えるけれど、仕事が合わないのだろうか」

「新しい仕事を任せたいけれど、本人がどう思うか分からない」

「何か悩んでいそうだけれど、聞いても“大丈夫です!”としか返ってこない」

社員の考えが見えないほど、管理職は必要以上に気を回すことになります。

だからこそ、社員自身が強みや価値観、働く目的、今後目指したい方向を整理しておくことは、本人だけでなく管理職にとっても大きな助けになります。

いきなり上司に話すのは、思っている以上に難しい

会社に対する希望や悩みがあっても、それを上司に伝えられる社員ばかりではありません。

「不満があると思われるかもしれない」

「自分だけ特別な希望を出してよいのだろうか」

「うまく説明できないまま話したら、わがままだと思われそう」

「評価に影響したらどうしよう」

このような不安から、何も言わずに我慢する人もいます。

また、話したい気持ちはあっても、自分が何に困っているのかを整理できていないこともあります。

「何となく仕事がつらい」

「今のままではいけない気がする」

「この仕事を続ける意味が分からない」

本人の中でも漠然としていることを、そのまま会社へ伝えるのは難しいものです。

コーチングでは、まず評価や人事判断から離れた場所で、安心して話せる環境を整えます。

そこで、現在感じていることを一つずつ言葉にしながら、何が難しいのか、何ならできそうなのか、本人は本当はどうしたいのかを一緒に整理していきます。

「異動したい」の奥に、別の希望が隠れていることもある

例えば、社員から「今の部署を異動したい」という相談が出たとします。

その言葉だけを受け取ると、会社は異動させるか、今の部署に残ってもらうかを考えることになります。

しかし、話を深めてみると、本人が求めているのは異動そのものではない場合があります。

同じ作業を繰り返すのではなく、新しいことを学びたいのかもしれません。仕事の進め方について意見を伝えられるようになりたいのかもしれません。苦手な業務の割合を少し減らし、得意な業務を増やしたいのかもしれません。

「異動したい」という言葉を、

「今の部署では成長を感じられないため、これまでの経験を生かしながら、新しい役割にも挑戦したい」

と整理できれば、会社が検討できる選択肢も増えます。

すぐに異動することは難しくても、担当業務の一部を変える、小さな役割を任せる、他部署のプロジェクトに参加する、必要な研修を受けるといった方法が見つかる可能性があります。

私たちは、社員の希望をそのまま会社に通すことを目的にしているわけではありません。

本人が何を望んでいるのかを整理し、会社にとっても検討しやすい言葉へ整えることを大切にしています。

「できないこと」と「できること」が分かれば、行動に変えられる

悩みを抱えていると、すべてが難しいように感じることがあります。

けれど、丁寧に分けていくと、今すぐ変えられないことと、自分の行動で変えられることが見えてきます。

会社の制度をすぐに変えることは難しいかもしれません。しかし、制度の中で利用できる働き方を確認することはできます。

苦手な仕事をすべて手放すことは難しくても、つまずきやすい場面を伝え、優先順位を確認する方法を決めることはできます。

希望する役職にすぐ就くことは難しくても、その役割に必要な経験を小さく積み始めることはできます。

本人から「これは難しい」「ここまではできる」と伝えてもらえれば、私たちも課題を整理し、取り組みやすい大きさに分けられます。

必要であれば、上司への伝え方も一緒に考えます。

単に「できません」と伝えるのではなく、

「この部分は一人で判断することが難しいため、最初に優先順位を確認させてください。その後の作業は自分で進められます」

と伝えられれば、上司も必要な支援を判断しやすくなります。

社員が自分の状態を言葉にできるようになることは、配慮を求めるためだけではありません。周囲と協力しながら、仕事を前へ進めるための力でもあります。

コーチングをしなくても解決できる状態を目指す

コーチングというと、定期的に話を聞いてもらい続けるサービスを想像されるかもしれません。

しかし、私たちが目指しているのは、社員がコーチへ依存する状態ではありません。

コーチングを続けている間だけ前向きになり、何かあるたびに外部の人へ答えを求める状態では、社内に力が残らないからです。

最終的には、コーチングで介入しなくても、社員自身が次のように考えられる状態を目指します。

今、自分は何に困っているのか。なぜ負担を感じているのか。自分で変えられることは何か。誰に何を相談すればよいのか。会社へ伝えるなら、どのような言葉がよいのか。

そして、自分一人で解決することが難しいときには、抱え込まずに相談する。

相談は、問題を誰かに丸投げすることではありません。自分の考えや状況を整理したうえで、必要な力を借りる行動です。

この力が身につけば、コーチングが終了した後も、社員は社内で課題を見つけ、周囲と話し合いながら解決できるようになります。

コーチングの終了は、支援が途切れることではありません。社員が自分で考え、選び、行動できるようになった一つの成果だと考えています。

一人の自立が、チームの業務改善につながる

社員が自分の状態を理解し、自分から相談できるようになると、変わるのは個人の働きやすさだけではありません。

「この作業は毎回同じところで止まっている」

「確認する人が決まっていないため、判断に時間がかかっている」

「得意な人に業務が集中し、ほかの社員が経験を積めていない」

これまで何となく不便だと感じながら受け入れていたことにも、目が向くようになります。

そして、ただ不満を伝えるのではなく、

「このように変えたら進めやすくなるのではないか」

「まずはこの範囲で試してみたい」

と、提案できるようになります。

自分の強みや役割を理解すると、「会社から仕事を与えられる」という感覚から、「自分の力を使って、仕事や職場をより良くする」という感覚へ変わっていきます。

こうした社員が増えることで、管理職だけが課題を見つけ、改善策を考える組織ではなくなります。

現場にいる社員が気づき、提案し、周囲と協力して改善する。新しいことにも、小さく試しながら挑戦する。

その積み重ねによって、自ら動ける組織が育っていきます。

社員の意欲は、お客様にも伝わっている

社員がどのような気持ちで働いているかは、社内だけの問題ではありません。

自分の仕事の意味を理解し、より良くしようと考えている社員は、お客様の小さな困りごとにも気づきます。決められた対応をこなすだけでなく、相手にとって何が必要かを考えます。

社内で相談しやすく、改善提案が受け入れられる会社では、お客様への対応も少しずつ変わっていきます。

「この会社の人は、よく話を聞いてくれる」

「困ったときに、きちんと考えて対応してくれる」

「社員が前向きで、安心して任せられる」

お客様が会社に抱く印象は、広告やロゴ、Webサイトだけでつくられるものではありません。社員一人ひとりの言葉や判断、対応の積み重ねによってつくられます。

社員が自分の役割に納得し、主体的に仕事を良くしようとする姿勢は、その会社らしい価値としてお客様に伝わります。

それが、組織の内側から育つブランドだと私たちは考えています。

管理職が「察し続けなくてもよい組織」へ

企業向けコーチングの価値は、社員の満足度を高めることだけではありません。

社員自身が、自分の得意なことや苦手なこと、目指す方向を言葉にできる。困ったときには、自分から相談できる。課題を見つけたら、改善案と一緒に提案できる。

その状態がつくられると、管理職は社員の気持ちを常に推測し、先回りして解決し続ける必要がなくなります。

もちろん、管理職による対話や支援が不要になるわけではありません。

ただ、「上司が気づいてくれるまで待つ関係」から、「本人が自分の状態を伝え、一緒に考えられる関係」へ変わります。

管理職は、すべての悩みを背負うのではなく、社員から出てきた相談や提案をもとに判断できるようになります。そして、人のことで必要以上に気を回す時間を減らし、本来担うべき仕事やチーム全体の成長に集中できます。

私たちがつくりたいのは、外部コーチングがなければ成り立たない会社ではありません。

社員が自分を理解し、自ら言葉にし、社内で相談しながら前へ進める会社です。管理職も一人で抱え込まず、社員を信頼して役割を任せられる会社です。

Think for Designでは、社員一人ひとりの自己理解から、仕事での役割、やりがい、今後目指す方向性を整理するコーチングやワークショップを行っています。

社員の考えていることが見えず、管理職が対応に悩んでいる。1on1をしていても具体的な相談や提案が出てこない。社員が自分で課題を見つけ、行動できる組織に変えていきたい。

そのような企業様と一緒に、外部支援がなくなった後も自分たちで育ち続けられる組織をつくっていきます。

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