| 組織づくり
MBTIやストレングスファインダーを、社員を決めつける道具にしないために
企業研修でMBTIやストレングスファインダーなどの診断を取り入れると、これまで言葉にしにくかった自分の特徴を説明しやすくなります。
結果を見せ合いながら、話す時間も盛り上がりますよね。普段は仕事の話しかしない社員同士が、お互いの考え方や得意なことを知る。診断は、社内のコミュニケーションを増やすきっかけとして、とても使いやすいものだと思います。
一方で、使い方には少し注意が必要です。
診断結果をその人自身だと思ってしまうと、自己理解を深めるはずの取り組みが、かえって社員の可能性を狭めてしまうことがあるからです。
診断結果が「自分を説明する言葉」から「できない理由」に変わる
診断を受けた直後は、自分でも気づいていなかった強みを知り、前向きな気持ちになる方が多くいます。
ところが、時間が経つと結果だけが一人歩きすることがあります。
「内向的なタイプだから、営業は向いていない」
「調和性が高いから、リーダーには向いていない」
「共感性が低いから、人の気持ちを理解するのは苦手」
このように、自分の行動を診断結果に合わせて考えるようになると、本当は挑戦できたかもしれない仕事まで避けてしまいます。
周囲も同じです。「この人はこのタイプだから」と先回りして役割を決めれば、本人が別の力を伸ばす機会を奪ってしまうかもしれません。
分かりやすい言葉は、自己理解を助けてくれます。しかし、分かりやすいからこそ、人を固定して捉えやすくもなります。
診断はその人のすべてを表す答えではなく、自分を知るための入口として扱うことが大切です。
同じ強みでも、表れ方は一人ひとり違う
たとえ同じ資質やタイプが出たとしても、仕事での表れ方まで同じになるわけではありません。
例えば、人との調和を大切にする人がいたとします。
ある人は、会議で全員の意見を聞き、納得できる着地点をつくることに力を発揮します。別の人は、衝突を避けるために自分の意見を言えず、仕事を抱え込んでしまうかもしれません。
相手に寄り添うことが得意な人も、相談を受けて安心させる人、相手に合わせて説明方法を変える人、表情の変化から困りごとに気づく人では、実際に取っている行動が違います。
その違いを生むのは、これまでの経験や価値観、担当している仕事、周囲との関係、心理的な安心感などです。
強みは、本人の中に単独で存在しているものではありません。どのような環境で、誰と関わり、何を求められているかによって、発揮のされ方が変わります。
だからこそ、診断名を確認するだけでは、その人に合う役割までは決められません。
大切なのは、診断結果を実際の経験と結びつけること
診断を受けた後に考えたいのは、「当たっているか、外れているか」だけではありません。
その特徴が、実際の仕事でどのように表れているのかを振り返る必要があります。
例えば「責任感が強い」という結果が出たなら、どのような場面で責任感を発揮したのか。その行動によって、誰にどのような価値を届けられたのか。反対に、責任を感じすぎて苦しくなったことはなかったか。どのような環境なら、無理をせずに生かせるのか。
そこまで話して初めて、その人らしい強みが見えてきます。
「責任感がある人」という抽象的な言葉を、具体的な行動に変えていくのです。
「期限までに終わらせるだけでなく、周囲が困らないよう途中経過も共有している」
「問題が起きたときに放置せず、関係者へ確認して解決まで進めている」
「任された相手の期待を考え、必要な準備を先回りしている」
このように言葉にできると、本人も自分の力を再現しやすくなります。上司も、どのような仕事や役割で強みを生かせるのかを具体的に考えられます。
企業で取り入れるなら、結果を人事判断に直結させない
診断結果だけを見て、配置や昇進、チーム編成を決めることには慎重になる必要があります。
本人が「この回答によって評価や配属が変わるかもしれない」と感じれば、素直に答えにくくなります。また、結果を共有する範囲や目的が曖昧なままでは、自分の内面を会社に知られることへの不安も生まれます。
導入するときは、何のために受けるのか、結果を誰が見るのか、どのように使用するのかを事前に伝えることが大切です。
そして、診断後には結果を共有して終わるのではなく、本人の経験を振り返る対話の時間を設けます。
診断結果に違和感があれば、その感覚も尊重する。結果にない特徴が見つかっても、否定しない。社員同士で共有するときも、「このタイプだからこうだ」と決めつけず、「自分の場合は、仕事でこのように表れている」と話してもらう。
こうした進め方が、診断をラベリングではなく、相互理解に役立つものに変えていきます。
Think for Designは、社員を枠に当てはめません
Think for Designでも、自己理解を深めるために診断結果を参考にすることがあります。
ただし、診断名から「あなたはこういう人です」と決めることはしていません。
これまで充実していた仕事、成果を出せた場面、周囲から頼られたこと、苦しかった環境などを一緒に振り返ります。その中で繰り返されている行動や、力を発揮しやすい関係性、本人が大切にしている価値観を見つけていきます。
同じ診断結果を持つ人であっても、強みの使い方や必要な環境は違います。そのため、実際の業務や職場の状況に合わせて、「この人はどのようなときに自然に動けるのか」「何があると力を発揮しにくくなるのか」を具体的に言語化します。
目指しているのは、診断結果に自分を合わせることではありません。
自分のことを自分の言葉で理解し、必要なときに周囲へ伝えられるようになること。そして、今の職場で強みをどう生かすか、新しくどのような役割に挑戦するかを、自分で考えられるようになることです。
診断は、自分を知った気になるためのものではなく、自分をもっと丁寧に見ていくためのきっかけです。
企業で診断を取り入れる際も、結果を配って終わるのではなく、一人ひとりの経験や働く環境まで対話する時間をつくることで、社員の成長や役割づくりにつながる取り組みになると考えています。