新しく入った人が、数か月で辞めていく
採用がうまくいかないとき、原因を「入ってきた人」の側に置いてしまうことがあります。合わなかった、続かなかった、覚悟が足りなかった。でも実際は、受け入れる側の状態のほうが問題だったということが少なくありません。
僕が会社を始めて五年目のころ、それを一番きつい形で経験しました。
数字が伸びているときは内側が見えない
そのころ、スタッフは十数人になっていて、売上も結構いいところまで来ていました。数字だけ見れば、順調です。
ただ、数字が伸びているときって、内側の状態が見えないんですよね。売上のグラフは上がっている。人も増えている。だから、うまくいっていることになります。誰かがしんどいと思っていても、その気持ちはグラフには出てきません。
僕は毎日みんなの顔を見ていたはずなんですけど、それでも見えていませんでした。というより、見なくて済んでしまっていた、というほうが正確だと思います。
補充のための採用が続かなかった
そこから、人が辞め始めました。無理に会社を成長させたツケでした。仕事が増えて、みんな残業しないと回らない。僕も忙しくてサポートできない。話す時間も取れない。それで、みんな疲れてしまった。
人が辞めたので、補充のために採用します。でも、新しく入ってきた人も、数か月で辞めていくんです。
理由は、今なら分かります。入ってきた人が受け取ったのは、疲れきった職場と、山積みの仕事だったからです。教える余裕も、うちにありませんでした。だから辞めていく。そうすると、残った人がまた疲れる。
入ってくる人の側から見てみる
入ってくる人の側に立って考えると、当然だなと思います。
新しい職場に来て、周りの人がみんな余裕のない顔をしていて、質問していいのかどうかも分からない。仕事だけは初日から積まれている。そんな場所に、続けたいと思う理由がないんですよね。
そのころの僕は、その人が続かなかったことを、その人の問題のように受け取っていたと思います。そうではありませんでした。受け入れる側の状態の問題です。
ここを取り違えると、負のループが回り始めます。人が辞める。補充する。育てる余裕がないので、その人も辞める。残った人がさらに疲れる。しかも、そのループを回しているのは自分のほうです。
受け入れる余力は人数ではない
採用のときに考えるのは、たいてい人数です。何人辞めたから、何人採る。でも、続くかどうかを決めているのは人数ではなくて、受け入れる側に余力があるかどうかだと思います。
余力というのは、質問できる空気があるか。最初の一か月に、誰かが手を止めて教えられるか。困っていることを言える相手がいるか。そういうところです。
これは制度ではあまり動きません。研修を用意しても、教える人の手が空いていなければ機能しないので。
だから、人が続かない状態のまま採用を続けても、たいてい同じことが起きます。先に直すのは、受け入れる側の余力のほうです。
数字が良いときほど聞いておく
もう一つ思うのは、内側の状態は数字が悪くなってから見えるのでは遅い、ということです。
僕の場合、売上が伸びているあいだは、しんどさが数字のどこにも出ませんでした。出てきたのは、人が辞め始めてからです。そのときにはもう、余力がありません。
数字が良いときほど、聞いておく。今どのくらい余裕がありますか、と。うまくいっているときに聞くのは、なんとなく気が引けるんですけど、聞けるのはそのタイミングだけだと思います。
人が育つ場所というのは、教える仕組みがある場所というより、教える余力が残っている場所なのかもしれません。