「強みを聞いたけれど、何も出てこなかった」会社に必要な人生分析
社員の強みや意欲を知るために、過去の経験を振り返り、その人の強みや得意なこと、興味のあることを見つけていく。
こうした面談をしている会社も増えています。
ただ、実際にやってみると、
「聞いてみたけれど、あまり話が出てこなかった」
「本人もやりたいことが分からないと言っていた」
「結局、強みがよく分からなかった」
となることがあります。
でもそれは、本当に「その人の中に何もない」のでしょうか。
会社が知りたいことを聞くと、面談になってしまう
社内で人生分析をしようとすると、どうしても会社側には目的があります。
「この人の強みを、この仕事に活かせないだろうか」
「もっと意欲的に働いてもらうにはどうしたらいいだろう」
「次のリーダー候補になれないだろうか」
もちろん、会社として考えるべき大切なことです。
ただ、その目的を持ったまま話を聞いていると、無意識のうちに「会社にとって使えそうな話」ばかりを拾ってしまうことがあります。
例えば、
「昔から絵を描くのが好きでした」
と言われたときに、
「じゃあ、社内報のデザインとか興味ある?」
と、すぐ仕事につなげる。
「部活では後輩の相談に乗ることが多かったです」
と聞いて、
「マネジメントに向いているかもしれないね」
と結論づける。
一見、強みを引き出しているように見えます。
でも、人生分析でやりたいのは、そこではありません。
「なぜ絵を描くのが好きだったのか」
「後輩の相談に乗っているとき、どんな気持ちだったのか」
その人自身に興味を持って、もう少し奥まで聞いていきます。
人生分析では「温度感の高いところ」を聞く
人生分析は、基本的に相手の話を聞く時間です。
私たちが行う場合は、約60分。
子どもの頃から現在までの経験を振り返りながら、その人が楽しそうに話すところ、悔しそうに話すところ、急に言葉が増えるところなど、感情の温度が上がるポイントを探していきます。
そして、その場所をもう少し聞いていく。
「それの何が楽しかったんですか?」
「どうしてそこまで頑張れたんでしょう?」
「逆に、何がそんなに嫌だったんですか?」
「そのとき、本当はどうしたかったですか?」
最初から「強み」を探しにいくのではありません。
話を聞いているうちに、
「この人は、自分で工夫できる環境だと力を発揮するんだな」
「人に教えることより、相手ができるようになる瞬間が好きなんだな」
「成果そのものより、自分のアイデアが形になることに喜びを感じる人なんだな」
と、その人を動かしている価値観や強みが少しずつ見えてきます。
だから人生分析では、聞くことがほとんどの時間になります。
「何も引き出せなかった」は、本人の問題とは限らない
人生分析をして、
「何も出てこなかった」
と感じることもあるかもしれません。
でも、そのとき少し考えてみてほしいことがあります。
本当に相手の中に何もなかったのでしょうか。
それとも、
こちらが想定していた答えにたどり着かなかっただけでしょうか。
「この仕事に興味を持ってほしい」
「もっと主体的になってほしい」
「このポジションを目指してほしい」
そんな会社側の期待を持ったまま質問すると、会話はどうしてもその方向へ進んでいきます。
そして期待していた答えが出なければ、
「本人にやりたいことがない」
「強みを引き出せなかった」
と感じてしまう。
けれど本人からすれば、それは自分について自由に話した時間ではなく、会社との面談だったのかもしれません。
強みを「仕事に活かす」のは、そのあと
人生分析の目的は、過去を振り返って終わることではありません。
その人が何を大切にしているのか。
どんな環境で力を発揮するのか。
何に夢中になれるのか。
どんな関わり方を心地よいと感じるのか。
そこが分かって初めて、
「では、今の仕事でこの強みをどう活かせるだろう」
「どんな役割なら力を発揮できそうだろう」
「どんな関わり方をすると、この人は動きやすいだろう」
「今後どんなポジションを考えられるだろう」
という、会社での活かし方を考えられるようになります。
会社に活かすために人生を聞くのではなく、
まず、その人を知る。
そのあとで、会社との接点を探す。
この順番がとても大切です。
まずは60分、「会社の立場」を置いて話を聞いてみる
もし社内で人生分析をやってみたけれど、
「何も引き出せなかった」
「うまく深掘りできなかった」
と感じているなら、一度「会社として何を引き出したいか」を横に置いてみてください。
そして60分、その人の話を聞くことを中心にしてみる。
答えを仕事につなげようと急がず、相手が話したそうなところを聞いていく。
相手の価値観や感情に合わせて、安心して話せる状態をつくる。
それだけでも、これまでの面談では見えなかった一面が出てくるかもしれません。
一方で、上司が部下に対して完全に「会社の立場」を外すことは簡単ではありません。
評価する人と評価される人という関係があれば、社員側も話す内容を無意識に選びます。
また、一人ひとりに60分かけて話を聞くことが現実的ではない会社もあるでしょう。
その場合は、無理に社内だけで完結させなくてもいいですし、むしろ第三者だから話せることがあります。
会社とは違う立場からその人の人生を聞き、価値観や強みを整理したうえで、本人の同意や適切な範囲を踏まえながら、仕事でどう活かせるかを考えていく。
Think for Designでは、そんなところから「人が育つ組織」を考えています。