心配性の社員に「考えすぎ」と言っても、不安は減らない
「まだ起きていないことまで考えて、不安になってしまう」
「準備しても準備しても、本当に大丈夫なのか心配になる」
「新しい仕事を任されても、失敗する場面ばかり想像してしまう」
コーチングでお話を伺っていると、このような不安を抱えている方は少なくありません。
周囲から見ると、「そこまで心配しなくても大丈夫なのに」と感じるかもしれません。本人も、頭では「考えても仕方がない」と分かっていることがあります。
それでも、不安は簡単には止まりません。
不安を抱えやすい人に必要なのは、「考えすぎないように」という言葉だけではないと、私は思っています。
まず、自分はどのようなことに不安を感じやすいのかを知ること。そして、不安があっても小さく行動し、「思っていたよりも大丈夫だった」という経験を積んでいくことが大切です。
不安になる理由には、その人なりのパターンがある
不安の内容は人によって異なりますが、何度も話を聞いていくと、その人が不安になりやすいテーマには一定の傾向が見えてきます。
例えば、次のようなものです。
- 生活していけるか、収入が減らないかという「お金の不安」
- 嫌われないか、迷惑をかけないかという「人間関係の不安」
- 仕事が終わるか、間に合うかという「時間の不安」
- 自分にできるか、失敗しないかという「能力や自信への不安」
- この選択でよいのか、後悔しないかという「将来への不安」
- 体調を崩さないか、長く働けるかという「健康への不安」
新しい出来事が起こるたびに別の不安が生まれているように見えても、根本には共通する思考がある場合があります。
例えば、人間関係の不安が強い人には、
「相手を不快にさせてはいけない」
「頼まれたことを断ったら、嫌われる」
「分からないことを聞くと、能力がないと思われる」
といった考えが浮かびやすいかもしれません。
自信に関する不安が強い人は、
「完璧にできなければ、任せてもらった意味がない」
「一度失敗したら、評価が下がる」
「周囲の人はできているのに、自分だけできていない」
と考えやすいことがあります。
不安そのものを問題にする前に、自分がどのような場面で、何を恐れ、どのような結論を出しやすいのかを知ることが大切です。
不安の中には、今考えても答えが出ないものがある
不安になったとき、人は安心できる答えが出るまで考え続けようとします。
しかし、考えることで解決できる不安と、今は答えを出せない不安があります。
例えば、
「来月のプレゼンに向けて、資料の準備が足りない」
という不安であれば、準備の予定を立てたり、上司に内容を確認してもらったりできます。
一方で、
「プレゼンで失敗して、評価が下がり、その後も仕事を任せてもらえなくなったらどうしよう」
という不安は、今の時点では確かめられません。
ほかにも、
「転職したら人間関係が悪いかもしれない」
「新しい役割を引き受けても、自分には向いていないかもしれない」
「意見を言ったら、上司に嫌われるかもしれない」
といったことは、実際に行動してみなければ分からない部分があります。
それでも確実な答えを出そうと考え続けると、不安が解消されないだけでなく、疲労がたまります。その結果、行動するための力まで失ってしまうことがあります。
「事実」と「予測」を分けてみる
不安になったときは、頭の中に浮かんでいることを、次の3つに分けてみます。
1.今、実際に起きている事実
2.自分が予測していること
3.今できること
例えば、新しい業務を任されて不安を感じている社員がいたとします。
事実は、「来月から新しい業務を担当する」「未経験の作業が含まれている」ということです。
一方で、
「失敗して周囲に迷惑をかける」
「仕事ができない人だと思われる」
「担当から外される」
という部分は、まだ起きていない予測です。
そのうえで今できることを考えると、
- 業務の目的と求められる成果を確認する
- 分からない点を事前に書き出す
- 経験者に注意点を聞く
- 最初の一回は途中で確認してもらう
- 困ったときの相談先を決めておく
といった行動が見つかります。
不安を感じないようにするのではなく、今対応できる部分だけを具体的な行動へ変えることがポイントです。
不安の解消には、時間がかかることもある
一人ひとりが抱えている不安の要素を書き出し、その背景にある考え方を整理し、一つずつ行動を変えていく。
これは、気が遠くなるような取り組みに感じるかもしれません。
長い間身につけてきた思考や感情の癖が、数回の対話ですべてなくなるわけではありません。
また、一つの不安を乗り越えても、新しい役割や環境に入れば、別の不安が出てくることもあります。
けれど、目指したいのは、二度と不安を感じない状態ではありません。
「私は、このような場面で不安になりやすい」
「今考えても分からないことまで考えている」
「まずは、ここまでやってみよう」
と、自分で気づき、対処できる状態です。
その力は、今後長く働いていくうえで、その人を支える土台になります。
不安を抱えたまま働くと、仕事にも影響する
不安は本人の内側だけで起きているように見えますが、業務にもさまざまな影響を与えます。
失敗が怖くて、何度も確認する。
相談することが怖くて、報告が遅れる。
評価が心配で、仕事を抱え込む。
人間関係が気になり、必要な意見を言えない。
決断に自信が持てず、行動を始めるまでに時間がかかる。
本人は真面目に取り組んでいても、不安への対応に多くのエネルギーを使っているため、本来取り組みたい課題へ集中できなくなることがあります。
反対に、不安を整理し、必要な相談や行動ができるようになると、判断や共有が早くなります。
考えるべき課題に集中でき、業務もスムーズに進みやすくなります。
不安への支援は、社員の気持ちを楽にするだけではありません。仕事の進め方やコミュニケーションを整え、結果として生産性の向上にもつながる取り組みです。
不安の正体を整理し、小さな行動につなげます
Think for Designでは、ワークショップやコーチングを通して、一人ひとりがどのような場面で不安を感じやすいのか、その背景にどのような思考や感情の癖があるのかを整理します。
自己理解だけで終わらせず、本人に合ったスモールステップを一緒に考え、実際の仕事で「やってみたら大丈夫だった」という経験につなげていきます。
また、社員本人に変化を求めるだけではなく、役割の明確化や仕事の任せ方、相談しやすい関係づくりなど、会社側に必要な環境についてもご提案します。
社員の不安や自信のなさに、社内だけで対応することが難しい。本人の働きやすさと、生産性の両方を整えたい。そのような企業様は、ぜひThink for Designへご相談ください。