人材育成

[支援事例]やる気を失っていた社員が、辞めずに新しい役割を見つけるまで

社員のモチベーションが下がっていると、「仕事に対する意欲が足りない」「本人にやりたいことがない」と思われることがあります。

けれど、実際に話を聞いてみると、本人の意欲そのものが失われているとは限りません。

自分の強みを生かせる場面がない。今の仕事が何につながっているのか分からない。職場では知られていない関心や得意なことがある。

こうした状態が続いた結果、仕事に意味を感じられなくなっていることがあります。

今回は、自己理解を通して自分の強みや価値観を知り、今いる職場で新しい目標や役割を見つけた3名の事例をご紹介します。

成長できない苦しさを抱えていた、ホテルのフロントスタッフ

ホテルでフロント業務を担当していた方は、日に日に仕事への不満が大きくなっていました。

決められた業務を繰り返す毎日にやりがいを感じられず、自分が成長している実感も持てない。仕事そのものが自分に合っていないのではないかと考えるほど、モチベーションが下がっていました。

しかし、これまでの仕事について一緒に振り返ってみると、この方には高い成長意欲と責任感がありました。

言葉遣いが丁寧で、お客様の様子やその場の状況を見ながら、対応を変えることも得意でした。任された仕事を中途半端にせず、最後まで責任を持って取り組む姿勢もあります。

本人にとっては「接客業なら当たり前のこと」でしたが、具体的な経験まで振り返ると、それは誰にでも同じようにできることではありませんでした。

モチベーションが低かったのは、意欲がなかったからではない

この方が苦しくなっていた理由は、接客が嫌いだったからではありません。

本来は、自分で状況を判断しながら臨機応変に動くことで力を発揮する方です。しかし当時は、決められた対応を繰り返すことが多く、自分なりに考えたり工夫したりできる範囲が限られていました。

さらに、その先に目指したい役割も見えていませんでした。

成長意欲が高いからこそ、変化や目標のない状態が苦しかったのです。

自己理解を通して強みを言語化すると、本人から「接客をより良くするための研修を行い、スタッフの対応力を高める仕事がしたい」という希望が出てきました。

そこで、これまで培ってきた言葉遣いや対応力を生かし、将来はスーパーバイザーとして活動したいことを会社へ伝えました。

単に「昇進したい」と申し出たのではありません。

自分にはどのような強みがあり、その力を使って職場にどのような貢献ができるのかまで整理して伝えたことで、会社にも本人の可能性が伝わり、実際に昇進することになりました。

モチベーションの低さは、本人のやる気の問題ではありませんでした。次に目指せる場所と、自分の力の使い道が見えていなかったのです。

職場へ行くことが怖くなっていた、新卒のパティシエ

新卒でパティシエとして働き始めた方は、先輩から教わる業務についていくことで精いっぱいでした。

覚えることが次々にあり、目の前の仕事をこなすだけで一日が終わる。次第に「このまま働き続けてよいのだろうか」と悩むようになり、職場へ行くことにも怖さを感じ始めていました。

この状態で、すぐに前向きな目標を考えることは難しいものです。

まずは、仕事の何がつらいのか、どのようなことを怖いと感じているのかを、安心して言葉にするところから始めました。

話を重ねながら自己理解を進めていくと、この方はお菓子を作ること自体も好きでしたが、それ以上に、目の前のお客様が喜んでくれる姿を見ることにやりがいを感じる方だと分かりました。

相手の表情や言葉から気持ちを汲み取り、「この人はどのようなものが好きだろう」と予測することも、無意識にできていました。

仕事でも人生でも、人との関係を大切にしたいという価値観を持っていたのです。

将来の目標が、今の仕事の意味を変えた

当時は、作る技術を覚えることに追われ、目の前の業務と「お客様に喜んでもらうこと」がつながっていませんでした。

しかし、経験を積んだ先には、お客様の希望を聞きながらウェディングケーキを提案し、制作する仕事があります。

その仕事について考えたとき、本人の中に初めて具体的な目標が生まれました。

「いつかお客様と直接話し、その方の好みや思いを汲み取りながら、ウェディングケーキを提案できるようになりたい」

この目標が見つかると、今教えてもらっている仕事の意味も変わりました。

これまで「こなさなければならない」と感じていた作業が、理想の仕事をするために必要な技術だと捉えられるようになったのです。

先輩に教えてもらえることにも感謝を感じ、自分からコミュニケーションを取ろうと思えるようになりました。

職場や業務内容が急に変わったわけではありません。自分が目指す未来と今の仕事がつながったことで、仕事に向き合う気持ちが変わりました。

「仕事は仕事」と割り切っていた事務職の社員

事務職として働いていた方は、就職した当初から仕事に強いモチベーションを持っていたわけではありませんでした。

職場を選んだ理由は、家から近かったから。両親も安定した事務職に就くことを望んでいました。

必要な仕事はきちんとこなしていましたが、自分から職場の人と積極的にコミュニケーションを取ることはありませんでした。

「仕事は仕事」と割り切り、大きな不満もなければ、特別なやりがいもない。そんな状態でした。

自己理解を進めると、この方は周囲との調和を大切にし、人に喜んでもらうことで意欲が高まる人だと分かりました。

そこで、仕事だけに限定せず、これまで「やってよかった」「喜んでもらえてうれしかった」と感じた経験を振り返りました。

その中で出てきたのが、友人のためにウェディングボードを制作した経験です。

友人が喜んでくれたことがうれしく、それをきっかけに、本人はデザインを学び始めていました。

ところが、職場ではそのことを誰にも話していませんでした。自分の趣味や関心を仕事中に話す必要はないと思っていたのです。

知られていなかった強みが、新しい仕事になった

私はまず、話しやすい相手に、デザインを学んでいることを伝えてみるよう提案しました。

実際に同僚へ話してみると、とても驚かれたそうです。普段、自分から仕事以外のことを話してこなかったため、そのような得意分野があることを周囲は知りませんでした。

その会話をきっかけに、職場で使う簡単な制作物を任せてもらえるようになりました。

制作物は上司からも評価され、少しずつデザインに関わる業務が増えていきました。やがて、以前は退屈に感じていた事務業務の多くを、デザイン制作に充てられるようになったのです。

学んできたことを仕事で試し、制作したものによって職場の人に喜んでもらえる。その経験が、さらに学びたいという意欲にもつながりました。

本人には、最初から何もなかったわけではありません。

興味も、学んでいることも、人に喜んでもらいたいという原動力も、すでに本人の中にありました。ただ、それを職場で生かせる可能性に、本人も会社も気づいていなかったのです。

自己理解によって変わったのは、本人の気持ちだけではない

3名に共通していたのは、最初から意欲がなかったのではなく、「自分がどのようなときに力を発揮できるのか」が分からなくなっていたことです。

ホテルのフロントスタッフには、接客経験と対応力を人材育成に生かす役割が見つかりました。

新卒のパティシエは、目の前の技術習得と、将来担当したいウェディングケーキの提案を結びつけられました。

事務職の社員は、職場では知られていなかったデザインへの関心を伝え、新しい業務を任されるようになりました。

自己理解によって、ただ前向きな気持ちになったわけではありません。

自分の強みや価値観を言葉にし、それを職場でどう生かすか考えたことで、役割や目標、周囲との関係にも変化が生まれました。

社員の強みは、職場で見えているものだけではない

会社が普段見ているのは、現在任せている仕事に取り組む社員の姿です。

そのため、今の業務で使っていない強みや、仕事以外で学んでいること、本人が心からやりがいを感じる瞬間までは見えないことがあります。

本人自身も、自分の力を強みだと認識していない場合があります。

丁寧な言葉遣いも、相手の好みを想像することも、誰かのためにデザインすることも、本人にとっては当たり前の行動だからです。

しかし、過去の経験を具体的に振り返り、繰り返し現れている行動を見つけると、その人らしい強みが見えてきます。

そして、その強みを現在の仕事や会社の課題と結びつけることで、今までになかった役割が生まれることがあります。

社員のモチベーションを上げる前に、力の使い道を一緒に探す

社員の意欲が下がっているとき、新しい目標を与えたり、励ましたりするだけでは変化が起きないことがあります。

本人にとって意味のある目標でなければ、また「会社から与えられたもの」になってしまうからです。

大切なのは、その人が何を大切にしていて、どのようなときに自然と力が湧き、どのような形で人や会社に貢献したいのかを知ることです。

Think for Designでは、社員一人ひとりの強み、価値観、関心、目指したい姿を整理し、現在の仕事や社内で担える役割との接点を見つけるコーチングやワークショップを行っています。

社員のモチベーション低下に悩んでいる、本人の希望や強みを把握できていない、退職を考える前に社内でできる支援を探したい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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