「辞めたい」と言われてからでは遅い。離職の前に現れる小さなサイン
written by apricot
私自身、美容業界で働く中で、6回の転職を経験しています。
振り返ってみると、どの職場でも突然「辞めよう」と思ったわけではありませんでした。
最初は、本当に小さな違和感です。
以前なら気にならなかったことに疲れるようになったり、仕事へ向かうことが少しずつ重くなったり、「この働き方を何年も続けられるのだろうか」と考える時間が増えたり。
それでも、すぐに退職を決めるわけではありません。
「どこの会社へ行っても同じかもしれない」
「もう少し頑張れば慣れるかもしれない」
「周りの人も大変なのだから、自分だけ弱音を吐いてはいけない」
そんなふうに何度も自分を納得させながら働きます。
会社へ退職を伝える頃には、本人の中では何か月も、場合によっては何年も迷い続けていることがあります。
会社から見れば突然の退職でも、本人にとっては、ずっと考えてきた末の結論なのです。
辞める前に、社員の様子は少しずつ変わっている
退職を考えている社員が、分かりやすく不満を口にするとは限りません。
むしろ、それまで熱心に仕事をしていた人が、何も言わなくなることがあります。
会議で発言しなくなった。
頼まれた仕事以外はやらなくなった。
同僚との雑談が減った。
困っていても相談しなくなった。
こうした変化は、「最近やる気がない」「以前より消極的になった」と見えるかもしれません。
けれど、本人は意欲を失ったのではなく、これ以上傷つかないために距離を取っていることがあります。
何度も改善案を伝えたけれど、聞いてもらえなかった。
困っていると相談したけれど、「みんな大変だから」と終わってしまった。
期待に応えようと仕事を引き受け続け、もう余裕が残っていない。
その結果、「何を言っても変わらない」「これ以上頑張らない方がいい」と思うようになっているのかもしれません。
以前より発言が減った社員に対して、積極性を求める前に、一度考えてみてほしいことがあります。
その人は、なぜ話さなくなったのでしょうか。
以前は、どのような思いで意見を伝えていたのでしょうか。
何かを諦めるような出来事はなかったでしょうか。
今見えている行動だけではなく、そこに至るまでの経緯を見ることが大切です。
頑張り続けている人ほど、変化に気づかれにくい
仕事がつらくなっても、すぐに成果が落ちるとは限りません。
真面目な人や責任感の強い人は、苦しいときほど周囲に迷惑をかけないように振る舞います。いつもどおり仕事を終わらせ、笑顔で会話をし、「大丈夫です」と答えます。
表面上は仕事ができているため、周囲も本人の変化に気づきにくくなります。
けれど、仕事を終えた後は何もする気力が残っていない。休日も仕事のことを考えてしまう。以前なら楽しめていたことに興味を持てなくなる。
そうした状態が続き、限界を迎えてから、初めて退職を申し出ることがあります。
「仕事ができているから大丈夫」とは限りません。
成果だけでは見えない変化もあります。
最近、休憩を取れているか。仕事以外の話をする余裕があるか。以前より確認が増えていないか。反対に、まったく相談しなくなっていないか。
普段の様子を知っているからこそ気づける、小さな変化があります。
「辞めたい」は、会社を嫌いになったという意味ではない
退職を考えていると聞くと、会社や上司に不満があるのではないかと受け止めがちです。
もちろん、職場への不満が理由になることもあります。
ただ、実際にはもう少し複雑です。
仕事にはやりがいを感じているけれど、結婚や出産後も同じ働き方を続けられるのか不安。今の上司や同僚は好きだけれど、この先どのように成長できるのかが見えない。会社を辞めたいというより、現在の役割から離れたい。
このように、「会社が嫌だから辞めたい」とは言い切れないケースもあります。
本人自身も、自分が何を変えたいのか分かっていないことがあります。そのため、転職すればすべて解決するように感じてしまうのです。
私自身も転職を繰り返していた頃は、「もっと自分に合う会社があるはず」と考えていました。
けれど、自分が何を大切にしているのか、どのような環境で力を発揮できるのかが分からないまま環境だけを変えていたため、転職先でも似たような悩みにぶつかることがありました。
環境を変えることが必要な場合もあります。
でもその前に、本人が本当に変えたいのは何なのかを整理する時間が必要です。
「辞めるか、我慢するか」の間にも選択肢はある
社員が今の働き方に悩んでいるとき、選択肢が「退職する」か「このまま我慢する」かの二つしか見えなくなることがあります。
けれど、話を整理してみると、その間にもできることが見つかります。
仕事のすべてが合わないのではなく、一部の業務に強い負担を感じているなら、役割分担を見直せるかもしれません。
将来が見えないことが不安なら、今後経験できる仕事や、社内で目指せる役割について話し合うことができます。
働く時間に悩んでいるなら、制度の有無だけではなく、実際にどのような調整が可能かを確認できます。
上司との関係に悩んでいる場合も、相手を変えることは難しくても、報告の方法や相談のタイミング、間に入る人を変えることで働きやすくなるかもしれません。
すべての希望を会社でかなえられるとは限りません。
それでも、本人が何に困っているのかが分からなければ、会社も選択肢を出すことができません。
離職防止は、社員を引き止めることではない
「離職防止」と聞くと、退職しようとしている社員を何とか会社に残すことのように感じるかもしれません。
けれど、私は、無理に引き止めることが離職防止だとは考えていません。
大切なのは、本人が限界になる前に、自分の状態や望んでいることを整理できることです。
そして会社も、本人が何に悩み、何を変えたいと考えているのかを知り、社内でできることと難しいことを率直に話し合うことです。
対話をした結果、今の会社で働き続ける方法が見つかることもあります。反対に、本人にとって環境を変える方がよいと分かることもあります。
どちらの結論になったとしても、自分の気持ちが分からないまま限界まで働き、ある日突然すべてを手放すのとは違います。
本人が納得して選択できれば、退職する場合も、必要な引き継ぎや周囲との対話を行いやすくなります。会社側も、その経験から組織の課題を振り返ることができます。
一人の退職を、個人だけの問題で終わらせない
ある社員が退職したとき、「本人の希望だから」「うちの会社とは合わなかった」と終わらせてしまうと、同じことが繰り返される可能性があります。
その人が感じていた働きにくさは、ほかの社員も抱えているかもしれません。
評価の基準が分からない。
一部の人に仕事が集中している。
今後のキャリアを相談できる相手がいない。
制度はあるけれど、実際には利用しにくい。
このような課題は、一人の努力だけでは解決できません。
個別の対話を通して共通する傾向を見つけ、仕事の設計や管理職の関わり方、評価や制度の運用を見直すことが必要です。
退職者を出さないことだけを目標にするのではなく、社員が違和感を小さいうちに伝えられ、会社も早い段階で対応を考えられる状態をつくる。
その方が、社員にとっても会社にとっても、無理のない離職防止につながると思います。
小さな違和感を話せる場所をつくる
退職の意思が固まってから、本人の気持ちを変えることは簡単ではありません。
だからこそ、「辞めたい」という言葉になる前の段階で話せる場所が必要です。
まだ何に困っているのか分からない。
転職したいわけではないけれど、このまま働くことに不安がある。
仕事は続けたいけれど、今の役割には疲れている。
そのような曖昧な状態でも話してよい場所があれば、本人は選択肢を失う前に立ち止まれます。
Think for Designでは、社員一人ひとりが、自分の状態や価値観、強み、これから望む働き方を整理できる個別コーチングを行っています。
社員の話を聞いて終わりにせず、個人が特定されない形で組織全体の傾向を整理し、経営者や管理職と、役割や働く環境の改善について考えます。
「辞めたい」と言われて初めて社員の悩みを知ることが続いている。社員の小さな変化に、どのように対応すればよいか分からない。
そのような企業様は、問題が大きくなる前に、一度ご相談ください。