不満はないのに辞めていく。転職相談でいちばん多い理由
転職の相談を受けていると、
「今の会社に、そこまで大きな不満があるわけではないんです」
と話す方がいます。
人間関係が悪いわけでもなく、仕事がものすごくつらいわけでもない。それでも求人サイトを見たり、ほかの会社で働くことを考えたりしている。
では、なぜ転職したいのかと聞くと、
「このまま今の仕事を続けていていいのか分からない」
という言葉が出てきます。
今が嫌なのではなく、この先が見えない。
来年も同じ仕事をしているのだろうか。経験を積んだ先には、どのような役割があるのだろうか。年齢や生活環境が変わったときにも、この働き方を続けられるのだろうか。
先が見えない状態が続くと、現在の仕事に問題がなくても、「ほかの会社へ行けば何か変わるかもしれない」と思うようになります。
退職を考える背景には、現在への不満だけではなく、未来への不安が隠れていることがあります。
会社が示すキャリアと、本人が望む未来は同じとは限らない
会社が社員の将来を考えるとき、昇進や昇格を中心にキャリアを示すことがあります。
一般社員として経験を積み、主任や係長になり、いずれは管理職を目指す。
分かりやすいキャリアの道筋ですが、すべての社員が管理職を望んでいるわけではありません。
専門性を高め、困ったときに頼られる存在になりたい人もいます。後輩を育てることにやりがいを感じる人もいれば、お客様と長く関係を築くことを大切にしたい人もいます。
生活とのバランスを保ちながら、安定して働き続けたいという希望も、立派なキャリアの考え方です。
会社が用意したキャリアパスに本人を当てはめるだけでは、本人にとって魅力のある未来にならないことがあります。
大切なのは、会社として示せる選択肢と、本人が望んでいる生き方や役割を重ねて考えることです。
仕事だけで将来を考えると、本当の希望が見えにくい
キャリアについて考えるとき、仕事内容や役職、収入だけに注目しがちです。
けれど、働くことは人生の一部です。
結婚や出産を望んでいる人もいれば、家族の介護を見据えている人もいます。趣味や地域とのつながりを大切にしたい人もいます。健康を守りながら、長く働くことを最優先にしたい人もいます。
例えば、「管理職にはなりたくない」と話している社員がいたとします。
その言葉だけでは、成長意欲が低いように見えるかもしれません。
しかし、詳しく聞いてみると、現在の管理職が遅くまで働いている姿を見て、「管理職になったら家庭との時間を持てなくなる」と感じている可能性があります。
管理職の仕事自体が嫌なのではなく、その役割に付随する働き方に不安を感じているのです。
本人が望む暮らしまで含めて話を聞くことで、何を避けたいのか、どのような条件なら挑戦したいと思えるのかが見えてきます。
社員のキャリアを考えることは、仕事上の目標だけを決めることではありません。
その人がこれからどのように生き、どのように働きたいのかを知ることから始まります。
希望を聞くことは、すべてを約束することではない
社員の希望を聞くことに対して、会社側が不安を感じることもあります。
希望どおりの部署へ異動させられないかもしれない。新しい役職を用意できないかもしれない。働き方についても、すべての要望には応えられない。
「実現できないなら、最初から期待を持たせない方がよい」と考える場合もあるでしょう。
けれど、社員の希望を聞くことは、そのすべてをかなえる約束をすることではありません。
本人が望んでいることを知り、会社で実現できることと、今は難しいことを率直に伝える。そのうえで、現在の環境でも経験できることを一緒に探します。
すぐに異動はできなくても、興味のある仕事の一部を経験できるかもしれません。希望する役割に必要なスキルを、今の業務で身につけられるかもしれません。
本人の希望と会社の事情を隠さずに話し合うことが、現実的なキャリア支援です。
すべてをかなえられなくても、「自分の未来を一緒に考えてもらえた」という経験は、会社への信頼につながります。
キャリアコーチングは、転職のためだけにあるものではない
キャリアコーチングというと、「転職したい人が受けるもの」という印象を持つ方もいるかもしれません。
しかし、本人が自分の未来を整理した結果、「今の会社だからできること」に気づく場合があります。
会社を辞めたいと思っていたけれど、本当に変えたかったのは仕事内容だった。
成長できないと思っていたけれど、今の仕事で何を身につけたいのかを自分で決めていなかった。
将来が不安だったけれど、上司と働き方について話したことがなかった。
自分の望む未来が分かることで、転職以外の選択肢が見えてくることがあります。
もちろん、整理した結果、環境を変える選択をする人もいます。
大切なのは、何となく不安だから転職するのではなく、自分が何を望み、そのために何を選ぶのかを納得して決められることです。
「この会社で働き続けたい」を、対話からつくる
社員に長く働いてもらうために、会社の魅力だけを伝えても十分ではありません。
社員自身が、今後どのように生きたいのかを知り、その未来と現在の仕事をつなげられることが必要です。
会社に残る理由は、会社が一方的に与えるものではありません。
本人が大切にしたいことと、会社で経験できることが重なったとき、「ここで働き続ける意味」が生まれます。
Think for Designでは、社員一人ひとりの人生ビジョンやキャリアビジョンを整理し、現在の仕事、これから身につけたい力、社内で担える役割との接点を一緒に考えます。
社員へ会社のキャリアパスを示すだけではなく、本人が望む未来を知り、会社の中で選べる道を増やしていく。
社員がこの会社で働き続ける未来を描けていない、若手にどのようなキャリア支援をすればよいか分からないと感じている企業様は、ぜひ一度ご相談ください。