人材育成

「最初からやる気がない社員」は、この先も変わらないのか

入社時から仕事へのモチベーションが高い人もいれば、「家から通いやすかったから」「条件が合っていたから」「家族に勧められたから」という理由で会社を選ぶ人もいます。

後者のような社員を見ていると、

「そもそも、この仕事に興味がないのでは」
「本人にやりたいことがないから、成長も期待できないかもしれない」

と感じることがあるかもしれません。

たしかに、入社時点で仕事への思いや目標が明確な社員は、自分から学び、積極的に行動しているように見えます。

一方で、最初から強い志望動機がなかった社員は、指示された仕事を淡々とこなし、自分から意見を出すことも少ないかもしれません。

でも、入社したときのモチベーションが、その後の働き方をすべて決めるわけではありません。

好きで始めた仕事でも、ずっと好きでいられるとは限らない

好きなことを仕事にした人や、憧れていた会社に入った人であっても、入社時のモチベーションをずっと同じ強さで維持できるわけではありません。

仕事に慣れて刺激が少なくなることもあれば、思うような成果が出ず、自信を失うこともあります。人間関係や働き方が合わなければ、好きだった仕事そのものまで嫌になってしまうこともあります。

「好きで始めた」という気持ちは、働き始めるための力にはなります。

しかし、その気持ちだけで、何年も仕事を続けられるわけではありません。

それにもかかわらず、最初からやりたいことが明確ではなかった社員に対しては、「もともと意欲がない人」と判断してしまうことがあります。

好きで始めた人の気持ちは変わることがあるのに、好きではない状態で始めた人は、この先も変わらないと考えてしまう。

これは、少し不思議な捉え方だと思います。

仕事を好きになるきっかけは、働いたあとに生まれる

仕事へのモチベーションは、入社前に完成しているものではありません。

実際に仕事をする中で、少しずつ育っていくことがあります。

最初は言われたとおりに行っていた仕事でも、お客様から「ありがとう」と言われたことで、自分の仕事が誰かの役に立っていると気づく。

以前は時間がかかっていた業務を、少し早く終えられるようになり、成長を感じる。

仕事に慣れて気持ちに余裕ができ、周囲の状況やお客様の反応まで見られるようになる。

自分が工夫したことを上司に認めてもらい、「もう少しやってみよう」と思える。

このような小さな経験を重ねたときに、初めて「この仕事、意外と楽しいかもしれない」という感情が生まれることがあります。

最初から仕事そのものが好きなのではなく、誰かの役に立てた経験や、自分の成長を実感した経験を通して、仕事への見方が変わっていくのです。

「できる」が増えると、仕事の見え方も変わる

仕事を始めたばかりの頃は、覚えることに精いっぱいです。

一つひとつの業務を間違えないようにするだけで余裕がなく、自分なりに工夫したり、仕事の意味を考えたりするところまで気持ちが向かないこともあります。

その状態の社員を見て、「楽しそうではない」「言われたことしかやらない」と評価するのは、少し早いかもしれません。

仕事に慣れてくると、周囲を見る余裕が生まれます。

「この順番にした方が早く終わりそう」
「この説明では、お客様に伝わりにくいかもしれない」
「先輩が忙しそうだから、この作業は自分がやっておこう」

こうした工夫ができるようになると、仕事はただ与えられるものではなく、自分が考えて動かせるものへ変わっていきます。

自分の判断が結果につながり、それを周囲から認めてもらえれば、さらに仕事へ関わろうとする気持ちが生まれます。

モチベーションがあるから行動できることもありますが、行動した結果、小さな成功体験が生まれ、そこからモチベーションが育つこともあるのです。

愛着やこだわりも、後から育っていく

仕事に慣れ、自分なりの工夫ができるようになると、少しずつこだわりも生まれます。

「お客様には、ここまで丁寧に説明したい」
「この作業は、もっと分かりやすく整えたい」
「新しく入った人が困らないようにしておきたい」

このこだわりは、単なる作業を「自分の仕事」として捉え始めたサインです。

さらに、自分の工夫を受け入れてくれる人がいる、困ったときに助けてくれる仲間がいる、安心して意見を言える場所があると、仕事だけでなく、会社や一緒に働く人への愛着も育っていきます。

「自分がここにいてもよい」
「このチームの役に立てている」
「この人たちと、もう少し良い仕事をしたい」

そう感じられたとき、職場は単に収入を得る場所ではなく、自分の居場所の一つになります。

会社への愛着は、入社時の志望動機だけで決まるものではありません。入社後にどのような経験をし、周囲とどのような関係を築けたかによって、少しずつ育っていきます。

モチベーションを「本人の問題」にしない

社員にやる気が見られないとき、「本人の意識を変えなければ」と考えることがあります。

しかし、本人に「もっとやる気を出してほしい」と伝えても、具体的にどうすればよいのかは分かりません。

まず確認したいのは、その社員が仕事の中で小さな達成感を得られているかどうかです。

任された仕事を終えても反応がない。以前よりできることが増えても、次々に仕事が追加されるだけ。お客様の反応が本人まで届かない。得意なことがあっても、それを使う機会がない。

このような環境では、自分の成長や貢献を実感しにくくなります。

反対に、本人に合った小さな役割を任せ、できたことを具体的に伝え、その仕事が誰にどう役立ったのかを共有できれば、仕事への意味を感じやすくなります。

必要なのは、大きな成功を経験させることではありません。

「前回より少し早くできた」
「自分の説明で相手に伝わった」
「提案した方法を使ってもらえた」
「誰かから頼られた」

このような本人が実感できる変化を、一つずつ積み重ねることです。

「何に喜びを感じる人なのか」を知る

ただし、同じ成功体験が全員のモチベーションになるわけではありません。

数字を達成することに喜びを感じる人もいれば、お客様から直接感謝されることでやりがいを感じる人もいます。新しいことを覚えるのが楽しい人、チームで協力することに充実感を持つ人、任せてもらうことで力を発揮する人もいます。

だからこそ、社員が何に心を動かされ、どのようなときに「もう少しやってみたい」と思えるのかを知る必要があります。

そのためには、本人の過去の経験を振り返り、

「これまで、仕事をしていてうれしかったことは何か」
「時間を忘れて取り組めたことは何か」
「周囲から、どのようなことで頼られてきたか」

を一緒に整理することがおすすめです。

本人に合った原動力が分かれば、仕事の任せ方や目標のつくり方も変えられます。

最初から好きでなくても、好きになるプロセスはつくれる

すべての社員が、今の仕事を心から好きになるとは限りません。自己理解を進めた結果、別の役割や環境の方が合っていると分かることもあります。

それでも、入社時点で「やりたいことがなかった」「この仕事が好きではなかった」という理由だけで、その人の今後の成長まで決める必要はありません。

仕事に慣れる。少しできるようになる。誰かの役に立つ。感謝される。自分なりの工夫が生まれる。周囲から任せてもらう。会社や人への愛着が育つ。

仕事を好きになる気持ちは、このようなプロセスの中で生まれることがあります。

Think for Designでは、社員に無理に仕事を好きになってもらうのではなく、その人が何に喜びや成長を感じるのかをコーチングによって整理します。

そして、本人の強みや価値観と、現在の仕事や会社が大切にしていることとの接点を見つけ、挑戦できる小さな役割や行動へつなげます。

最初から高いモチベーションを持つ人だけを求めるのではなく、今いる社員が仕事の中で意味や愛着を見つけられる環境をつくる。

その積み重ねが、自ら考えて行動する社員と、長く働きたいと思える組織を育てていくのだと思います。

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