主体性のある社員と、ない社員の違いとは
仕事をしていると、自分から考えて動く社員もいれば、指示されたことを中心に取り組む社員もいます。
同じ説明をしても、一人は次に必要なことまで考えて進め、もう一人は指示された作業が終わると手を止めてしまう。
その違いを見ると、「主体性がある人とない人の差なのだろう」と思うかもしれません。
けれど私は、主体性を生まれつきの性格や、本人のやる気だけで捉えない方がよいと考えています。
もともと積極的な人だから動ける、消極的な人だから動けない、という単純な話ではありません。
自分が何を大切にしていて、どのような力を持ち、何のために今の仕事をしているのか。そして、自分の考えを伝えても大丈夫だと思える環境があるか。
この両方がそろって、初めて人は自分から動きやすくなります。
主体性とは、何でも一人で判断することではない
「主体性のある社員」と聞くと、指示を待たずに行動し、どんな問題も自分で解決できる人を想像するかもしれません。
しかし、分からないまま自己判断で進めることが、必ずしも主体性ではありません。
私が考える主体性とは、自分の役割や目的を理解したうえで、
「今、何が必要だろう」
「自分にできることは何だろう」
「一人では判断できないため、誰に何を相談しよう」
「もっと良くするために、どんな提案ができるだろう」
と考え、必要な行動を選べることです。
自分で進められることは進める。判断が必要なことは相談する。難しいことは「できません」で終わらせず、何が難しく、どこまでならできるのかを伝える。
周囲に頼ることも、主体的な行動の一つです。
主体性のある社員とは、一人ですべてを背負う社員ではありません。自分なりの考えを持ち、周囲と協力しながら仕事を前へ進められる社員です。
動かないのではなく、動く理由が見えていない
社員が指示を待っていると、「仕事への意欲が低い」と判断されることがあります。
けれど、本人はやる気がないのではなく、自分が何のためにその仕事をしているのか分からないのかもしれません。
毎日、決められた仕事をこなしている。しかし、その仕事が誰の役に立ち、会社のどのような価値につながっているのかは見えない。
今の仕事を続けた先に、どのような成長や役割があるのかも分からない。
その状態で「もっと自分から動いてほしい」と言われても、何に向かって動けばよいのか判断できません。
以前支援した新卒のパティシエの方も、先輩に教えてもらう業務をこなすことで精いっぱいになり、「このまま働き続けてよいのか」と悩んでいました。
自己理解を進めると、その方は作ることだけでなく、目の前のお客様が喜ぶ姿を見ることに、やりがいを感じる人だと分かりました。相手の気持ちを汲み取り、好みを想像することも自然にできる方でした。
そこから、「いつかお客様の希望を直接聞き、その方に合ったウェディングケーキを提案したい」という目標が見つかりました。
すると、今教わっている技術は、ただこなすものではなく、将来やりたい仕事に必要なものへと変わりました。先輩から教えてもらえることに感謝を感じ、自分からコミュニケーションを取ろうと思えるようになったのです。
仕事内容が変わったわけではありません。
自分の価値観と今の仕事、将来の目標がつながったことで、行動が変わりました。
主体性は、本人にとって納得できる「動く理由」が見つかったときに生まれやすくなります。
自分の強みが分からなければ、何を提案すればよいかも分からない
主体的に働くためには、自分がどのような力を持っているかを知ることも必要です。
会社から見ると頼りになる社員でも、本人は「言われたことを普通にやっているだけ」と思っている場合があります。
周囲が動きやすいように情報を整理している。相手に合わせて説明方法を変えている。小さな変化に気づき、問題になる前に声をかけている。
こうした行動を、本人は強みだと認識していないことがあります。
自分の力が分からなければ、「この課題に対して、自分は何ができるか」も考えにくくなります。新しい役割への挑戦を勧められても、自信を持てません。
一方で、自分の強みを具体的な行動として理解している社員は、仕事との接点を見つけやすくなります。
「人に教えることが得意だから、新人向けの資料を整えたい」
「複数の意見を整理することが得意だから、プロジェクトの調整を担当したい」
「お客様の反応を細かく見ているから、接客方法の改善に生かせそう」
自分の力をどこで使えるかが分かると、会社から役割を与えられるのを待つだけではなく、自分から提案できるようになります。
主体性は、研修で行動だけを教えても育ちにくい
主体性を高めるために、「自分で考えて行動しましょう」「課題を見つけて提案しましょう」と伝える研修もあります。
行動の方法を学ぶことには意味があります。
しかし、本人が自分の強みや価値観を理解しておらず、仕事の目的にも納得していなければ、研修で学んだ行動は長く続きにくいものです。
外から求められて行動しているだけでは、また「会社に言われたから取り組む」状態になるからです。
主体性を育てるには、行動を教える前に、本人の内側を整理する必要があります。
自分は何を大切にしているのか。
どのような場面で力を発揮できるのか。
今の仕事を通して何を得たいのか。
自分の力を使って、誰にどのような価値を届けたいのか。
そのうえで、本人が大切にしたいことと、会社の理念や仕事の役割との接点を見つけます。
「会社が目指していること」と「自分が実現したいこと」が重なると、社員は会社の目標を自分と関係のあるものとして捉えられるようになります。
主体性は「持っているか」ではなく「発揮できているか」
主体性のある社員と、ない社員。
その違いを、本人の性格や意欲だけで分けてしまうと、会社が改善できる部分を見落としてしまいます。
本当は、現場の課題に気づいているかもしれない。
自分なりに挑戦したいことがあるかもしれない。
会社やお客様に貢献したい気持ちを持っているかもしれない。
ただ、それを言葉にできていなかったり、伝えてもよいと思える環境がなかったりするだけかもしれません。
だから私は、主体性を「ある・ない」ではなく、「今、その人が主体性を発揮できる状態にあるか」という視点で考えたいと思っています。
Think for Designでは、コーチングやワークショップを通して、社員一人ひとりの強み、価値観、働く目的を整理し、現在の仕事や会社の理念との接点を見つけます。
社員が自分の言葉で考えを伝え、課題を見つけ、周囲と相談しながら改善できる状態へ。
社員の主体性を個人の資質だけに任せず、発揮できる組織をつくることから、会社の内側にあるブランドを育てていきます。