能力でも意欲でもない「働きにくさ」は、自分の取扱説明書で減らせる
仕事をしていると、能力や意欲だけでは説明できない「働きにくさ」が生まれることがあります。
丁寧に仕事を進めたい人と、まず動きながら考えたい人。困ったらすぐ相談したい人と、自分の中で整理してから話したい人。頻繁に声をかけてもらうと安心する人もいれば、集中しているときはそっとしておいてほしい人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
ただ、お互いの違いを知らないまま働いていると、「どうして確認してくれないのだろう」「任せたのに、なぜ自分で判断できないのだろう」と、小さなすれ違いが重なっていきます。
そこでThink for Designでは、社員一人ひとりが自分の特徴を整理し、チームで生かすための「トリセツワークショップ」をつくりました。
「仲良くなるため」だけの自己紹介ではありません
自分の性格や好きなものを紹介するワークショップも、関係づくりには役立ちます。
しかし今回のトリセツづくりで目指しているのは、もう一歩先です。
自分の強み、つまずきやすい条件、大切にしたい価値観、仕事への原動力を整理し、「では、職場でどのように力を発揮するのか」「周囲にどう関わってもらえると働きやすいのか」まで言葉にしていきます。
最終的につくるのは、単なるプロフィールではなく、仕事で活用できる「私の仕事のトリセツ」です。
WORK1 仕事で発揮している強みを見つける
最初に考えるのは、自分の強みです。
ただし、「コミュニケーション力があります」「責任感があります」といった抽象的な言葉を選ぶだけでは終わりません。
これまで周囲から感謝されたこと、頼まれることが多い仕事、無意識にしている工夫など、実際の経験を振り返ります。
例えば、本人は「資料を作るのが得意」と考えていても、詳しく見ていくと、
「複雑な情報を整理して、初めて見る人にも分かる形にできる」
という行動が見つかることがあります。
「人の相談に乗ることが多い」という経験からは、
「相手の状況や気持ちを聞き、考えを整理できるように支援する」
という強みが見えるかもしれません。
強みを具体的な行動まで掘り下げることで、本人も会社も、その力をどの仕事や役割で生かせるのかを考えやすくなります。
WORK2 苦手なことを、責める材料ではなく「取扱ポイント」に変える
苦手なことを考えると、自分の欠点を探す時間になってしまうことがあります。
しかし、このワークショップでは、苦手なことを能力不足とは捉えません。
どのような状況でつまずきやすいのか。つまずく前に、どのような変化が表れるのか。何があれば取り組みやすくなるのかを整理します。
例えば、「急な依頼が苦手」という人も、すべての変更に対応できないわけではないかもしれません。
背景や優先順位が分からないまま、今の仕事を止めることに負担を感じている可能性があります。その場合は、「変更の理由と期限、現在の業務との優先順位を伝える」という関わりがあるだけで、対応しやすくなります。
また、「人に頼るのが苦手」という特徴の裏には、強い責任感や、相手へ迷惑をかけたくない気持ちが隠れていることもあります。
苦手を否定するのではなく、強みとのつながりを見ながら、力を発揮しやすくするための条件へ置き換える。これによって、本人の自己否定を減らし、周囲も具体的な支援を考えられるようになります。
WORK3 仕事で大切にしたい価値観を知る
同じ仕事をしていても、何にやりがいを感じるかは人によって異なります。
目標を達成することがうれしい人もいれば、仲間と協力して進めることに充実感を持つ人もいます。自分で工夫できることを大切にする人もいれば、一定のルールや見通しがあることで安心して働ける人もいます。
ワークショップでは、「仕事をしていて、うれしかった場面」「反対に、強い違和感を覚えた場面」などを振り返り、自分が大切にしている価値観を見つけます。
価値観が分かると、何に不満を感じているのかも整理しやすくなります。
例えば、「もっと評価してほしい」と感じていた人が、本当に求めていたのは昇給ではなく、取り組んだ過程を見てもらうことだったと気づく場合があります。
「仕事に飽きた」と考えていた人も、新しいことを学ぶ機会がなく、成長を感じられないことが原因かもしれません。
本人が働くうえで何を大切にしたいのかが分かれば、上司も声のかけ方や役割の渡し方を考えやすくなります。
WORK4 心が動くことから、仕事の原動力を探す
社員のモチベーションを上げようとしても、すべての人に同じ方法が有効とは限りません。
人に喜んでもらうと頑張れる人もいれば、難しい課題を解けることに面白さを感じる人もいます。知識を深めたい人、仕組みを整えたい人、チームで一つの目標へ向かいたい人もいます。
そこで、夢中になった経験や、もっと知りたいと思えること、仕事でやりがいを感じた瞬間を振り返ります。
ここで大切にしているのは、華やかな夢や職種名を見つけることではありません。
「どのようなときに自然と力が湧くのか」という、本人なりの原動力を知ることです。
原動力が分かると、今の仕事の中でも、本人が意味を感じられる役割をつくりやすくなります。
「私はどう働きたいか」を一枚にまとめる
4つのワークを終えたら、内容を一枚の「仕事のトリセツ」にまとめます。
そこには、次のような内容が入ります。
- 私が自然にできること
- チームに提供できる価値
- つまずきやすい状況と、その前に表れるサイン
- 力を発揮しやすくなるために、自分でできること
- 周囲にお願いしたい関わり方
- 仕事で大切にしたい価値観
- やる気や好奇心が動く条件
- 相談、依頼、フィードバックの受け取り方
「私への接し方を周囲に要求する資料」ではなく、自分自身も働きやすい状態をつくるための資料です。
自分でできる工夫と、周囲に相談したいことを分けて考えるため、一方的な要望にもなりません。
共有すると、チームの見え方が変わる
完成したトリセツは、話せる範囲でペアやチーム内に共有します。
ここでは、無理な自己開示は求めません。共有したくない内容は話さなくてよいこと、相手の内容を評価・否定しないことを最初に確認します。
共有してみると、それまで「慎重すぎる」と思っていた人が、リスクを見つける役割を担っていたことに気づくかもしれません。
「細かいことを気にする人」に見えていた社員が、チームの抜け漏れを防いでいたと分かることもあります。
反対に、いつも頼りになる社員が、仕事を断れず限界まで抱え込む傾向を持っていることが見える場合もあります。
表面上の行動だけでは分からなかった背景を知ることで、決めつけが減り、お互いの力をどう組み合わせるかという視点が生まれます。
最後は「チームの働き方」まで決める
個人のトリセツをつくるだけでは、時間が経つと日常の働き方へ戻ってしまいます。
そのためワークショップの後半では、チームとしての働き方も整理します。
例えば、
- 急ぎの依頼には、期限と優先順位を添える
- 困ったときは、抱え込む前に相談する
- フィードバックでは、結果だけでなく工夫した過程も伝える
- 会議で発言できなかった意見も、後から共有できるようにする
- 得意な人へ仕事が集中しないよう、任せることと育てることを分けて考える
といった約束を、参加者同士で考えます。
会社側からルールを与えるのではなく、自分たちに必要な関わり方を自分たちで決めることが重要です。自分の意見が反映された約束は、日常の行動にもつながりやすくなります。
ワークショップ後の小さな実践が、職場を変える
ワークショップの最後には、一人ひとりが2週間のスモールアクションを決めます。
「週に一度、仕事を抱え込む前に相談する」「会議で一回は自分の意見を伝える」「後輩へ仕事を一つ任せる」など、無理なく試せる行動です。
できたか、できなかったかを評価するのではなく、本人がどのような条件なら行動しやすかったのかを一緒に振り返ります。
この小さな実践と振り返りによって、自己理解が実際の仕事の変化へつながっていきます。
企業にとって、どのような効果があるのか
このワークショップは、社員に気分よく働いてもらうためだけのものではありません。
社員が自分の力を理解し、周囲もその力を生かす方法を知ることで、役割分担や育成、コミュニケーションを具体的に見直せます。
相談の遅れや仕事の抱え込み、認識のずれを減らすことは、業務の停滞やミスの予防にもつながります。また、本人の強みと役割が結びつけば、「なぜ自分がこの仕事を担当するのか」という納得感も生まれます。
社員同士が互いの違いを問題として見るのではなく、チームの力として扱えるようになること。それが、働きやすさだけでなく、チーム全体の生産性や主体性を育てます。
自己理解を、組織の変化につなげる
自己理解は、自分の性格を知って終わるものではありません。
自分の力の使い方が分かり、必要なときに周囲へ相談できる。上司は社員の特徴を踏まえて役割を任せ、チームはお互いの違いを生かして働ける。
そこまでつながって初めて、自己理解が組織の力になります。
Think for Designでは、企業の課題や参加人数、役職構成に合わせて、企業向けトリセツワークショップを設計しています。
社員同士の連携を深めたい、強みを生かした役割分担を考えたい、1on1で本人の希望や悩みをうまく聞き出せていない。そんな課題を感じている企業様は、ぜひご相談ください。