断る基準がないと、判断が社長に戻る
断る判断が経営者に集まっている会社は、多いと思います。
スタッフが相談を受けて、これは自社に合わないかもしれない、と感じる。ただ、その場では決められないので持ち帰る。社長のところで止まり、返事が遅れる。あるいは、判断できないまま受けてしまい、あとから苦しくなる。
これは、スタッフの経験不足の問題に見えて、実際は基準が書いていないことの問題です。
基準は「ある」のに「書いていない」
面白いのは、こういう会社でも、受けない仕事の基準そのものは存在していることです。
こういう依頼は合わない、この進め方だとうまくいかない。経営者の頭の中には、かなりはっきりある。長く現場を見てきた人ほど、判断が速い。ただ、外に出したことがないので、他の人には見えません。
決まっていることと、書いてあることは別です。書いていない基準は、その基準を持っている人が対応するときにしか働きません。結果として、判断が一人に集まります。
書けば、判断が分散する
やることは、たぶん難しくありません。3つの文の形にします。
- ◯◯はお受けしていません
- なぜなら、◯◯だからです
- ◯◯な方に向いています
2つ目が要点です。理由まで書いてあれば、スタッフは一文を読み上げるだけになりません。その考え方を使って、目の前の案件を判断できるようになります。1つ目だけだと、書いてある通りの依頼にしか対応できません。
これは断りの文面をつくる作業ではなく、判断の材料を配る作業です。
探し方は、失敗した案件から
基準を言葉にするとき、ゼロから考えると手が止まります。過去から取り出すほうが早い。
直近の半年で「これは受けなければよかった」と思った案件を3つ挙げる。それぞれについて、なぜそう思ったかを1つずつ書く。金額なのか、進め方なのか、相手なのか。3つ並べると、理由はたいてい同じところに寄ります。
寄ったところが、いま組織がいちばん消耗している場所です。
断れることは、人が育つ条件になる
この作業を勧めているのは、受注の話としてよりも、育成の話としてです。
判断させてもらえない人は、判断できるようになりません。かといって、基準を渡さずに任せると、事故が起きます。書かれた基準は、その間を埋めるものです。任せながら、外れないようにできる。
そして、断る場面ほど、その人の判断力が試されるところはありません。受けるのは誰でもできます。
基準を1つ書いて外に出しておくと、社長が同席しない場でも会社としての答えが出せるようになります。返事が早くなるのは、結果です。