見出しの言葉は、受付と電話が持っている
広報やマーケティングの担当になると、チラシや広告、LPの見出しを任されることが増えます。会議室で強みを書き出して、実績の数、スタッフの経歴、今月だけの割引から見出しを選ぶ。担当になったばかりの人ほど、この順番で考えることが多いと思います。
どれも本当のことです。ただ、近くの同業のチラシを並べてみると、たいてい同じことが書いてあります。見る人は、どこも同じだと思って、値段のところだけを見比べはじめます。強みを並べた見出しは、値段で比べられる場所に自分から上がっていくことになりやすいのです。
比べられない見出しは、相手の困りごとから始まる
見る人がまず見ているのは、自分のことが書いてあるかどうかです。見出しを見て、そうそう、それで困ってた、と思えた人は、値段を比べる前に読み進めます。問い合わせるかどうかも、その人が自分で決めていきます。
そのために、見込み客の話を二つに分けて聞きます。最初に口にする表の要望と、その下にある本当の困りごとです。表の要望には、どこの会社も答えています。本当の困りごとは、本人もまだ言葉にしていないことが多い。見出しにするのは、こちらの言葉です。
困りごとの言葉は受付と電話に届く
その言葉は、担当者の机の上より、現場のほうに多く集まっています。拾える場所は、たとえば次の五つです。
- 問い合わせフォームを読む人が目にする、自由記入欄の文面
- 電話を取る人が、最初に聞かれること
- 口コミに書かれた、利用した人の感想
- 受付に立つ人が、何度も聞かれる質問
- サイトに来た人が検索窓に打ち込んだ言葉
このうち二つめと四つめは、電話を取る人や受付の人でなければ知りません。受付の人に、今週一番多く聞かれたことを尋ねるだけで、担当者ひとりでは出てこない言葉が出てきます。
仮の話で、個人経営の学習塾を例にします。去年の春の問い合わせを読み返すと、成績を上げたい、とそのまま書いてくる保護者は少ないはずです。代わりに出てくるのは、部活が終わるのは夜の七時、子どもが先生に質問できない、といった家庭の事情です。困っている、という言葉は出てきません。出てくるのは、毎日の場面です。
この言葉をそのまま使うと、見出しは「部活が七時に終わってからでも、間に合います。」になります。一人ひとりに合わせた個別指導、のような、どこの塾のチラシにも載っている言葉には直しません。
担当者に渡すのは、センスより手順
見出しづくりを担当者の感覚に任せると、担当が替わるたびに見出しの考え方も変わります。手順にしておけば、経験の浅い人でも同じやり方で見出しを直せます。
- 直近の問い合わせ文を二十件から三十件集める。足りなければ、口コミや受付でよく聞かれる質問を足す
- 相手が書いたとおりに書き写す。自分たちの言葉に直さない
- 三度以上出てきた言葉や場面に、しるしをつける
- いまの見出しと並べ、見出しの言葉が一度も出てこなければ、それは会社の側の言葉だと考える
- 印のついた言葉から一本作り直し、どれを一番大きくするかは出てきた回数で決める
文面だけでは足りないときは、面談や体験のあとに三つ聞きます。何が変わってほしいか。それがこの一か月で何回あったか。いま誰がどうやってしのいでいるか。この三つも、決まった質問として渡せば、誰が聞いても同じ深さまで話が届きます。
振り返りは問い合わせの最初の一言で
作り直した見出しは、ひと月出して、前のひと月と問い合わせの最初の一言を比べます。「値段はいくらですか」から始まる電話が減り、見出しの言葉を引いた問い合わせが増えていれば、見出しは届いています。
問い合わせの数だけで振り返ると、今すぐお申し込みを、残りわずか、のように背中を押す言葉に寄っていきやすいと感じています。数が同じでも、一言目が変わっていれば前に進んでいる。担当者と振り返るときも、ここを一緒に見ると話が具体になります。
見つけて、言葉にするところまでが、集客する側の仕事です。そこから先で決めるのは、読んだ人のほうです。