人件費は、経費のままにもなる
人件費は、経費でしょうか。それとも投資でしょうか。
毎月きまって出ていくので、帳簿の上では経費に見えます。ただ、僕は投資に近いと思っています。ある条件を満たしていれば、という前提つきで。
分ける物差しは、来年も残って働くか
出ていくお金には二種類あると考えています。使ったら消えるものと、来年も残って働いてくれるものです。
家賃も電気代も、使えば消えます。撮ってもらった写真や、作ったサイトは、来年も残って働きます。同じ金額でも、性質がまったく違います。
この物差しを人に当ててみます。その人が一年で、前より早く、前より良いものを出せるようになっていれば、それは残って働く側です。去年の給与が、今年の力になって返ってきています。
逆に、一年前と同じことを、同じ速さで、同じ質でやっているなら、その一年ぶんは消えたことになります。本人の意欲の話をしているのではありません。使い方の話です。
勝手にそうなるわけではない
ここがいちばん大事なところだと思っています。
人件費は、払っているだけでは投資になりません。任せる仕事と、振り返る場所。この二つが無いと、経費のまま出ていきます。
つまりこれは、お金の話というより、こちら側の設計の話です。給与の額を上げても、この二つが無ければ変わりません。
任せる仕事とは何か
任せる、というのは作業を渡すことではありません。作業だけを渡すと、上手にはなりますが、判断は増えません。
渡したいのは、決めるところです。範囲は小さくて構いません。この案件のこの部分は、あなたが決めていい。そう言える範囲をひとつ持たせる。
そして、決めた結果がその人に返るところまでを含めます。作ったものをこちらが持っていって説明してしまうと、相手の反応は本人に届きません。反応こそが、次の判断の材料なので。
振り返る場所とは何か
もうひとつが、振り返る場所です。ここが無い会社は多いと思います。
案件が終わると、次の案件が始まります。終わったものは、うまくいったかどうかを言葉にしないまま流れていきます。うまくいかなかったものは、なおさら触れません。
ただ、振り返らないと、その一年は積み上がりません。同じことを同じようにやり続けることになります。
大がかりな場でなくて構わないと思っています。案件が終わったときに、二十分でいい。何がうまくいって、何が想定と違ったのか。次に同じ状況が来たら、どこを変えるのか。それを本人の言葉で出す場所があるかどうかです。
ここは、評価面談とは別にしたほうがいいと思っています。評価が絡むと、うまくいかなかったことが出てこなくなるので。
削るときに、どこを先に締めるか
経営が厳しくなったとき、何を先に締めるか。ここでも同じ物差しが使えます。
今月止めても、今月の仕事は回るもの。そこから手をつけたくなります。ただ、今月回るということと、要らないということは別です。返ってくるのが半年先か三年先か、という違いでしかありません。
研修や、振り返りの時間や、任せて時間をかけさせる工程。このあたりは、止めても今月の仕事は回ります。だからいちばん先に消えます。そして、消えたことに一年くらい誰も気づきません。
気づくのは、人が育っていないと分かったときです。そのときには、一年ぶん戻せません。
効果が見えないときに、どう考えるか
投資として扱っていても、目に見える変化がすぐ出るとは限りません。
任せてみたけれど、去年と大きく変わった感じがしない。そういうときに「やはりこの人には難しかった」と結論を出してしまうと、次から誰にも任せられなくなります。
見るところを変えたほうがいいと思っています。できるようになったかどうかではなく、判断した回数が増えているかどうかです。回数が増えていれば、まだ途中です。増えていないなら、渡した範囲のほうを見直します。任せたつもりで、実は決めるところが渡っていなかった、ということはよくあります。
今週、手元でできること
いま在籍している人を一人思い浮かべて、二つだけ確かめてみてください。
その人が自分で決めていい範囲が、何かひとつあるか。そして、終わったことを言葉にする場が、月に一度でもあるか。
どちらも無いなら、その人にかかっている費用は、いまのところ経費として出ていっています。人が育たないのは、たいてい人の側の問題ではないのだと思います。