自分の仕事が、どの数字を動かしているか
自分の仕事が、会社のどの数字を動かしているか。これを言える人は、社内でも社外でも強いと思っています。
逆に、忙しさしか説明できない状態が続くと、頑張っているのに評価されにくくなります。本当に頑張っているのに、です。ここは組織の側にも手当てできることがあると考えています。
数字で返事が返ってくる面白さ
僕が高校を出て最初に働いたのは、店舗を運営する会社でした。配属されたのは売り場です。
そこが面白かったのは、手を動かした分がそのまま数字になって戻ってきたからです。棚の並びを変えれば売れる数が動く。声をかける言い方を変えれば、また動く。自分の手と結果がつながっている感覚があって、仕事が楽しくなりました。
ただ、当時の僕が見ていた数字は、今日いくら売れたか、そこだけでした。会社が見ていたのは、その一つ先だったと、経営する側になってから知りました。
給料の出どころを知ると、仕事の見え方が変わる
知って景色が変わったのは、給料がどこから出ているかでした。
売れた額から、材料や外注に払った分を引いた残りがあります。給料はそこから出ます。家賃も光熱費も同じところからです。
ここが分かると、自分の一日の意味が変わります。売った金額を増やす動きと、会社に残る額を増やす動きが、いつも同じ方向を向いているとは限らないと分かるからです。
分かりやすいのが値引きです。値引きをすれば売れます。売上も立ちます。ただ、下げた分は引き算のあとの側から丸ごと消えます。売上の目減りより、残る額の目減りのほうが割合としては大きくなります。
値引きを否定したいのではありません。売った人と、残した人が、いつも同じとは限らないという構造を知っておくと、働き方の選び方が変わるという話です。
この一手間が、育つ人と育たない人を分ける
ここからが、組織の側の話です。
多くの会社で、現場に渡されている数字は売上までです。目標も売上で立ちます。その先の数字は経営だけが見ていて、月末に締まってから共有されるか、共有されないまま終わります。
そうすると、現場は売上を追うしかありません。見せていない数字を、動かしてほしいと期待することはできません。いま起きていることの大半は、意欲ではなく情報の配り方の問題だと思っています。
やることはそれほど大きくありません。案件ごとに、入ってきた金額と、外に払った金額と、かかった時間を出す。それを担当した本人に見せる。この三つだけでも、次の判断が変わります。
時間を数えるのは面倒に見えますが、無形の仕事は原価が時間なので、ここを飛ばすと何も分かりません。逆に、ここさえ揃えば、自分の仕事がいくらの仕事だったのかを本人が言えるようになります。
通る提案と、通らない提案
数字が見えている人は、社内で話を通すのが上手になります。
通りにくいのは、やったほうがいいと思います、で終わる提案です。通りやすいのは、それがどこの数字にどう返ってくるかが付いている提案です。同じ内容でも、届き方がまるで違います。
これは経営を助けるためのふるまいというより、その人自身の資産になります。自分の仕事が会社にいくら残しているかを説明できる人は、どこへ行っても仕事があります。
だから僕は、数字を見せることは、管理ではなく育成の側だと思っています。見せた分だけ、判断できる人が増えます。
まず一件、開いてみる
いきなり全社で仕組みを作らなくてもいいと思います。
直近の案件を一件だけ選んで、入ってきた金額と、出ていった金額と、かかった時間を、担当者と一緒に並べてみてください。多くの場合、そこで最初の会話が生まれます。
そして、もし自分がまだ数字を見せてもらえない立場なら、聞いてみるところからで十分です。この仕事はいくらの仕事で、いくら残るのか。そう聞いてきた人のことを、経営者はよく覚えています。