求人を出しても応募が来ない。待遇を見直す前に考えたいこと
「求人を出しているのに、なかなか応募が来ない」
採用に悩む企業の方から、そんな声を聞くことがあります。
求人を出しても思うように応募が集まらないと、まずは給与や休日、福利厚生などの待遇面を見直そうと考える方もいるのではないでしょうか。
もちろん、待遇は求職者にとって大切な判断材料です。
生活に直結することですし、同じような仕事内容であれば、少しでも条件のよい会社を選びたいと思うのは自然なことだと思います。
でも、私は待遇面を見直す前に、もう一つ考えてみてほしいことがあります。
それは、自社の魅力が求職者にきちんと伝わっているか、ということです。
求職者が知りたいのは、条件だけではない
転職や就職は、人生の中でも大きな選択の一つです。
これから何年も、場合によっては何十年も働くかもしれない場所を決めるわけですから、給与や休日だけで判断する人ばかりではありません。
「どんな人たちと一緒に働くのだろう」
「自分の考え方と合う会社なのかな」
「この会社で、どんな経験ができるのだろう」
「自分らしく働ける環境なのだろうか」
そんなことも気になるのではないでしょうか。
例えば、同じ給与、同じ休日数の求人が二つあったとします。
一方は、仕事内容や待遇だけが書かれている求人。
もう一方は、会社が大切にしている考え方や、社員がどんな思いで働いているのか、これからどんな会社を目指しているのかまで伝わる求人。
どちらの会社で働く自分を想像しやすいでしょうか。
もちろん、条件だけで判断する人もいると思います。
それでも、会社の考え方や働く人の姿が見えることで、「ここで働いてみたい」と感じる人もいるはずです。
求職者にとって大切なのは、条件がよい会社を見つけることだけではなく、自分に合う会社を見つけることでもある。
私はそう考えています。
Wantedlyが大切にしている「共感」という考え方
この考え方に近い採用サービスの一つが、Wantedly(ウォンテッドリー)です。
Wantedlyでは、募集ページに給与などの条件を前面に出すのではなく、会社のビジョンや事業への思い、働く人たちの姿を伝えることを重視しています。
「何をしている会社なのか」
「なぜ、その事業に取り組んでいるのか」
「どんな仲間と働いているのか」
こうした情報を通じて、求職者が会社に興味を持ち、共感することから出会いが生まれる仕組みです。
特に、知名度や待遇面だけでは大企業と競争しにくいスタートアップやベンチャー企業にとって、自社の思いや事業の魅力を伝えることは、採用における一つの強みになります。
もちろん、共感だけで採用が決まるわけではありません。
最終的には仕事内容や待遇、働き方なども含めて、お互いに納得できることが必要です。
それでも、給与や福利厚生とは違う部分にも、求職者が会社を選ぶ理由があることを示しているのではないでしょうか。
自社の魅力は、意外と自分たちでは気づきにくい
では、自社の魅力を伝えるためには、何から始めればよいのでしょうか。
私はまず、今ある魅力を整理することが大切だと思っています。
例えば、ある中小企業で、こんな会話があったとします。
「うちには特別な福利厚生もないし、アピールできることなんてないよ」
そう話す経営者に、少し質問をしてみます。
「長く働いている社員の方は、どんなところに魅力を感じているのでしょうか?」
すると、
「そういえば、うちは社員同士の仲がいいかな」
「子どもの行事があるときは、お互いに仕事を調整しているね」
「若い社員にも、やりたいことがあれば任せるようにしているよ」
といった話が出てくるかもしれません。
経営者にとっては当たり前のことでも、求職者にとっては魅力になることがあります。
子育てと仕事を両立したい人にとっては、お互いに協力し合える環境が魅力かもしれません。
早いうちから経験を積みたい人にとっては、若手にも仕事を任せてもらえることが魅力かもしれません。
大切なのは、どの会社よりも優れていることを探すのではなく、自社にはどんな特徴があり、それを魅力に感じるのはどんな人なのかを考えることです。
ただし、実際にはできていないことを、魅力として伝えるのは逆効果です。
採用できたとしても、入社後に「思っていた会社と違った」と感じさせてしまうかもしれません。
だからこそ、経営者の思いだけでなく、実際に働く社員の声にも耳を傾けながら、自社の姿を整理していくことが必要だと思います。
「どんな人に来てほしいか」と「自社の魅力」はつながっている
採用を考えるとき、企業側は「どんな人材がほしいか」を考えます。
主体性のある人。
コミュニケーション能力が高い人。
責任感を持って仕事に取り組める人。
もちろん、こうした人物像を考えることも大切です。
でも、求める人物像だけを整理しても、その人が自社を選んでくれるとは限りません。
例えば、自分で考えて新しいことに挑戦したい人を採用したいのであれば、その人が挑戦できる環境や、実際に社員が挑戦した経験を伝える必要があります。
チームワークを大切にする人に来てほしいのであれば、普段どんなふうに社員同士が協力しているのかを伝えることが大切です。
つまり、求める人物像と自社の魅力は、別々に考えるものではないのだと思います。
「こんな人に来てほしい」
そう考えたときに、
「では、その人がうちの会社で働きたいと思う理由は何だろう?」
と考えてみる。
この視点があるだけでも、求人の伝え方は変わってくるのではないでしょうか。
待遇を改善することも、もちろん大切
ここまで自社の魅力についてお話ししてきましたが、待遇面の改善が必要ないということではありません。
給与が地域の相場と大きく離れていたり、休日数や労働時間が求職者の希望と合っていなかったりすれば、いくら魅力を伝えても応募につながりにくいことがあります。
また、求人を出しても採用できない理由は、会社の魅力が伝わっていないことだけとは限りません。
求人を掲載している媒体が合っていない場合もあれば、仕事内容がわかりにくかったり、応募条件が厳しすぎたりする場合もあります。
だからこそ、応募が来ないという結果だけを見て、すぐに「給与が低いからだ」と判断するのではなく、何が原因なのかを整理することが大切です。
待遇を見直すことと、自社の魅力を伝えること。
どちらか一方を選ぶのではなく、今の自社に何が必要なのかを考える。
そのためにも、まずは現在の採用活動を振り返ってみてほしいと思います。
採用活動は、自社を見つめ直す機会にもなる
採用活動というと、どうしても「人を集めること」に意識が向きやすいものです。
でも私は、採用活動は自社の魅力や大切にしていることを見つめ直す機会でもあると思っています。
なぜ、この会社をつくったのか。
これまで何を大切にしてきたのか。
社員には、どんなふうに働いてほしいのか。
これから、どんな会社にしていきたいのか。
こうしたことを言葉にしていくと、採用活動だけでなく、今いる社員との関わり方や組織づくりにもつながっていきます。
会社が大切にしていることが伝われば、社員自身も、自分たちが何を目指して働いているのかを考えるきっかけになるかもしれません。
Think for Designでも、採用を単に人を集める活動として捉えるのではなく、会社の思いや魅力を整理し、求める人材との接点をつくることを大切にしています。
求人を出しても、なかなか応募が来ない。
そんなときは、待遇を変える前に、一度立ち止まって考えてみませんか。
「私たちの会社で働く魅力は、求職者にきちんと伝わっているだろうか?」
今ある魅力を見つけ、言葉にすること。
そこから採用活動を見直してみても、遅くはないのではないでしょうか。