組織づくり

上に立つ人の機嫌は、組織の天気になる

written by 中村 弘樹

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組織の風通しをよくしたい、意見が上がってくるチームにしたい。そう考えたとき、まず制度や会議体を見直そうとすることが多いと思います。ただ、それより先に効いているものがあります。上に立つ人の機嫌です。

リーダーが不機嫌だと、意見は止まる

上に立つ人の機嫌は、思っている以上に下に伝わります。リーダーが不機嫌だと、周りは顔色を伺って、思ったことを言いづらくなる。逆に機嫌がいいと、ちょっとした相談もしやすくなって、いい意見が集まってくる。

ここで止まっているのは、意欲ではなく情報です。「言っても機嫌が悪そうだからやめておこう」が積み重なると、現場で気づいた小さな違和感が、上まで届かなくなる。手を打てば小さく済んだことが、あとから大きな問題になって出てくる。会議の設計を変えても、その場の空気が「言いにくい」ままなら、出てくる意見の質は変わりません。

機嫌は表に出ます。自分では隠しているつもりでも、声のトーンや返事の短さで、周りには伝わってしまう。だから「態度には出していないつもり」は、たいていの場合、通用しないんです。

機嫌が悪いと、判断まで雑になる

機嫌は、ただの気分の問題ではありません。機嫌が悪いと、まず判断が雑になります。イライラしているときは、細かいところを確認する気力がなかったり、一回で流してしまったりする。あとで見返して「なんでこんなミスを」ということが起きやすい。

判断の精度は、能力だけで決まっているわけではなく、そのときの機嫌にも左右されている。上の人ほど判断の数も影響範囲も大きいので、その差はそのまま組織の損得になっていきます。

そう考えると、自分の機嫌を整えることは、セルフケアの話というより、組織運営の実務に近い。立場が上になるほど、自分の機嫌が、周りにとっての天気みたいになってくるからです。

気合ではなく、「戻し方」を持っておく

とはいえ、「常に上機嫌でいこう」と気合で解決する話ではありません。むしろ逆で、下がったときに自分を戻す方法をいくつか持っておくことのほうが実践的です。

人は、機嫌が悪くなる原因のほうは、割とよく分かっています。寝不足、空腹、苦手な相手との時間。でも、何をすると自分の機嫌が戻るのか。そちら側は意外と知らない。少し歩くと落ち着く人、好きな音楽で切り替わる人、温かい飲み物を一杯入れる人、机の上を少し片付ける人。戻し方は人によって全然違います。だからまず、自分にとって「これをやると少し楽になる」を、いくつか見つけておく。それが分かっていれば、落ちたときにずるずる引きずらずに済みます。

受け取り方にも幅があります。「ここ直しておいて」と言われたとき、ダメ出しされたと受け取れば一気に沈むけれど、ちゃんと見てもらえている、期待されていると受け取れば、同じ言葉でもそこまで落ち込まない。出来事そのものは変えられなくても、そこにどんな意味をつけるかは、少しだけ自分で選べます。いつも前向きに受け取れるわけではないし、無理にそうする必要もありませんが、「今、自分は悪い方に受け取っているかもしれない」と気づけるだけで、落ち方は変わってきます。

不機嫌の責任を、部下に肩代わりさせない

第一歩は、気づくことです。「今、自分の機嫌が悪いな」と。当たり前のようでいて、これが難しい。イライラしているまさにそのときは、自分の状態に気づかないまま、周りのせいにしてしまいがちです。あの人のせい、この状況のせい、と。いったん「今下がっているな」と気づけると、それだけで少し冷静になれます。悪いのは相手ではなく、今日の自分の調子かもしれない、と一歩引ける。気づいて、戻し方をひとつ試す。この順番を覚えておくだけでも違います。

機嫌が下がること自体は、悪いことではありません。誰にでも虫の居所が悪い日はあります。ただ、その不機嫌を態度で表してしまうと、それが周りに移っていく。自分の機嫌を自分で取るというのは、我慢して笑顔を作ることではなく、自分の不機嫌の責任を、周りに肩代わりさせないということだと思います。上の立場にいる人にとって、これはマナーの話ではなく、チームの生産性の話です。

いい対話は、こちらの機嫌から始まる

人と向き合う仕事は、いい対話から始まります。ピリピリした空気の中では、本音の話はなかなか出てきません。相手が安心して、「こんなことを言ってもいいかな」というところまで話してくれる。実は、そこにいちばん大事なものが入っていることが多い。まだ言葉になっていない不安、ずっと引っかかっていたこと、誰にも言っていない想い。そういう話が出てくるかどうかで、その先の打ち手の深さが変わります。

そして、そういう場は、こちらの機嫌がいいところから生まれます。だから機嫌を整えることは、いい仕事をするための準備のひとつです。面談の前、ヒアリングの前、資料を用意するのと同じくらい実務的な準備だと考えていいと思います。

いつも完璧に上機嫌でいる必要はありません。大事なのは、ゼロか百かではなく、下がったときに少しだけ戻せる自分でいること。ほんの少し、自分で天気を変えられる余地を持っておく。それだけで、周りに振り回される感じは減り、まわりの人が話しやすい組織に近づいていきます。

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