社員の声や強みを、役割・接客・採用・発信に生かすには
社員面談や1on1、社内アンケートを実施し、社員の声を聞く会社が増えています。
しかし、話を聞いたあと、
「貴重な意見が聞けた」
「社員の考えを知ることができた」
という感想だけで終わってはいないでしょうか。
社員の声や強みを「本人を理解するためだけの情報」で留めておくのは、もったいないことです。
その人に合う役割を考える。
接客や顧客対応を改善する。
採用で伝える会社の魅力を見つける。
WebサイトやSNSで発信する材料にする。
聞いた内容を仕事や組織へつなげることで、社員の声は会社を育てる資源になります。
社員の声を聞くポイント
面談で社員が自分の強みや希望を話しても、それだけで仕事が変わるわけではありません。
また、社員の声をすべて要望として受け取り、そのまま実現しようとすると、会社側の負担が大きくなります。
そのため、
- 本人が自然に発揮している力
- 仕事で負担を感じやすい条件
- 本人が大切にしていること
- 会社やお客様への思い
- 現在の業務で生かされていない経験
を見つけ、会社が必要としている仕事や課題との接点を探すことがポイントです。
何気ないエピソードの中に、強みがある
自分にとって自然にできることは、本人も強みだと気づいていない場合があります。
そのため、強みを直接尋ねるだけでなく、具体的な経験として聞くのがおすすめです。
- お客様から喜ばれたこと
- 周囲からよく頼まれること
- 仕事で自然と工夫していること
- 忙しいときの仕事の進め方
- 困っている人がいたときの行動
- 周囲から褒められたこと
たとえば、ある社員から「お客様が納得できるまで、専門用語を使わずに説明するようにしています」という話が出たとします。
本人は「接客なら当たり前」と思っているかもしれません。
しかし、ここには、相手の理解度を見ながら言葉を選ぶ力、複雑な情報を分かりやすく整理する力、相手の不安を残さない姿勢が表れています。
この一つのエピソードを、個人のよい話だけで終わらせず、会社の中でどのように生かせるかを考えます。
1.社員の強みを、役割に生かす
最初に考えたいのは、その強みをどのような仕事や役割で使えるかです。
先ほどの社員であれば、普段の接客だけでなく、次のような役割にもつながる可能性があります。
- 新人へ商品説明の方法を教える
- 難しい説明を分かりやすくした資料をつくる
- お客様からよく聞かれる質問をまとめる
- 接客マニュアルの見直しに参加する
- 新人の接客練習で相手役を担当する
- Webサイトの商品説明を確認する
ただし、得意だからという理由だけで、新しい仕事を一方的に任せないことも大切です。
本人がその役割に関心を持っているか、現在の業務量で対応できるか、必要な時間や権限を用意できるかを一緒に確認します。
いきなり正式な担当者にするのではなく、まずは資料を一つ作ってもらう、社内の勉強会を一度担当してもらうなど、小さな役割から試します。
強みを見つけるだけでなく、実際に使える場所をつくることで、本人の成長と会社の課題解決がつながります。
2.社員の経験を、接客に生かす
一人の社員が行っているよい接客を、その人だけの技術にしておくのはもったいないことです。
「お客様が納得できるまで専門用語を使わない」という行動が、実際にお客様から評価されているなら、会社全体の接客を考える材料になります。
ただし、その社員の話し方を全員にそのまま真似させる必要はありません。
大切なのは、表面的な言葉ではなく、その行動の背景にある考え方を共有することです。
この場合であれば、
商品を説明することよりも、お客様が理解して選べる状態をつくる
という接客の判断基準が見つかります。
人の話を丁寧に聞くことが得意な社員は、お客様の迷いを整理することで、この価値を表現できます。
情報をまとめることが得意な社員は、比較表や資料を用意することで表現できます。
相手の表情の変化によく気づく社員は、説明の途中で理解度を確認することで表現できます。
全員を同じ接客にそろえるのではなく、それぞれの強みを使いながら、会社が大切にする価値を届けられる状態をつくります。
3.社員の言葉を、採用に生かす
求職者が知りたいのは、会社が掲げている理念だけではありません。
実際にどのような人が働き、どのような考えで仕事をしているのかも、応募を決める大切な材料になります。
たとえば採用サイトに「お客様を大切にする会社です」と書くだけでは、ほかの会社との違いは伝わりにくいでしょう。
一方で、
お客様が納得できるまで、専門用語を使わずに説明する
という社員の具体的な行動を紹介すれば、この会社が考える「お客様を大切にする」の意味が伝わります。
さらに、
- なぜその行動を大切にしているのか
- 会社や上司は、その行動をどのように評価しているのか
- 入社後、どのように接客を学ぶのか
- どのような人に仲間になってほしいのか
まで伝えると、求職者は自分が働く姿を想像しやすくなります。
社員の実際の経験から採用メッセージをつくることで、会社が外へ発信している姿と、入社後に経験する職場のずれも小さくできます。
4.社員の気づきを、発信に生かす
WebサイトやSNSの発信材料は、広報担当者だけが考えるものではありません。
日々、お客様と接している社員の中には、発信につながる情報が数多くあります。
- お客様からよく聞かれる質問
- 商品を選ぶときに迷いやすいこと
- 誤解されやすいサービス内容
- 実際に喜ばれた使い方
- 社員が仕事で大切にしていること
- 会社ならではの対応や工夫
- 仕事を通して気づいた変化
先ほどの社員の経験からは、
- 専門用語を使わずに商品を説明する記事
- お客様からよく聞かれる質問をまとめたFAQ
- 商品を選ぶときに確認したいポイント
- 接客で大切にしていることを紹介する社員インタビュー
- 新人が商品説明を学ぶ過程を紹介する採用記事
などを作れます。
社員に記事を書かせることが目的ではありません。
現場にある経験や気づきを広報担当者が受け取り、必要な人に伝わる形へ整える仕組みをつくることが大切です。
一つの社員の声を、4つの場所へつなげる
社員から聞いた一つの話も、見方を変えると、さまざまな場所で生かせます。
| 社員から出た言葉 | 生かせる場所 |
|---|---|
| お客様が納得するまで分かりやすく説明している | 接客の判断基準 |
| 説明を整理することが得意 | 新人育成や資料作成の役割 |
| お客様からよく聞かれることが分かる | Web記事やFAQ |
| この接客を大切にしている | 採用メッセージや社員紹介 |
社員の声を聞くこと、人材を育てること、採用すること、発信することは、それぞれ別の取り組みに見えます。
しかし、社内にある一つの経験を起点に考えると、すべてがつながります。
これが、社員の成長を組織とブランドの成長へつなげるということです。
社員の声を活用するときに、守りたいこと
社員から聞いた話を、本人の同意なく社内外へ公開してはいけません。
個別面談で話された家庭の事情、過去の経験、感情の詳細などは、会社の発信材料として扱うものではありません。
社員の声を活用するときは、
- 本人だけにとどめる内容
- 上司との対話に使う内容
- 組織改善に使う内容
- 採用や広報へ使用できる内容
を分けます。
本人の言葉やエピソードを採用サイトやWeb記事に使う場合は、使用目的、掲載範囲、実名や顔写真の有無を説明し、明確な同意を得る必要があります。
社員の声を会社の都合で利用するのではなく、本人の意思を尊重しながら、本人と会社の双方に価値がある形へ整えます。
社員の内側にあるものを会社の価値へつなげます
Think for Designでは、社員への個別面談やワークショップを通して、一人ひとりの経験、強み、価値観、仕事への思いを整理します。
さらに、社員の内側から見つかったものを、本人が力を発揮できる役割、会社らしい接客、採用で伝える言葉、Webサイトや広報の発信へつなげます。
社員の声を聞いているけれど、何に生かせばよいか分からない。
社員の強みを、実際の役割へつなげられていない。
会社らしい接客や採用メッセージを、現場の言葉からつくりたい。
そのような場合は、社員の声を集めるところからではなく、すでに社内にある経験や言葉を整理するところから始めてみましょう。