求職者は、会社が思う以上に「一文」を見ている
採用サイトや求人票をつくるとき、仕事内容や給与、福利厚生といった条件を分かりやすく伝えることはもちろん大切です。
ただ、求職者が入社を決める理由は、条件だけではありません。
実際には、採用サイトに書かれていた何気ない一文や、面接で交わした短いやり取りが、応募や入社の決め手になっていることがあります。
「失敗を責めるのではなく、次に生かすことを大切にしています」
「お客様だけでなく、一緒に働く人にも誠実でありたいと考えています」
「子育てや介護など、生活の変化を迎えても働き続けられる会社を目指しています」
会社にとっては、数ある文章のうちの一つかもしれません。しかし、そのことで悩んできた求職者や、同じ価値観を持つ人にとっては、「この会社なら自分のことを分かってくれるかもしれない」と感じる大切な言葉になります。
ウケの良い言葉を並べても、会社の魅力は伝わらない
採用活動では、できるだけ多くの人に興味を持ってもらいたいと考えます。
そのため、「風通しの良い職場」「若手が活躍できる環境」「アットホームな会社」「成長できる職場」といった、一般的に印象の良さそうな表現を使いたくなることもあると思います。
もちろん、それが会社の実態と合っているのであれば問題ありません。
しかし、「応募が増えそうだから」という理由だけで言葉を選ぶと、採用サイトから伝わる会社像と、入社後に経験する現実との間にズレが生まれます。
例えば「若手が自由に意見を言える会社」と書かれていても、実際には上司の承認を重ねながら慎重に進める組織かもしれません。反対に、会社としては意思決定が遅いことを弱みだと思っていても、誰かの意見だけで進めず、関係者が納得できるまで話し合う文化を大切にしている場合もあります。
どちらが良い、悪いという話ではありません。
大切なのは、実際の会社らしさと、発信している言葉が一致していることです。
応募数よりも「共鳴する人」を増やす
会社らしい言葉を具体的に発信すると、「自分には合わない」と感じて応募を見送る人が出てくるかもしれません。
そのため、自社の考え方をはっきり書くことに不安を感じる企業もあります。
けれど、すべての人に好かれる表現に整えた結果、応募は増えても、面接で「想像していた会社と違った」と感じられたり、入社後にミスマッチが起きたりするのであれば、お互いにとって良い採用とはいえません。
たくさんの人から何となく好印象を持ってもらうことよりも、数人でも、
「この考え方に共感した」
「ここに書かれている働き方なら、自分らしく力を発揮できそう」
「自分が仕事で大切にしてきたことと似ている」
と感じてもらうことの方が、その後の関係につながります。
応募数だけを見れば、一時的に減る可能性はあります。それでも、会社の考え方に共鳴した人と出会えれば、面接での認識のズレや、入社後の「思っていた会社と違った」を減らしやすくなります。
長く一緒に働く人を探すのであれば、広く好かれる言葉よりも、本当に合う人へ深く届く言葉が必要です。
会社の魅力は、経営者の頭の中だけにあるとは限らない
自社らしい言葉を見つけるためには、まず会社の魅力を言語化する必要があります。
ただし、会社の魅力は経営者や採用担当者だけで考えるものではありません。実際に働いている社員の経験にも、言葉の材料がたくさんあります。
社員に話を聞いてみると、
「忙しいとき、部署を越えて自然に助けに来てくれた」
「失敗したとき、責めるよりも一緒に原因を考えてもらえた」
「家庭の事情を相談したとき、働き続ける方法を本気で考えてくれた」
「お客様のためになるなら、職種に関係なく意見を出せる」
といった、社内では当たり前になっている出来事が出てくることがあります。
こうした具体的な経験の中に、その会社が本当に大切にしている価値観があります。
「人を大切にする会社です」と書くだけでは、ほかの会社との違いは伝わりません。しかし、どのような場面で、誰が、どのような行動をしたのかまで掘り下げると、その会社にしかない魅力として伝えられます。
一方で、社員へ話を聞いた結果、会社が発信している魅力と、社員が感じている実態が一致していないこともあります。その場合は、表現だけをきれいに整えるのではなく、なぜズレが生まれているのかを考える必要があります。
言葉を見つける作業は、会社の現状を見つめ直す機会でもあるのです。
自社らしい言葉は、入社後の判断基準にもなる
HPや求人票に載せる言葉は、求職者を集めるためだけのものではありません。
社員が仕事の中で迷ったときに、「この会社では、何を大切にして判断するのか」を考える基準にもなります。
採用時に伝えた言葉が、入社後の上司の対応や評価、顧客との向き合い方にも表れていれば、社員は会社への信頼を深められます。
そして、自分が共感した会社の価値を、今度は自分の行動を通してお客様や後輩へ伝えていけるようになります。
採用のためにつくった言葉が社内でも生き続け、社員の行動に表れ、お客様の体験につながっていく。そこまで一貫して初めて、その言葉は会社のブランドになります。
Think for Designが言語化を大切にする理由
Think for Designでは、見栄えの良いコピーをつくることだけを目的にしていません。
経営者が会社を始めた理由や、仕事を通して実現したいこと。社員が働く中で感じている魅力や、無意識に大切にしている行動。お客様から選ばれてきた理由。反対に、会社が今後変えていきたいこと。
こうした一つひとつを対話によって整理し、その会社だからこそ言える言葉を見つけていきます。
そのうえで、HPや採用サイト、求人票に載せる言葉と、実際の社員体験や顧客体験がつながるように整えます。
会社らしい言葉は、外から借りてくるものではありません。すでに社内にある経験や思いを見つけ、誰にでも伝わる形にするものです。
応募数を増やすためだけではなく、本当に共鳴する人と出会い、入社後も同じ方向を見ながら働いていくために。
Think for Designは、コーチングとブランディングの両面から、会社の魅力を掘り起こし、自社らしい言葉にするお手伝いをしています。