発信している会社像と、社員の行動が一致していますか?
written by apricot
採用サイトでは、「社員を大切にする会社」と書かれていた。
けれど、面接では応募者の話をほとんど聞かず、一方的に説明された。
ホームページでは、「お客様に寄り添う」と掲げていた。
けれど、問い合わせをすると、担当部署をたらい回しにされた。
発信されている言葉と、実際の体験に違いがあるとき、人はどちらを信じるでしょうか。
おそらく、多くの人が実際に受けた体験を信じます。
会社がどれほど魅力的な言葉を発信しても、社員の行動や社内の実態と一致していなければ、かえって不信感につながることがあります。
外向きに見せている会社像と、社員が日々経験している会社の姿。その二つを一致させることが、ブランドへの信頼を育てます。
良い発信ほど、期待も高くなる
ホームページや採用サイト、SNSを整えると、会社の魅力を多くの人に届けられるようになります。
理念に共感するお客様や求職者と出会いやすくなり、企業の強みも伝わりやすくなります。
一方で、発信によって相手の中には期待が生まれます。
「この会社なら、丁寧に相談に乗ってもらえそう」
「社員を大切にしている会社なら、安心して働けそう」
「挑戦を応援する会社なら、自分の意見を生かせそう」
その期待と実際の体験が一致すれば、信頼は深まります。
しかし、差が大きいほど、「言っていることと違う」という失望も大きくなります。
ブランディングでは、魅力的に見せることだけでなく、発信した約束を組織として守れるかどうかが問われます。
社外向けの言葉と、社内の現実
「人を大切にする」
「自由に意見を言える」
「チームワークを大切にする」
「新しい挑戦を応援する」
企業の発信でよく使われる言葉です。
では、社内ではどうでしょうか。
社員が困っているときに相談できるでしょうか。
意見を伝えた人が否定されたり、不利益を受けたりしていないでしょうか。
一部の社員に仕事が集中していないでしょうか。
失敗した人を責めるのではなく、改善につなげられているでしょうか。
部署を越えて協力した行動が評価されているでしょうか。
発信内容と社内の実態を比べるときには、制度の有無だけではなく、社員が日常でどのような経験をしているかを見る必要があります。
フレックスタイム制度があっても、利用すると周囲から嫌な顔をされる。
育児休業制度があっても、取得後に役割から外される。
意見箱があっても、意見を出しても何も変わらない。
制度があることと、安心して使えることは別です。
採用時の違和感は、入社後の不信につながる
採用活動は、求職者が会社のブランドを直接体験する最初の場面です。
求人情報では柔軟な働き方を伝えていたのに、面接で確認すると実態が違う。社員の自主性を大切にすると説明しながら、仕事内容や評価基準が曖昧なままになっている。
そのような小さな違和感は、入社後にも残ります。
採用のために魅力的な部分だけを見せても、入社すれば社内の現実が分かります。期待とのズレが大きいほど、早期離職やエンゲージメントの低下につながる可能性があります。
採用ブランディングで大切なのは、よく見せることではありません。
会社が本当に大切にしていること、現在できていること、まだ改善途中のことを誠実に伝えることです。
完成された会社でなくても構いません。
「今はここに課題がありますが、社員と一緒にこの状態を目指しています」と伝え、その言葉どおりに改善を進めている方が、信頼につながることがあります。
社員は、会社の言葉と行動をよく見ている
社員に理念を伝えるとき、会社側は「どれだけ理解してくれたか」を気にします。
しかし、社員もまた、会社や経営者の行動を見ています。
会社が「挑戦」を掲げながら、失敗に厳しい反応をしていないか。
「対話」を大切にすると言いながら、重要なことを一方的に決めていないか。
「信頼」を掲げながら、社員を必要以上に管理していないか。
社員は、会社が語る言葉よりも、日々の意思決定から本当に大切にしているものを感じ取ります。
言葉と行動が一致すれば、「この会社は本気でこの価値を大切にしている」と感じられます。
反対に、一致しない状態が続けば、理念や発信を建前として受け取るようになります。
社内と社外を別々に考えない
広報は社外への発信、人事は社員や採用、現場は顧客対応。
それぞれを別々に考えていると、伝える会社像にズレが生まれます。
例えば、広報は「親しみやすい会社」を発信しているのに、顧客対応は形式的で冷たい。採用では「チームワーク」を強調しているのに、評価制度は個人の成果だけを重視している。
会社のブランドを一貫させるためには、部門を越えて次の点を共有する必要があります。
- 私たちは誰に、どのような価値を届ける会社なのか
- どのような会社だと感じてもらいたいのか
- そのために、社員はどのように行動するのか
- 社員がその行動を取るために、どのような環境が必要か
- 発信している内容と、実態にどのような差があるか
社外への表現だけを整えるのではなく、社内の制度や働き方、顧客対応まで一つの流れとして考えることが大切です。
ズレを見つけることは、会社を否定することではない
発信と実態のズレを指摘されると、責められているように感じるかもしれません。
しかし、すべてが最初から一致している会社はほとんどないと思います。
会社が成長する中で、昔つくった理念と現在の事業が合わなくなることもあります。制度は整っていても、現場で運用しきれていないこともあります。
重要なのは、ズレがあることではなく、それを見ないままにすることです。
社員へのヒアリングや1on1、顧客の声、採用候補者の反応などから、実際にどのような体験が生まれているかを確認します。
そして、
「私たちが目指す会社像に近づくために、何を変えられるか」
という視点で改善していきます。
ズレを見つけることは、会社の問題点を並べることではありません。発信している約束を、実際の組織へ近づけるための出発点です。
一致している会社は、説明しすぎなくても伝わる
理念と社員の行動が一致している会社では、発信のためだけに特別な言葉をつくらなくても、日常の中に伝えられる材料があります。
社員が実際に行ったこと。
お客様との関わりから生まれた変化。
会社の価値観に沿って判断した出来事。
課題を改善するために取り組んでいること。
こうした事実を発信することで、会社らしさに説得力が生まれます。
「社員を大切にしています」と書くよりも、社員の意見から制度がどのように変わったかを伝える。
「挑戦できる会社です」と言うよりも、社員の提案がどのように新しい事業や改善につながったかを紹介する。
実態があるからこそ、発信する言葉が強くなります。
内側を整えることが、信頼されるブランドをつくる
会社のブランドを強くしたいとき、発信量を増やすことや、見せ方を整えることも必要です。
しかし、その前に、発信している会社像を社員自身が実感できているかを確認してほしいと思います。
社員が実感していない会社らしさを、社外へ届け続けることはできません。
会社の理念、社員の体験、顧客への行動、社外への発信。
これらが少しずつ一致していくことで、言葉だけではない信頼が生まれます。
ブランディングは、会社を実態以上によく見せることではありません。
会社が本当に大切にしたいものを明確にし、それを社内の行動と社外への約束の両方に表していくことです。
発信と組織の実態を、一つの流れで整えます
Think for Designでは、会社が発信している理念やブランドと、社員が実際に経験している働き方や顧客対応との接点を整理します。
社員へのコーチングやワークショップを通して、会社らしい行動を言語化し、必要に応じて組織づくり、役割設計、採用、発信へつなげていきます。
発信と社内の実態にズレを感じる、採用後のミスマッチを減らしたい、会社らしさを社員の行動から伝えたい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。